このページでは様々な時宜に即した「今日の宇宙(Space of the Day)」をご紹介しています。掲載期間はおおむね一か月。土曜日・日曜日・祝日は「肩の凝らない」記事を選んでいます。なお、ヨーロッパ宇宙機関の「今週のイメージ(Week in images (ESA))」は、同時に複数の記事が掲載されますのでリンク先から該当する記事を探してください。

7月27日(土)
上空からのパリ・オリンピック

7月26日から8月11日まで、世界中のアスリートがフランスに集まり、2024年の夏季オリンピックに出場する。ゲームの会場は全国に広がっているが、329のイベントのほとんどはパリとその首都圏で開催される。

多くのオリンピック会場はパリ全体の歴史を象徴するランドマークを活用するが、一部のイベントはゲームのために建てられた新しい仮設および恒久的な建造物で開催される。これらの会場では、国際パラリンピック競技大会が、8月28日から9月8日まで開催される。

(イメージは同じです)

イメージは、共に、パリの主要な動脈であるセーヌ川沿いにある会場を示している。7月26日に予定されている開会式は、スタジアムではなく川沿いで行われる。大型ボートで移動する約 10,500 人のアスリート達が、街の中心部を東から西へと曲がりくねって進む。6キロメートルのパレードルートは、エッフェル塔からセーヌ川を渡ったトロカデロの前で終わり、ここでセレモニーの残りのショーが行われる。

ゲームのために開発された仮設構造物には、エッフェル塔スタジアム(イメージの〇印)とシャン・ド・マルス・アリーナが含まれる。象徴的なランドマークのすぐ隣にあるエッフェル塔スタジアムでは、ビーチバレーボールとブラインドサッカーのイベントが開催される。シャン・ド・マルス・アリーナは、グラン・パレの改修工事で2021年に建設された 10,000 平方メートルの建物で、柔道とレスリングのイベントが開催される。

ヴェルサイユ宮殿は、パリの西約30キロメートルにあり、ルイ14世からルイ16世の時代までフランス王の主要な住居であった。800ヘクタールの敷地には、現在は国立博物館になっている、宮殿、庭園、厩舎、長さ 1,670 メートルの大運河がある。馬術スポーツは大運河の西で開催される。

ゲームの開催地の一つはパリから 15,000 キロにある。オリンピックのサーフィン競技は、フランス領ポリネシアのタヒチ島、テアウポオ沖で開催される。タヒチのこの地域は、特に大きく、「重い」波、数多くのサーフィン大会に参加者を引き付けている。

<ひとこと>: この記事は競技の内容と開催場所を詳しく紹介していますが、図との関係が分かり難いので一部のみ取り上げました。大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Earth Observatry

7月26日(金)
太陽系家族の肖像画

1990年、太陽から64億キロメートルを巡航するボイジャー1号探査機は、史上初めての、太陽系の家族の肖像画を撮るために振り返った。この完全な肖像画(下)は、黄道面から32度上の見晴らしの良い場所から撮られた60フレームの合成図である。このボイジャーの広角カメラのフレームでは、左に太陽系の内部システムを、右端に太陽系最外縁の惑星、巨大な氷の海王星を示している。 金星、地球、木星、土星、天王星、海王星の位置が文字で示され、太陽はフレームの円の中心付近の明るいスポットである。各惑星が挿入されたフレームは、ボイジャーの狭視野カメラからである。ポートレイトの中に見えないのは、検出するには太陽に近過ぎた水星と、残念なことにカメラの光学システムが散乱する日光で覆われた火星である。この時、海王星より近かった、小さくかすかな冥王星の位置はカバーできなかった。2024年、NASAの最長かつ最遠の宇宙船、ボイジャー1号は、約150億マイル(240億キロメートル)の、星間宇宙で運行されている。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

7月25日(木)
ハッブルからのオタマジャクシ銀河

この銀河は、何故、こんなに長い尾を持っているのだろう? ハッブル遺産目録のイメージデータに基づくこの驚異的な光景の中で、遠い銀河達が、オタマジャクシ銀河である渦巻銀河 Arp 188 の劇的な背景をつくっている。この宇宙のオタマジャクシは、北の星座ドラゴン(Draco)に向かって僅か4億2千万光年しか離れていない。その目を引く尾は長さは約28万光年、大きく明るい青色の星団が特徴である。一説によると、よりコンパクトな侵入銀河が Arp 188 の前を横切り(この図では右から左へ)、オタマジャクシの引力によってオタマジャクシの背後に投げ出されたという。接近遭遇の際、潮汐力が渦巻銀河の星、ガス、ダストを引き出し、壮大な尾を形成した。オタマジャクシの約30万光年後方にあると推定される侵入銀河そのものは、右上の前景の渦巻の腕を通して見ることができる。オタマジャクシ銀河は、地球の名前に由来するように、年をとるにつれて尾を失い、尾の星団は大きな渦巻銀河の小さな衛星を形成する。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

7月24日(水)
火星の神秘:「火星の蜘蛛」

<前書き>: 火星は、他の惑星や衛星に比べて、地球に似たところがある。このことから、NASAは、月の次の遠征先を火星としている。それでも「火星の地表」には地球と異なる多くの特徴がある。機会をとらえてこれらの一部を紹介する。
今回は、最近の記事に現れた、「クモ(spiders:蜘蛛)」と呼ばれる地形を取り上げる。このような地形は何故現れるのだろう。

2018年5月13日、火星の南極の冬に撮影されたマーズ・リコネッサンス・オービター(Mars Reconnaissance Orbiter)のイメージ(左上)では、この地域を覆う二酸化炭素の氷冠を示している。春に太陽が戻ってくると、この風景のように「蜘蛛」が姿を見せ始める。

火星の四季
火星の四季は地球のおおよそ2倍である。したがって、北半球の5月は冬から春への移行の始まりに当たる。

「アラネイ型地形(araneiform terrain)」と呼ばれるこの形は、地下の二酸化炭素の氷が熱せられて放出されるときに形成される蜘蛛のような放射状のマウンドである。これは、地球上では見られない活発な季節的なプロセスである。地球のドライアイスのように、火星の二酸化炭素の氷は、温まると昇華し、ガスは地下に閉じ込められる。

時間が経つにつれて、閉じ込められた炭酸ガスは圧力が高まり、ジェットとして十分に強くなり、最終的には氷を突き破って粉塵を噴出する。ガスは大気中に放出され、暗いダストが通気口の周りに堆積したり、あるいは風によって運ばれて縞模様になったりする。昇華した二酸化炭素が失われると、表面に刻まれた蜘蛛のような特徴が残る。

ヨーロッパ宇宙機関のマーズ・エクスプレスが撮影した別の例を見てみよう。

<図の説明>: 火星の長方形のスライスが茶色と黄褐色の色調で示されている。地形は左に行くほど暗くなり、右に行くほど滑らかで明るくなる。イメージの中央部分には様々な物質の堆積物の渦巻く片が見られる。左端にはインカ・シティと呼ばれる直線的な格子状の尾根と壁の隆起したネットワークと共に、氷の下に「クモ」と呼ばれる特徴が存在することを示す黒い斑点が散在している重要な特徴が見られる。

黒い斑点はフレームの左側の暗い領域内に見られる--- 上のイメージの大判から左端を確認! この直線的で幾何学的な尾根のネットワークはインカの遺跡を彷彿とさせる。イメージの中心は東経 300 度/南緯 79 度である。

<ひとこと>: これらは、これまでに「火星探査写真集」に掲載した複数の記事から再編集したものです。大判はそれぞれのイメージのリンクから。

<出典>: MRO:Mars Reconnaissance Orbiter

7月23日(火)
NGC 602: オイスター・スター星団

雲は牡蠣のように見え、星は真珠のように見えるが、その先を見据えよう。約20万光年離れた衛星銀河小マゼラン雲の周辺近くには、500万年前の古い星団 NGC 602 がある。ガスとダストの誕生のシェルによって囲まれた星の集団 NGC 602 が、チャンドラ天文台によるX線とスピッツア望遠鏡の赤外線のイメージで処理された、この驚くようなハッブル・イメージに示されている。 NGC 602 の巨大な若い星達からのエネルギーに満ちた放射線と衝撃波がダストの素材を浸食し、幻想的な隆起と強くまとめられたガスが、星の集団の中央から離れて動く星の構成の進行を起動させたことを示唆している。この示された写真は約200光年に及ぶが、この鋭い視界では、背景の銀河達の苛立つようなさまざまな取り合わせも見える。これらの背景の銀河達は、 NGC 602 を超えた数億光年以上にある。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

7月22日(月)
宇宙から見た真夏のレッド・スプライト

2024年6月3日、NASAのマシュー・ドミニク宇宙飛行士は、国際宇宙ステーション(ISS)から地球の上層大気のレッド・スプライトを撮影した。真っ赤な閃光は、強力な稲妻に関連するあまり理解されていない現象であり、中間圏の雲の上高くに現れる。レッド・スプライトを含むトランジェント・ルミナス・イベント(TLE)は、地球の嵐の中や下で発生する雷の活動の結果として、嵐の上に現れるカラフルなエネルギーの爆発である。
--- 左上のイメージは、右のイメージの一部を切り出したものである。

国際宇宙ステーションクルーは、通常、地球のタイムラプス中に焦点距離の短い、広域を撮影する。また、ステーションの外に設置された機器は、カメラ、光度計、X線、ガンマ線検出器などを使用して、地球上の研究者のためにさまざまなデータを取得している。

<参考>:  レッド・スプライト(またはスプライト) が注目され始めたのは、つい最近のことである。雷雲から稲妻が地面に下るように、赤い放射が宇宙に向かって放たれる。雷雲などの上で発生するので地上からはほとんど見ることができないので、かっては、高高度を飛ぶ航空機のパイロットなどが、遠くの雷雲の上に見ることがあったらしいが、滅多に見られないので計画的に調査されることはなかった。近年、国際宇宙ステーションなどが高空を飛行するようになって、時々宇宙から見られるようになり、日本からも、日本の飛行士がステーションに搭乗した際に、計画的に調査されたこともあった。上のイメージは国際宇宙ステーションから撮られた「スプライト」としてはあまり優れたものとは言えないが、久しぶりに発表されたイメージに現れた。なお、スプライトは「妖精」を意味する。

参考までに左下に加えたイメージは、 藤井大地さんが、2011年11月12日未明に撮影に成功した、地上から見た「スプライト」 。このような光景はほとんど見ることはできない。上の写真では実態が分かり難いので追加した。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Andrea Lloyd (著者名です)

7月21日(日)
ジュノ・ミッション、木星のカラフルで混沌とした雲を捉える

2024年5月12日に行われた61回目の木星へのフライバイで、NASAの木星探査機ジュノは、この巨大な惑星の北半球の、色が強調された視界を捉えた。これは、科学者達に、折り畳まれたフィラメント領域として知られている領域の、混沌とした雲と低気圧性の嵐の詳細な視界を提供している。これらの領域では、木星の雲でおなじみの、縞模様を作る東西のジェットが崩れ、わずか数日の間に乱流のパターンと雲の構造が急速に進化する。

市民科学者のゲイリー・イーソン()は、JunoCam 機器からの生データを使用してこのイメージを作成し、デジタル処理技術を適用して色と明瞭さを強調した。

生の画像が撮影された時点で、ジュノー探査機は木星の雲の頂きから約 29,000 キロメートル上空の、北緯約68度にいた。

JunoCam の生のイメージは一般に公開されており、 こちら で閲覧し、画像製品に加工することができる。市民科学の詳細については、 こちら および こちら から。

<ひとこと>: 大判はそれぞれのイメージのリンクから。

<出典>: Jet Propulsion Laboratory

7月20日(土)
チャンドラとウェッブ、夏の宇宙の旅に出る(その4)

NASAのチャンドラX線天文台とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、宇宙の四つの素晴らしい目的地を訪れる時が来た。

この旅の最終の地点は、最も遠く、最も大きな場所である。 MACS J0416 は銀河団であり、宇宙で最大の天体の一つが重力によって結合されている。このような銀河団には、チャンドラが検出できる大量の過熱したガスに浸された数百、数千の銀河が含まれている可能性がある。この図では、チャンドラのX線は紫色で、ハッブルとウェッブは赤、緑、青で一つ一つの銀河を拾い上げている。

<ひとこと>: これは、7月13日以降3日間の記事の続きです。関連記事はこれで終わりです。大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Lee Mohon (著者名です)

7月19日(金)
水の月、水の星 ―水から宇宙を考える

星間空間にありふれている水は、太陽系形成の過程で地球にもたらされました。45億年前、成長していく原始地球は、微惑星(星間ダストが集積した、惑星の“種”となる数キロメートルサイズの天体)や周囲に残っていた星間ガスを集めて、その中の水も取り込んでいきました。さらに、その後も数多く地球に降り注いだ小天体が、水の運び手になったと考えられます。水を多く含んでいる太陽系の天体として思い浮かぶのは、太陽系外縁の冷たい領域からやって来る彗星(すいせい)でしょう。水や二酸化炭素などの揮発性ガスの氷をふんだんに含み「汚れた雪玉」と表現されることもある天体です。他方、小惑星は主に岩石が集積した天体ですが、その鉱物には水と反応した形跡があり、化合物(水和物)として若干の水を今もとどめていることが、例えば小惑星リュウグウの試料でも分析されています。余談ですが、小惑星探査機「はやぶさ2」の搭載機器開発に、実は国立天文台も参加していました。

どのような天体が、どれだけ、地球を潤している水を運んだのでしょうか。太陽系の初期に天体が作られた場所によって、温度や化学的環境に差異があったことから、もたらされる水の性質に相違がある可能性があります。具体的には、水素の同位体(重水素)を含む比率を調べることで、それぞれの天体がもたらす水が、地球の水に似ているかどうかを判別することができます。太陽系の始原的な物質を保存している小惑星や彗星への関心は高まっており、直接探査が近年大きく進展しています。

--- 以下略。

<ひとこと>: 大判イメージを含む続きは以下のリンクから。イメージは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、太陽系外惑星「WASP-96 b」の大気中にとらえた水蒸気の徴。

<出典>: 国立天文台

7月18日(木)
日本近海の海水温を比較する

これは、2024年7月15日に 「地球観測」 に掲載した記事の再掲です。

<お断り>: 訳者は気象専門家ではないので、以下の解説には不正確あるいは誤りがあるかも知れません。掲載の本旨は“NASAの気象観測に関する大規模な取組み”を紹介すること(後段)にありますが、併せて近年の日本近海の海水温の上昇をとり上げています。

NASAは、NOAA(米国大気局)の観測を含む、多数の気象観測衛星からのデータを使って、統合的な地球規模の気象観測を行っています。その中で、2020年との比較においても、日本近海の海水温は確実に高まっているように見えます。

以下は、NASAの膨大な世界規模のデータから抽出したものです。

以下のイメージは、日本近海の海水温の、4年前の2020年7月、および今年冬との比較である。

➀ <参考> 2024年7月13日の世界の海水温

➁ 2024年7月13日の日本近海の海水温

➂ 2024年1月1日(今年の冬)の日本近海の海水温

➃ 2020年7月26日(4年前の夏)の日本近海の海水温

以下は、最近発表された、NASAの気象変動に対する取組みの記事である。

NASA、気候変動への適応とレジリエンス計画の最新情報を発表

NASAは、木曜日、20以上の連邦機関とともに最新の気候適応計画を発表し、すべての人の利益のために気候変動の影響に対する連邦業務の回復力を高めるためのバイデン・ハリス政権の取組みの拡大を支援した。

更新された計画は、共通の原則と機会を通じて、公共部門と民間部門全体で気候レジリエンスへの投資を調整するのに役立つ、政権の国家気候レジリエンスフレームワークを前進させるものである。

NASAは、地球科学の世界的リーダーとして、衛星やその他の資産からの重要なデータや、気候システムに関するその他の観測や研究を研究者達に提供している。また、その知識を応用し、気候変動について一般の人々に知らせることにも取り組んでいる。NASAは、これらの取り組みを優先し、その科学データ、ソフトウェア、および研究をすべての人が自由に利用できるようにするオープンな情報ポリシーを維持する。

また、気候変動や気候変動は、NASAのミッション遂行能力に影響を及ぼす可能性があり、NASAによる積極的な計画と行動が必要である。沿岸の洪水、異常気象、その他の気候変動の影響がNASAの業務を止めないようにするために、NASAは、気候災害分析を改善し、主要な資源と施設を保護するための計画を策定している。

バイデン大統領は、政権発足当初、大統領令 14008 号「国内外の気候危機への取り組み」を通じて、連邦政府機関に気候変動対策のための政府全体の取組みを主導するよう命じた。

--- 以下略。

<ひとこと>: イメージの源データは膨大です。ここではその一部のみ掲載しています。

<出典>: オリジナル

7月17日(水)
「ミートボール」が65歳に

「ミートボール」の愛称で親しまれるNASAの公式ロゴは、2024年7月15日に65歳になった。このロゴは1959年に遡り、国家航空諮問委員会(NACA:)が、宇宙と航空の二つを発展させる機関として、米国航空宇宙局に変貌した。NASAのルイス(現グレン)研究センタのイラストレータのデザインが新しい機関の公式シールに選ばれた後、ルイスの研究報告部門の責任者であるジェームズ・モダレリは、NACAの事務局長から、あまりフォーマルでない目的で使用できるロゴをデザインするように依頼されました。

デザインでは、球体は惑星、星は宇宙、赤い山形は航空学を表す翼(ロゴが開発された当時の極超音速翼の最新のデザイン)を表し、翼の周りに周回する宇宙船がある。赤、白、青のデザインには、NASAの宇宙と航空のミッションを表す要素が含まれており、1959年に、米国の新しい宇宙機関の公式ロゴになった。

<イメージ>: 2020年5月29日、フロリダ州のNASAのケネディ宇宙センターのロケット組立棟で、「ミートボール」の愛称で親しまれるNASAの公式ロゴに取り組む。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Monika Luabeya(著者名です)

7月16日(火)
火星への航海者:最初の CHAPEA クルーの一年間の旅

クルー、模擬火星の居住地での378日間のミッションを終えて地球に戻る。

人類が初めて火星に旅立つとき、地球と火星の通信の遅延と戦いながら、機器の修理とメンテナンス、食料の栽培、健康の維持方法を知る必要がある。また、仲間意識を育み、楽しむ方法をも見つけなければならない。

初のボランティアによる CHAPEA (Crew Health and Performance Exploration Analog)クルーは、火星表面での378日間のアナログミッションで、その全てとそれ以上のことを成し遂げた。

3Dプリントされた、 1,700 平方フィートの、孤立した火星砂丘アルファ(Mars Dune Alpha)で生活するクルーは、火星探査のシミュレーションの厳しさに直面し、火星への実際のミッションに似たストレスに耐えた。彼らは、また、休日や誕生日を祝い、互いに散髪をし、孤独なひとときを過ごした。彼らの旅は、科学者達が深宇宙ミッションの課題を理解するのに役立ち、人間の精神の回復力に関する貴重な洞察を提供している。

7月6日、クルーが旅を終えると、NASAの宇宙飛行士であり、飛行運用副部長のシェル・リンドグレンが居住地のドアを開け、帰還を歓迎し、「クルーとその家族は、NASA、国、そして人類の宇宙探査のために、人生の1年間を捧げてきた。将来の宇宙探査を可能にする研究に全力を注いでくれてありがとう」と述べた。「貴方の指紋は、火星での最初の足跡として、消えないものになるだろう」

CHAPEA のクルーは、NASAの科学者達やエンジニア達と協力して、将来の火星ミッションのために、クルーの健康とパフォーマンスを維持するための洞察を提供するデータを集め、多様なバックグラウンドと経験をもたらした。

最初の CHAPEA ミッションの終了によって、収集されたデータやクルーが共有した経験が、未来の探査への道を開き、人類が火星に足を踏み入れるのに一歩近づく。

--- 以下略。

<ひとこと>: これは、今日の「火星探査写真集」の記事の再掲です。大判はイメージのリンクから。

<出典>: Sumer Loggins(著者名です)

7月15日(月)
チャンドラとウェッブ、夏の宇宙の旅に出る(その3)

NASAのチャンドラX線天文台とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、宇宙の四つの素晴らしい目的地を訪れる時が来た。

我々の銀河系を離れて、別の銀河系を訪れる時が来た。 NGC 3627 は、ミルキウェイ銀河と同様、少し斜めに見える渦巻銀河である。 NGC 3627 は、その中心領域が長方形をしていることから、「棒状の」渦巻銀河または棒渦巻銀河(“barred” spiral galaxy)として知られている。我々の視点からは、円弧のように見える二つの異なる渦巻状の腕も見える。チャンドラからのX線は、紫色で、その中心に超大質量のブラックホールがある証拠を示しており、ウェッブは、銀河の中のダスト、ガス、星を、赤、緑、青で示した。このイメージには、ハッブル宇宙望遠鏡からの赤、緑、青の光学データも含まれている。

<ひとこと>: 「チャンドラとウェッブ、夏の宇宙の旅に出る(その4)」は次の土曜日に掲載します。大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Lee Mohon (著者名です)

7月14日(日)
チャンドラとウェッブ、夏の宇宙の旅に出る(その2)

NASAのチャンドラX線天文台とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、宇宙の四つの素晴らしい目的地を訪れる時が来た。

次の目的地はオリオン大星雲である。この領域は現在もミルキウェイ銀河にあり、我々の故郷である惑星から約 1,500 光年にある。オリオン座の「帯」を構成する三つの星の真ん中あたりを見ると、小さな望遠鏡でもこの星雲を見ることができるかもしれない。しかし、チャンドラとウェッブを使えば、更に多くのことを見ることができる。チャンドラは、赤、緑、青に着色されたX線で明るく輝く若い星を明らかにし、ウェッブは、ここで次世代の星を作るのに役立つガスとダストを濃い赤で示している。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Lee Mohon (著者名です)

7月13日(土)
チャンドラとウェッブ、夏の宇宙の旅に出る(その1)

NASAのチャンドラX線天文台とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、宇宙の四つの素晴らしい目的地を訪れる時が来た。

このツアーの最初の目的地は、地球から約390光年の距離にある最も近いロー・オフィウチ(Rho Ophiuchi:右図)である。へびつかい座ローは、さまざまな大きさと年齢のガスと星で満たされた雲の複合体である。これは、星形成に最も近い領域の一つであり、天文学者達が星を研究するのに最適な場所である。このイメージでは、チャンドラからのX線は紫色の幼児の星であり、激しい炎を放出している。ウェッブからの赤外線データは、赤、黄、シアン、水色、濃い青で、ガスとダストの壮大な領域を提供している。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Lee Mohon (著者名です)

7月12日(金)
ゲートウェイ:驚くほど間近でかつ詳細に

NASAとその国際的なパートナーは、人類で初めて月を周回する宇宙ステーション、ゲートウェイで、深宇宙の科学的な謎を探る。2028年のアルテミスⅣミッションを皮切りに、ゲートウェイの月の南極へのミッションに備えて科学を行い、準備する宇宙飛行士の国際チームが、深宇宙に住み着く最初の人類となるだろう。

このアーティストのCGアニメーションは、ゲートウェイの外観ツアーを驚くほど詳細に紹介している。図に示されているゲートウェイのエレメントは次のとおり。

  •  ゲートウェイを史上最強の太陽電気宇宙船にするパワーと推進力のエレメント。このモジュールは、太陽のエネルギーを利用して宇宙ステーションのサブシステムに電力を供給し、キセノンガスをイオン化して推力を生成し、月を周回するゲートウェイ独自の極軌道を維持する。
  •   HALO (Habitation and Logistics Outpost)は、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が提供する月リンクシステムであり、地球と月面の間の通信を提供するゲートウェイの指令とコントロールを結ぶ。 HALO には、運動器具を含む生命維持システムや科学ペイロードバンクが収容される。
  • ESA が日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)のハードウェア提供を受けて提供する Lunar I-Hab は、環境制御システムや生命維持装置、寝室、調理室などを備えている。
  • ESA が提供する Lunar View は、動力・推進エレメントへの燃料補給機能、貨物保管庫、大型の窓を備えている。
  • クルーと科学のエアロックは、アラブ首長国連邦(UAE)のモハマド・ビン・ラシッド宇宙センターから提供され、ゲートウェイの内部から真空の宇宙空間へのクルーとハードウェアの移動に使用される。
  • カナダ宇宙庁(CSA)は高度な外部ロボットシステム「Canadarm3」を提供する。
  • アルテミス計画を支援するためにゲートウェイに貨物を輸送する深宇宙補給宇宙船。
  • 火星を含む深宇宙を旅する人やハードウェアにとって最大の関心事である、未だほとんど理解されていない現象、太陽放射線と宇宙放射線を調査する初期ゲートウェイ科学ペイロード。

このビデオの中で見られるのは、パワーと推進エレメントに取り付けられ ESA によって提供される、 ERSA (European Radiation Sensors Array:ヨーロッパ放射線センサー・アレイ)および、 HALO に取り付けられるNASAが主導する HERMES(Heliophysics Environmental and Radiation Measurement Experiment Suite:太陽物理学環境・放射線計測実験室)である。 ESA と JAXA が提供する三つ目の放射線科学ペイロードである IDA (Internal Dosimeter Array)は HALO の内部に設置される。

このビデオでは、次の内容についても説明している。

  • オリオン宇宙船はクルー・アンド・サイエンス・エアロックにドッキングしている。オリオンは、宇宙飛行士の国際チームと三つのモジュール(Lunar I-Hab、Lunar View、Crew and Science Airlock)をゲートウェイ宇宙ステーションに運ぶ。
  • 有人着陸システム(HLS)は、月の南極地域との間で宇宙飛行士達を運ぶ。 SpaceX と Blue Origin は、それぞれ Starship HLS と Blue Moon HLS を提供する契約を結んでいる。
  • ゲートウェイはアルテミス計画の一部であり、科学的発見のために人類を月面に帰還させ、火星やその先など、太陽系をさらに探査するための道筋を描く。

更に詳細は こちら から。

<ひとこと>: イメージのリンク先は動画 .mp4 です。

<出典>: Dylan Connell & Briana R. Zamora(著者名です)

7月11日(木)
タイム・スパイラル

宇宙が始まってから何が起こったのだろう? ここに示す時間の螺旋には、いくつかの注目すべきハイライトがある。 螺旋の中心にあるのはビッグバン、時が刻み込まれる場所であり、 我々が知っているように約138億年前に始まった。 数十億年内に原子が形成され、原子から星が形成され、星とガスから銀河が形成され、太陽が形成され、約46億年前地球がそれに続いた。 。地球上の生命は約38億年前に始まり、 その後、細胞が続き、10億年内に光合成が行われる。 約17億年前、地球上の多細胞生物が繁栄し始めた。魚類は約5億年前に泳ぎ始め、哺乳類は約2億年前に陸上を歩き始めた。人類が最初に現れたのは約600万年前、 そして、約1万年前に最初の都市をつくった。 描かれた時間のらせんはそこで止まってしまうが、有人宇宙飛行が加わるかも知れない。 これはわずか75年前に始まり、ここ数年で有用な人工知能が定着し始めた。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

7月10日(水)
太陽軌道船、太陽が猛威を振るう様子を映し出す

3月初旬に美しいオーロラの原因となった太陽黒点領域は、地球の視界から遠ざかる方向に回転したときにはまだ生きていて、煽っていた。太陽の反対側から観測したヨーロッパ宇宙機関主導の太陽軌道船(ソーラー・オービター)ミッションは、この太陽周期で最大の太陽フレアを発生させている同じ領域を検出した。このミッションは、太陽を多方面から観測することによって、活動的な黒点領域がどのように進化し、持続しているかを明らかにし、宇宙の気象の予報の改善に役立てる。

2024年5月10日から12日にかけての週末、過去20年間で最大の太陽嵐が地球を襲った。強烈な地磁気の嵐が発生し、通常よりもはるかに低緯度の空を照らす美しいオーロラが発生した。

起点は AR3664 と呼ばれる太陽黒点領域である。5月14日頃に地球の視界から遠ざかる回転をした際、これまでで最も強いフレア(X8.79)を放出し、地球に大規模な電波の遮断を引き起こした。

5月20日、太陽の裏側を観測した太陽軌道船のX線装置 STIX は、太陽の裏側を観測した。現在の太陽周期の中でこれまでで最も強いフレアであり、1996年以降のトップ10の、推定クラス X12 のフレアが観測された。

<付記>: 太陽の両面を見る

太陽を調査するほとんどのミッションは地球に面した側を見ているが、太陽軌道船(Solar Orbiter)は太陽系を通る別のルートをとっている。ソーラー・オービタは今、4ヶ月以上にわたって太陽の裏側を観測している。

「ソーラー・オービターの位置は、地球側から太陽を観測する他のミッションと組み合わせることによって、太陽を360度見渡すことができる。これは、ソーラー・オービターの将来にあと3回しか起こらない。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。左上のイメージのリンク先は動画 mp4 です。

<出典>: Solar Orbiter (ESA)

7月9日(火)
世界規模の温度

<左図>: NASAでは、多数の地球観測艦隊からの、ほぼリアルタイムのデータとイメージを使って、様々な角度から地球を監視している。

此処に挙げたデータは、今月7日の、地球規模の表面温度データである。これは、宇宙から見た“直接の”表面温度であって、いわゆる気温を表してはいない。具体的には、農地や道路の表面の温度であったり、森では上層表面の葉の温度であったりする。

この数日、日本では、「未だ梅雨の季節」というのに酷暑が続いている。しかし、世界規模の現実は、はるかに高温の地が、想像を絶する広域に広がっている。

この図は7月7日のデータから作成されている。

<ひとこと>: この記事は 「地球観測」 に掲載したものの再掲である。大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Earth Now

7月8日(月)
NASAの小惑星専門家達が仮説的な衝突シナリオを作成して演習

<前書き>: 7月5日(金)の 「NASAの惑星レーダー、二つの大きな小惑星の接近を追う」 に関連して取り上げた記事です。

大型小惑星が地球に衝突する可能性は、当面の間、極めて低いと思われる。しかし、このような事象による被害は甚大である可能性があり、NASAは、衝突シナリオの多くの不確実性に対処するために、連邦および国際機関の専門家や意思決定者達と、2年ごとに仮想的な小惑星衝突の「机上」演習を主導している。直近の演習は今年4月に実施され、6月20日に暫定報告書が発表された。

このようなシナリオを、現実的にまた関係者全員にとって有用なものにすることは簡単な作業ではない。NASAのジェット推進研究所の地球近傍天体研究センター(CNEOS)の科学者達は、小惑星や彗星の追跡と軌道決定、および地球に危険を及ぼすものがあるかどうかの検出を専門としており、最初の11年前からの、これらの演習の設計に大きな役割を果たしてきた。

仮定されたシナリオ
今年のシナリオ:直径数百ヤードの架空の小惑星が発見され、14年以内に地球に衝突する確率は 72% と推定されている。衝突の可能性がある場所には、北米、南ヨーロッパ、北アフリカの人口密集地域が含まれるが、小惑星が地球を逸れる可能性が 28% ある。追跡から数ヶ月後、小惑星は太陽に近づき過ぎたために、さらに7ヶ月間はそれ以上の観測が不可能になった。意思決定者は何をすべきかを考えなければならない。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。なお、Spaceweather.com News によれば、2024年7月7日時点で、衝突の危険性のある地球近傍オブジェクトは 2349 個と報告されています。

<出典>: Jet Propulsion Laboratory

7月7日(日)
くらげ銀河(UGC 9326 & UGC 9327)--すばる宇宙望遠鏡

超広視野主焦点カメラハイパー・シュプリーム・カム(HSC)を使って 2014年から約7年かけ、330 夜の大規模観測を行ったすばる戦略枠プログラム(HSC-SSP)で得られた広大な宇宙画像の中には、複数の銀河が重力を及ぼしあい、お互いの形を乱しあっている「衝突銀河」がたくさん写りこんでいます。この画像は、おとめ座の方向にあるふたつの渦巻銀河が衝突している現場で、その姿がまるでくらげのように見えます。くらげの傘に相当する銀河が UGC 9327、しっぽのように見える口腕内にある銀河が UGC 9326 です。この天体を初めて見た HSC 関係者が「くらげ銀河」と形容しました。

銀河はこのように他の銀河との衝突・合体を繰り返すことで、徐々に大きく成長していったと考えられています。宇宙においては、銀河同士の衝突・合体は日常茶飯事なのです。HSC-SSP で公開された画像の中を自由に散策できる hscMap サイトで、ユニークな形の衝突銀河を探してみられてはいかがでしょうか。

【地球からの距離】約 7.7 億光年
【観測装置】Hyper Suprime-Cam (HSC)

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: すばる望遠鏡

7月6日(土)
2024年7月:NASAによるスカイウォッチングのヒント

7月の見どころ---。
サソリの星団、とらえどころのない天王星を火星が明らかに。さそり座の尾をたどって星団 M6 と M7 を見つけ、火星に導かれて天王星を観察し、朝に月が惑星のグループを集めるのを見よう。

ハイライト
今月中、二つの見つけやすい星団、M7(プトレマイオス星団)と M6(バタフライ星団)が、何れもサソリの尾の「針」の端を示す明るい星の東約5度にある。現地時間の午後10時か11時頃に空の最高点に達する。

  • 7月2日&3日 - 日の出前に三日月が東の木星と火星に合流する。空が明るくなる前に探すと、木星の上にプレアデス星団があり、近くには明るい星カペラとアルデバランがある。
  • 7月5日 – 新月
  • 7月7日&8日 – 西の地平線を遮るもののない視界を持つ人は、水星が細い三日月とともに空の低いところに明るく輝いているのを見ることができる。太陽が沈んでから30〜45分後にそれらを探そう。
  • 7月13日 – 暗くなってから最初の数時間、南西に目を向けると、上弦の月が明るい青みがかった白色の星スピカに寄り添っている。米国本土48度の大部分とメキシコの大部分では、月がスピカの前を通過するように見えるが、これは掩蔽と呼ばれる現象である。お気に入りのスカイウォッチングアプリで、現在地からの眺めを確認しよう。
  • 7月14-16日 - 双眼鏡を手に取り、空が明るくなり始める早朝に火星を見ると、遠くの天王星がすぐ近くにある。
  • 7月21日 – 満月
  • 7月30日 - 夜明け前の午前空に、木星、火星、月とおうし座の明るい星が密集する様子が見られる。

    --- 以下略。

    <ひとこと>: イメージのリンク先は動画 Youtube です。

    <出典>: Preston Dyches(著者名です)

  • 7月5日(金)
    NASAの惑星レーダー、二つの大きな小惑星の接近を追う

    ディープ・スペース・ネットワーク(Deep Space Network)のゴールドストーン惑星レーダーが、小惑星 2024 MK と 2011 UL21 が地球を無事に通過する様子を観測し、数日間忙しく過ごした。

    NASAのジェット推進研究所の科学者達は、最近、地球近くを飛ぶ二つの小惑星を追跡した。その一つは地球に最接近するわずか13日前に発見された。どちらの地球近傍天体も地球に衝突する危険性はなかったが、これらの接近中に行われたレーダー観測は、惑星防衛のための貴重な練習を提供するだけでなく、それらのサイズ、軌道、回転、表面の詳細、およびそれらの組成と形成に関する手がかりに関する情報を提供している。

    6月27日に地球近傍を通過した小惑星 2011 UL21 は、2011年に、月と地球の間の距離の約17倍にあたる660万キロメートルの距離で、NASAが資金提供するカタリナ・スカイ・サーベイによって発見された。しかし、レーダーで撮影できるほど地球に接近したのは今回が初めてである。幅 1.5 キロメートルのこの天体は、危険の可能性があると分類されているが、将来の軌道の計算では、当面の間、地球に脅威を与えることはないことが示されている。

    ジェット推進研究所の科学者達は、ディープ・スペース・ネットワークの幅70メートルのゴールドストーンレーダーを使って小惑星に電波を送信し、同じアンテナで反射信号を受信した。この小惑星がほぼ球形であることに加えて、彼らはそれが連星システムであることを発見した。小さな小惑星または衛星は、約3キロメートルの距離で小惑星を周回している。

    2日後の6月29日、同じチームは、小惑星 2024 MK が、僅か 295,000 キロメートルの距離(月と地球の間の距離の4分の3強の距離で地球を通過するのを観測した(右下の図:動画)。幅約150メートルのこの小惑星は、細長く角張っているように見え、平坦で丸みを帯びた領域が目立つ。これらの観測では、科学者たちは DSS-14 も使ってその物体に電波を送信し、小惑星から跳ね返って地球に戻ってきた信号を受信するためにゴールドストーンの34メートルのアンテナを使った。この観測の結果、小惑星の表面の詳細な画像が得られ、幅約10メートルのくぼみ、尾根、岩が明らかになった。

    --- 以下略。

    <ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

    <出典>: Jet Propulsion Laboratory

    7月4日(木)
    サーペンスにおける原始星の流れ

    生まれたばかりの星から噴き出す物質のジェットが、サーペンス星雲(Serpens Nebula)のクローズアップに捉えられた。この強力な原始星の流出は二極であり、双子のジェットが反対方向に噴出している。その方向は降着円盤に対して垂直であり、回転し崩壊する星の幼児の周りに形成された。このジェームスウェブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRcam)イメージでは、赤い色は水素分子からの放射と、ジェットが周囲のガスとダストと衝突したときにつくり出された一酸化炭素を表している。この鋭いイメージは、サーペンス星雲で検出された個々の流出が、一般的な同じ方向に沿って並んでいることを初めて示された。この結果は予想されてはいたが、今になってようやくはっきりと見えてきた。ウェッブは、活発な若い星形成領域を詳細に調査した。 明るい前景の星型は、ウェッブの特徴的な回折スパイクを示す。サーペンス星雲の推定距離 1,300 光年では、この宇宙のクローズアップのフレームは、直径約1光年である。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

    <出典>: Astronomy Picture of the Day

    7月3日(水)
    JADES-GS-z14-0:最新・最遠のオブジェクト

    宇宙の始まりまで遡ることができたら? 銀河が形成されているのが見えるだろう。 しかし、当時の銀河はどんな姿をしていたのだろう? これらの疑問は、最近発表された、これまでに発見された中で最も遠い天体を含むジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の解析で一歩前進した。ほとんどの銀河は、ビッグバンから約30億年後に形成されているが、いくつかはそれ以前に形成された。はめ込みに写っているのは、宇宙が始まってから僅か3億年後に形成された銀河 JADES-GS-z14-0 のかすかな染みである。専門用語では、この銀河は z=14.32 という記録的な赤方偏移にあり、宇宙が現在の年齢のわずか50分の一だったときにも存在していた。写真に写っている天体はほとんどすべてが銀河である。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。
              ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の記事は こちら から。

    <出典>: Astronomy Picture of the Day

    7月2日(火)
    科学者達は、何故火星のサンプルチューブ内の大気に興味をそそられるのか

    「パーサビアランス」が収集した岩石や土壌のサンプルは、大気科学者達にとって恩恵となる可能性がある。

    NASAの火星探査車「パーサビアランス」は、火星サンプルリターンキャンペーンの一環として、チタン製のサンプルチューブによって封印され、最終的に地球に届けるために集められている。これまでに24個が集められている。

    これらのサンプルのほとんどは、岩石のコアやレゴリス(砕けた岩石や塵)で構成されており、この惑星の歴史や、数十億年前に微生物が存在していたか否かに関する重要な情報を明らかにする可能性がある。しかし、一部の科学者達は、チューブ内の「ヘッドスペース」、つまり岩石質物質の周りの余分な部屋の大気を研究する可能性に、同じように期待している。

    科学者達は、火星の大気の大部分は二酸化炭素で構成されているが、火星の形成以来存在していたかも知れない微量の他のガスも含まれている可能性について更に知りたいと考えている。

    地球に持ち帰るサンプルの中には、その一部として火星表面に堆積したガスのみで満たされたチューブもある。しかし、探査車が収集したガスのはるかに多くは、岩石サンプルチューブのヘッドスペース内にある。

    --- 以下略。

    <図の解説>: 2021年7月20日、パーサビアランスは、火星の地表面を渦巻くダスト・デビル(dust devil)を観測した。これらの大気のサンプルは、火星をよりよく理解するのに役立つ可能性がある。--- ダスト・デビル:火星の地表面に起きる旋風:地球での「つむじ風」程度のものから「竜巻」のような大きなものがある。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

    <出典>: Jet Propulsion Laboratory

    7月1日(月)
    天の川銀河に予測を超えた多くの衛星銀河を発見!(すばる望遠鏡)

    <前書き>: このところ、すばる望遠鏡の特徴を生かした大きな発見が続いています。今日の記事もその一つ。全文は下部のリンクから。

    私たちの住む銀河系にはいくつの衛星銀河があるのでしょうか。これは長年、天文学者が抱えてきた重大な問題です。衛星銀河は、ダークマターの小さな塊にガスが集まり、そこから星々が生まれることで形成されたと考えられています。したがって、衛星銀河の数の問題は、ダークマターの性質、つまりその正体に関わっているのです。

    <左上図>: おとめ座の方向で見つかった矮小銀河(Virgo III)の位置(左)とその星々(右;白丸で囲まれた天体)。矮小銀河には暗い星しかないため、星がまとまって存在している部分を探し出して、同定します。右図の破線の内側にメンバー星が集中しています。

    ダークマターの標準理論では、銀河系のような銀河の周りには千を超えるダークマターの塊と、それに対応する小さな銀河、つまり衛星銀河が存在すると予想されていました。しかし、これまでの観測では数十個の衛星銀河しか見つかっておらず、この数の食い違いは「ミッシングサテライト問題」と呼ばれてきました。この問題を解決するには、ダークマターの正体が標準理論と異なるもので塊の数がもっと少ないのか、あるいはダークマターの塊の中でガスから星が生まれる過程に問題があるのかを解明する必要があります。

    この問題へのもうひとつの糸口として、まだ発見されていない暗い衛星銀河(矮小銀河)が、銀河系の遠方に多く存在している可能性も考えられていました。そのような暗い矮小銀河の探査に威力を発揮するのが、8.2 メートルという大口径を持つすばる望遠鏡と超広視野焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム;HSC)の組み合わせです。とても暗い天体を空の広い領域から探す上で、すばる望遠鏡と HSC は世界最強のコンビだからです。

    研究チームは、HSC を用いて広い天域を観測する「戦略枠プログラム」(HSC-SSP)で得られたビッグデータから矮小銀河の探査を進めてきました。HSC-SSP のデータは解析後に順次公開されてきて、研究チームはこれまでおとめ座、くじら座、うしかい座の方向に次々と新しい矮小銀河を見つけてきました(それぞれ Virgo I、Cetus III、Bootes IV)。そして、今回、最新の公開データから新たに2個の矮小銀河(Virgo III と Sextans II)を発見しました。これらは全て太陽系から 30 万光年以上離れた距離にあることもわかりました。

    HSC-SSP の天域には以前から4個の矮小銀河が知られていたので、研究チームによる発見を合わせると、合計で9個の矮小銀河が見つかったことになります。実はこの数は最新の理論で予想される衛星銀河の個数をかなり上回ります。

    背景として、「ミッシングサテライト問題」を発端に、矮小銀河の形成を抑える過程の理論研究も展開されてきました。そして、最新の最も確からしい分析では、銀河系に全部で 220 個程度の衛星銀河があると予測されていました。これを HSC-SSP の観測天域と観測可能な明るさの限界に適用すると、3個から5個の衛星銀河が見つかることになります。しかし、実際には9個の衛星銀河が見つかったので、銀河系全体に換算すると、少なくとも 500 個の衛星銀河が存在することになってしまいます。今度は「ミッシングサテライト問題」ではなく、「衛星銀河が多すぎる問題」に直面することになりました。

    これは、衛星銀河と同程度の大きさのダークマターの塊の中で、一体どのようにして星ができて銀河になるのかという基本的な物理過程の問題と考えられます。現状では星の形成にブレーキをかけすぎた結果になっているので、その過程を計算する精度が足りていないのか、あるいは、見落とされている物理過程があるのか、などを再検討する必要があります。ただ、少なくとも当初の「ミッシングサテライト問題」は解決できそうな状況で、ダークマターの標準理論が生き残れる状況になってきたと言えるでしょう。

    <ひとこと>: 以下および詳細は下記リンクから。

    <出典>: すばる望遠鏡

    6月30日(日)
    NASA、国際宇宙ステーションの軌道離脱機を選ぶ

    NASAは、人類に利益をもたらすために、地球低軌道での、継続的な科学的、教育的、技術的開発を促進するとともに、月と火星での深宇宙探査を支援している。国際宇宙ステーションが商業的宇宙施設に移行するにあたって、2030年に国際宇宙ステーションの運用寿命が終えた後の、管理された方法で安全かつ責任ある軌道離脱に備えることが重要である。

    NASAは、宇宙ステーションを軌道から離脱し、人口密集地へのリスクを確実に回避する能力を提供する米国の軌道離脱機の開発と納入に SpaceX を選んだと発表した。

    同社が軌道離脱宇宙船を開発し、開発後の所有権はNASAが取得し、ミッション全体を通じて運用する。宇宙ステーションとともに、再突入の過程で破壊的に分解されると予想されている。

    国際宇宙ステーションは、1998年から CSA (カナダ宇宙庁)、ESA (欧州宇宙機関)、JAXA (日本宇宙航空研究開発機構)、NASA (アメリカ航空宇宙局)、ロスコスモスの五つの宇宙機関が運用しており、各機関がハードウェアの管理・制御を担っている。このステーションは相互依存するように設計されており、機能するためにパートナーシップ全体からの貢献に依存している。米国、日本、カナダ、ヨーロッパの参加国は、2030年までステーションを運用することを約束している。ロシアは、少なくとも2028年までステーションの運用を継続することを約束している。国際宇宙ステーション(ISS)の安全な軌道離脱は、五つの宇宙機関すべての責任である。

    この1契約は、8億 4,300 万ドルの潜在的価値を持っている。米国の軌道離脱ロケットの打上げサービスは将来の調達となる。

    <イメージ>: この合成は、2021年11月8日に、ハーモニーモジュールの宇宙に面したポートからドッキング解除された後、軌道上のラボを周回する飛行中に、スペースXクルードラゴンから撮られた国際宇宙ステーション。

    <ひとこと>: この記事は昨日の「アストロサイエンス」に掲載したものの再掲です。大判はイメージをクリック(タップ)。国際宇宙ステーション構築の歴史は こちら から。

    <出典>: Abbey A. Donaldson(著者名です)

    6月29日(土)
    カッシーニからの土星の色

    土星の色は何がつくるのだろう? 土星の注目のこのイメージは、人間が巨大なリングの世界に近づいたときに見えるものをわずかに誇張しているだけである。 このイメージは、2004年から2017年にかけて土星を周回したロボット探査機カッシーニによって、2005年に撮影された。 ここでは、土星の雄大なリングは、曲線としてのみ直接的に現れている。赤外線の輝きから、部分的に茶色に見える。リングは、惑星の上部に作り出す暗い影の中で、その複雑な構造を最もよく表している。地球の空が青く見えるのと同じ理由で、土星の北半球が部分的に青く見える。地球の空が青く見えるのと同じ理由で、土星の北半球が部分的に青く見える。双方の惑星の大気圏の雲のない部分の分子は、赤よりも、青い光を良く散乱させる。しかしながら、土星の雲の奥深くを見ると、土星の雲の自然の金の色が支配的になる。土星の南がなぜ同じ青い色を示さないのかは分かっていない。一つの仮説は、そこでは雲が高いという説である。何故土星の雲の一部が金色なのかもわかっていない。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。
              土星探査宇宙船カッシーニ(1997年打上)の記事は こちら から。

    <出典>: Astronomy Picture of the Day

    6月28日(金)
    カイパーベルトは予想外に広大か?
    すばる望遠鏡 超広視野観測で「ニュー・ホライズンズ」に協力

    太陽系外縁部を進むニュー・ホライズンズ探査機にすばる望遠鏡の広く深い撮像観測が貢献しています。すばる望遠鏡の超広視野カメラで撮られたカイパーベルト天体の探査画像に独自の解析手法を適用した結果、カイパーベルトの領域を広げる可能性のある天体が発見されました。

    太陽系の中で、私たちが既に知る惑星たちよりも遠く先には何があるのでしょうか?海王星の先には小惑星などの天体(小天体)がリング状に分布している領域「カイパーベルト」があります。カイパーベルトからオールト雲までを「太陽系外縁部」と呼んでいますが、私たちの知識はまだ太陽に近い領域に限られています。

    「太陽系以外に目を向けると、一般的な惑星系円盤の広がりは恒星から 100 天文単位(地球-太陽間の距離の 100 倍)くらいです。それに比べると広がりが 50 天文単位程度とされるカイパーベルトはとてもコンパクトです。こうした比較から、太陽系が生まれる元になった星雲(原始太陽系星雲)が現在のカイパーベルトよりさらに外側まで続いた可能性もあると私たちは考えています」と本研究を主導した吉田二美博士(産業医科大学;千葉工業大学惑星探査研究センター)は語ります。

    現在の観測データを見ると、カイパーベルトの外端は 50 天文単位あたりで突然途切れているように見えます。もしもこの外端が原始太陽系星雲の外端に相当するなら、太陽系の惑星系円盤はとてもコンパクトな状態で生まれたことになります。一方、カイパーベルトの外端がその外側の天体(惑星)の影響を受け、その後の進化の過程で切り取られてしまった可能性も考えられます。これが本当なら、カイパーベルトのさらに遠方を観測すれば円盤を切り取った天体や、もしかしたら第2のカイパーベルトが見つかる可能性もあります。このように太陽系外縁部にある天体を見つけ、その分布を調べることは、太陽系の進化を知ることに繋がるのです。

    米国航空宇宙局(NASA)の探査機「ニュー・ホライズンズ(New Horizons)」はそんな太陽系外縁部を調査するための計画です。2015年に冥王星系をフライバイ(近接通過)しながら観測、2019年にはカイパーベルト天体の一つであるアロコス(Arrokoth)をフライバイし、太陽系外縁天体の表層を初めて人類に垣間見せてくれました。アロコスへのフライバイ後にニュー・ホライズンズの延長ミッションが始まりました。そして探査機が今後調査するカイパーベルト天体の候補を探すために、すばる望遠鏡が協力することになりました(ハワイ観測所 2020年7月トピックス)。

    すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ(HSC)を用いたカイパーベルト天体探しはニュー・ホライズンズ探査機が飛行する方向の二視野(満月のおよそ 18 個分の広さに相当する領域)に絞って行われています。これまでに行われた約 30 半夜の観測で、ニュー・ホライズンズのサイエンスチーム(ミッションチーム)は、240 個以上の太陽系外縁天体を見つけています。

    --- 以下は下記リンクをクリックして「すばる望遠鏡」のサイトから。

    <ひとこと>: 大判イメージを含む詳細は下記リンクから。

    <出典>: すばる望遠鏡

    6月27日(木)
    ジュノ、エウロパの氷の殻を高精細に映し出す

    <前書き>: 木星探査衛星ジュノからの記事の連載は一旦これで終わります。

    太陽を動力源とするこの探査機からのイメージは、氷に包まれた木星の衛星のいくつかの興味深い特徴を示している。

    NASAのジュノ探査機に搭載された JunoCam 可視光カメラからのイメージは、木星の衛星エウロパの北極と南極の氷の地殻が、以前に存在した場所ではないという理論を裏付けている。この探査機の恒星基準装置(SRU)によるこの氷の月の別の高解像度画像は、プルーム(噴煙)活動の可能性の兆候と、最近表面に泡立った塩水の可能性のある氷の殻の破壊領域を明らかにしている。

    JunoCam の結果は、最近、惑星科学ジャーナル(Planetary Science Journal)に、SRU の結果は JGR Planets 誌に掲載された。

    2022年9月29日、ジュノはエウロパに最接近し、月の凍った表面から355キロメートル内まで接近した。 JunoCam が撮影した4枚の写真と SRU が撮影した1枚の写真は、2000年のガリレオのフライバイ以来の、初めてのエウロパの高解像度画像である。

    真の極地放浪

    エウロパの上空を飛行したジュノの軌跡がこの月の赤道付近の撮影を可能にした。データを分析したところ、 JunoCam チームは、予想される氷の塊、壁、崖、尾根、谷に加えて、カメラが、幅20〜50キロメートルの、不規則に分布する急峻な壁の窪みも捉えていたことを発見した。これらは、エウロパの他の場所のイメージに以前に発見された、大きな卵形の穴に似ている。

    --- 以下略。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。ガリレオ衛星(1989年打上)による木星に関する探査の概要は 「ガリレオ記念記録」 から。

    <出典>: Jet Propulsion Laboratory

    6月26日(水)
    ジュノ・ミッション、エウロパで酸素の生産を測定

    <前書き>: 木星探査衛星ジュノからの記事を続けて掲載しています。
    ガリレオ衛星(1989年打上)による木星に関する探査の概要は 「ガリレオ記念記録」 から。

    氷で覆われたこの木星の衛星エウロパは、24時間ごとに 1,000 トンの酸素を生成しており、これは 100 万人の人間が1日呼吸するのに十分な量である。

    NASAの木星探査機「ジュノ」の科学者達は、木星の衛星エウロパで生成される酸素の割合は、これまでの研究よりも大幅に少ないと計算した。3月4日付けで Nature Astronomy 誌に掲載されたこの研究の成果は、探査機の JADE (木星オーロラ分布実験)装置で収集したデータを使って、この氷の月の表面から放出される水素を測定することによって得られた。

    論文の著者達は、毎秒約12キログラムの酸素が生成されると推定している。以前の推定値は、毎秒 1,000 キログラム以上であった。科学者達は、この方法で生成された酸素の一部が、代謝エネルギー源として月の地下の海に流れ込む可能性があると考えている。

    赤道の直径が 3,100 キロメートルのエウロパは、木星の95個の既知の衛星の中で4番目に大きく、四つのガリレオ衛星の中で最も小さい。科学者達は、その氷の地殻の下には塩分を含んだ水の広大な内部の海が潜んでいると考えており、水面下に存在する生命維持条件の可能性に関心を持っている。

    この図は、木星からの荷電粒子がエウロパの表面に衝突し、凍った水分子を酸素分子と水素分子に分裂させている様子を示している。科学者達は、これらの新しく生成された酸素ガスの一部が、挿入図に描かれているように、月の地下の海に向かって移動する可能性があると考えている。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

    <出典>: NASA Science Editorial Team

    6月25日(火)
    ジュノ、イオの溶岩湖を空から撮る

    <前書き>: しばらく、木星探査衛星ジュノからの記事を続けています。
    ガリレオ衛星(1989年打上)による木星に関する探査の概要は 「ガリレオ記念記録」 から。

    太陽を動力源とする探査機からのこのイメージは、地獄のような木星の衛星の興味深い特徴のクローズアップを提供している。

    NASAの木星探査機「ジュノ」の科学者達は、この木星の衛星の最もドラマチックな二つの特徴、つまり山と、ほとんどガラスのように滑らかに冷えた溶岩の湖を強調するアニメーションに変換した。この太陽動力探査機による最近の科学成果には、木星の極低気圧や水の存在量に関する最新情報などがある。

    この新しい発見は、4月16日(水)にウィーンで開催された、ヨーロッパ地球物理学連合総会の記者会見で、ジュノの主任研究者によって発表された。

    ジュノは2023年12月と2024年2月にイオに接近し、地表から約 1,500 キロメートル以内まで接近し、この月の北の緯度を初めてクローズアップで撮影した。

    イオには火山が散在しており、そのうちのいくつかは活動している。また、ロキ・パテラ(Loki Patera)と呼ばれる長さ200キロメートルの溶岩湖に関するクローズアップその他のデータも得られた。熱い溶岩で縁取られたマグマの湖の真ん中に埋め込まれたこれらの島々を示す驚くべき詳細がある。機器が記録した湖の鏡面反射は、イオの表面の一部がガラスのように滑らかで、地球では火山によって作られる黒曜石のガラス(obsidian glass)を彷彿とさせることを示唆している。

    ジュノのマイクロ波放射計(MWR)によって収集されたデータで生成されたこの地図は、イオの表面が木星の他のガリレオ衛星に比べて比較的滑らかであるだけでなく、中緯度よりも冷たい極を持っていることを明らかにしている。

    --- 以下略。

    <ひとこと>: 左上のイメージのリンク先は動画 youtube です。
    ガリレオ衛星(1989年打上)による木星に関する探査の概要は 「ガリレオ記念記録」 から。

    <出典>: Jet Propulsion Laboratory

    6月24日(月)
    木星の火山衛星イオの最も鮮明なイメージ

    <前書き>: しばらく、木星探査衛星ジュノからの記事を続けます。

    NASAのジュノ宇宙船は、木星の月イオへの最も近い接近通過を行った。「JunoCam(ジュノ・カメラ)」と呼ばれるこの宇宙船の装置は、処理し、拡張し、調査可能な、壮観かつ高解像度のイメージと生データを送り返した。

    2023年12月30日、ジュノは太陽系で最も火山の多い世界の、表面から約 1,500 キロメートル内に接近した。今週、イオへの2回目の超接近フライバイを行った。2回目の接近通過は主にイオの南半球の上空を通過したが、それ以前のフライバイは北半球上空を飛行していた。これらの写真には見るべきものが多くある! 活発な噴煙、明らかに影のある高い山頂、溶岩の湖の痕跡もある--- 一部には島々も見える。

    これら全てを整理するのは困難であり、 JunoCam の科学者達は協力を求めている。

    <参考>:  JunoCam の生データは 一般に公開 されており、これまでに多くのボランティアが処理や検討に協力してきた。此処からは新しい生のイメージを見たり、他の画像処理プロセッサの作品を見たり、自分の作品を投稿したりできる。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

    <出典>: NASA Science Editorial Team

    6月23日(日)
    NASAのハッブル、銀河の「薔薇」と共に21周年を祝う

    ハッブル宇宙望遠鏡の宇宙への展開から21周年を記念して、宇宙望遠鏡科学研究所の天文学者達は、ハッブル宇宙望遠鏡の目を、 Arp 273 と呼ばれる特に写真写りの良い相互作用する銀河のペアに向けた。 UGC 1810 として知られる渦巻銀河の大きな方の銀河は、その下のコンパニオン銀河の引力によってバラのような形に歪んだ円盤(UGC 1813)を持っている。このイメージは、2010年12月17日に撮影されたハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ3のデータを、紫外線、青色、赤色の広い範囲の波長をカバーする三つのフィルターで合成したものである。

    <ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

    <出典>: Gary Daines (著者名です)

    6月22日(土)
    ハッブルの NGC 1546

    6月14日に科学活動を再開したハッブル宇宙望遠鏡は、新しいポインティング・モードを使って、渦巻銀河 NGC 1546 のこの鮮明な画像を撮った。かじき座銀河グループのメンバーであるこの島宇宙は、僅か 5000 万光年の距離に横たわっている。 NGC 1546 の銀河のディスクは、銀河のダストレーンを通して輝く、古い星の黄色がかった光と新しく形成された星達の青い領域とともに、我々の視線に傾いている。遠い背景の銀河達が、このハッブルの眺望のあちこちに散らばっている。1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡は、30年間を超えて宇宙を探査し、最近34周年を迎えた。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

    <出典>: Astronomy Picture of the Day

    6月21日(金)
    アニメーション:ブラックホールが星を破壊する

    星がブラックホールに近づきすぎるとどうなるだろう? ブラックホールはそれを引き裂くが、それは、どのように行われるのだろう? 強い引力ではない。それ自体が問題なのである。破壊を生み出すのは星全体の重力の差である。 この崩壊を描いた注目のアニメーションビデオでは、最初にブラックホールに接近する星が見える。公転速度が速くなると、最接近時に星の外側の大気が引き裂かれる。 星の大気の大部分は深宇宙に飛散するが、ブラックホールの周りを回り続けて降着円盤を形成するものもある。このアニメーションでは、 その後、ブラックホールの方を見ながら降着円盤の中へと連れて行ってくれる。 重力レンズの奇妙な視覚効果を含め、ディスクの向こう側も見える。 最後に、スピン軸に沿って放出されるジェットの一つに沿って見る。 理論モデルによると、これらのジェットは、高エネルギーのガスを放出するだけでなく、高エネルギーニュートリノをも生成し、そのうちの一つが最近地球で観測された可能性がある。

    <ひとこと>: イメージのリンク先は動画 Youtube です。

    <出典>: Astronomy Picture of the Day

    6月20日(木)
    メシエ66のクローズアップ

    大きく美しい渦巻銀河メシエ66は、僅か 3500 万光年の距離にある。この美しい島宇宙は、直径約10万光年で、ミルキウェイとほぼ同じ大きさである。 このハッブル宇宙望遠鏡のクローズアップイメージは、銀河の核の周辺約 30,000 光年の領域にまたがっている。この図は銀河の円盤が我々の視線に対して劇的に傾いていることを示している。その明るいコアを囲んでいるのは、恐らく、ピンクの星形成領域の隠しおおせない輝きが点在している、渦巻の腕に沿った、ダストレーンと若く青い星の集団を覆った、超巨大なブラックホールのホームである。メシェ66は NGC 3627 とも呼ばれ、重力的に相互作用しているしし座トリプレット(Leo Triplet)の三つの銀河達で最も明るい。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

    <出典>: Astronomy Picture of the Day

    6月19日(水)
    パンドラの銀河の集団

    この深視野合成イメージは、 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)によって記録された、パンドラの星団とも呼ばれる、驚くような視界を表している。パンドラの集団(Pandora's Cluster)とも呼ばれる Abell 2744 自体は、三つの異なる巨大な銀河集団の重々しい融合のように見える。それは、ちょうこくしつ座の方向、約35億光年を横たわっている。 暗黒物質によって支配されたこの巨大集団は、さらに遠いオブジェクトを重力でレンズ化し時空を歪めている。差渡し81キロメートルのパンドラ集団より赤い銀河達のレンズ化された源の多くは、初期の宇宙の非常に遠い銀河達であり、それらのレンズ化されたイメージは、引き伸ばされ弧に歪んでいる。特徴的な回折スパイクはもちろん手前のミルキーウェイの星を示している。差渡し81キロメートルのパンドラ集団の推定された距離において、この宇宙のボックスは約600万光年に及んでいる。この苛立つような領域は 2分間のビデオ・ツアー(英語解説) で探査することができる。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

    <出典>: Astronomy Picture of the Day

    6月18日(火)
    ステレオのヘレーネ

    赤/青の立体眼鏡をかけ、土星の小さな氷の衛星 ヘレーネ(Helene) の隣に浮ぼう。ヘレーネは トロヤ群 の衛星であり、 ラグランジュ・ポイント(Lagrange point) を周っていることからそう呼ばれている。 ラグランジュ・ポイントは、二つの巨大な天体、この場合は土星とその大きな月ディオーネの近くの重力的に安定したポイントである。実際に、この不規則な形状(約36 x 32 x 30キロメートル)のヘレーネは、ディオーネの先導ラグランジュ・ポイントを周回し、その兄弟の氷の月ポリュデュース(Polydeuces)は、ディオネの後続ラグランジュ・ポイントで続いている。この鋭い立体写真は、2011年に接近飛行した、二つのカッシーニの画像からつくられた。それは、クレータで凹凸となった、また溝のような地形のヘレーネの土星に面する半球の一部を示している。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

    <出典>: Astronomy Picture of the Day

    6月17日(月)
    固体量子磁力計 ― 量子の世界から水の世界を探る

    水を追え! --- 太陽系には、太陽の水蒸気から冥王星の氷まで、さまざまな状態の水があふれている。水は生命を維持する可能性と関連しているばかりでなく、それ自体の地質学的特性と潜在的な用途でも興味深いものがある。例えば、月や火星の氷は人類の宇宙探査を後押しするかもしれないし、地球に衝突した彗星が地球に水を堆積させたのかもしれない。また、氷の彗星と土星のリングは、太陽系が時間とともにどのように変化するかを明らかにしている。

    一方、液体の水は生命を可能にする上で特別な役割を担っている。科学者達は、太陽系の巨大なガス惑星や氷の惑星の周りを回る多くの衛星に液体の水が存在する可能性があるという兆候を発見した。宇宙生命科学コミュニティのモットーは、生命を見つけるために「水をたどる」ことであり、木星のエウロパ、土星のエンケラドゥス、その他の衛星の地下の海は、将来のミッションの有力なターゲットである。

    しかし、これらの惑星の厚さ何キロメートルにも及ぶ氷の地殻の下を、カメラやレーダーなどの従来のリモートセンシング機器で調べることは困難である。  氷を掘削したり溶かしたりする着陸船やローバーを送り込むまでは、他の技術を使って、これらの巨大だがとらえどころのない水域を追跡するしかない。磁力測定法は、磁場が固体物質を貫通するために、惑星サイズの天体の内部に関する情報を提供するには際立っている。

    塩水は電気を通す。したがって、塩水の海は惑星サイズの電気回路として機能することができる。海洋の世界の母惑星の強い回転する磁場は、この「回路」に電流を誘導し、それが調査する中で海洋の世界の近くの磁場を乱し、変化させる可能性がある。これらの磁場の乱れは、探査機から観測することができ、液体の水の存在を示す可能性がある。例えば、エウロパ付近の木星の磁場の歪みは、NASAのガリレオ計画の磁力計によって測定され、その月の氷の地殻の下に水の海があるという当初の疑惑のさらなる証拠となった。

    固体量子磁力計は、サイズ、重量、消費電力を抑えながら、競争力のある感度で磁場を測定することが期待される。さらに、これらの機器は、スピンと核の量子の相互作用の自己較正などの量子上の利点を提供し、磁力計が時間の経過に伴うドリフトを補正できることを意味している。この能力は、外側の巨大な氷の惑星への数十年にわたるミッションにとって特に重要である。固体量子のその他の利点には、放射線耐性と、非常に高温/低温に耐える固有の能力が含まれる。

    固体量子磁力計は、ダイヤモンドや炭化ケイ素などの半導体にある量子カラーセンター(quantum color centers)を利用する。カラーセンターは、結晶格子の欠陥であり、たとえば、原子が欠落していたり、別の原子が結晶原子に置き換わったりする。日常生活では、カラーセンターが結晶に色を与えるが、変調光を使用して量子レベルで調べることもできる。これらのカラーセンターは、その量子スピン特性により、環境磁場に敏感である。これらのカラーセンターは様々な磁場にさらされるため、変化する量子スピンの性質を電気的および/または光学的に読み取ることができ、磁場の特性に関する洞察が得られ、水の存在を検出することができる。

    NASAのジェット推進研究所の研究チームは、宇宙からのスピン特性を測定するための二つの磁力計を開発している。信じられないほどシンプルでありながらエレガントな SiCMAG (炭化ケイ素磁力計)はスピン特性を電気的に読み取り、 OPuS-MAGNM (光学的に励起された固体量子磁力計)は光学系を追加することでより高い感度へのアクセスを約束する。ここでの光学的励起は、量子系に緑色(ダイヤモンド)または深赤色(炭化ケイ素)のレーザー光を励起し、系の応答を光検出器で読み取ることを意味している。

    研究者によれば、「新しい量子センサーは、新しい科学を可能にするだけでなく、キューブサットクラスのプラットフォーム上でフラッグシップクラスの科学を可能にするサイズとコストに、計測器を縮小する機会をも提供する。

    <注>--- 斜体文字の部分の記述は訳者の知識を超えていますので、訳文には誤りがあるかも知れません。なお、カラーセンターは こちら を参照してみてください。

    NASAは、2016年から PICASSO (Planetary Instrument Concepts for the Advancement of Solar System Observations)プログラムを通じて、固体量子磁力計センサーの研究に資金を提供している。この研究には、NASAのグレン研究センター、アイオワ大学などの、国内外のさまざまなパートナーや、日本の量子科学技術研究開発機構(QST Japan)、スイス公立の研究大学である ETH チューリッヒなどの国際的なパートナーが協力している。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

    <出典>: NASA Science Editorial Team

    6月16日(日)
    NASAのLRO、月の裏側で中国の嫦娥6号を見る

    NASAの月探査軌道船 LRO (Lunar Reconnaissance Orbiter)は、6月7日に、月の裏側で、中国のサンプルリターン宇宙船「嫦娥6号」を撮った。嫦娥6号は6月1日に着陸し、約1週間後、 LRO が着陸地点上空を通過した際、浸食された直径約50メートルのクレータの縁に、着陸船が映るイメージをとった。

    LRO カメラチームは、着陸地点の座標を南緯約42度、東経206度、標高約マイナス 5,256 メートルと計算した。

    嫦娥6号の着陸地点は、南緯 36.1 度、東経 208.3 度の、直径492キロメートルのアポロ盆地の南端に位置している。玄武岩質の溶岩は、約31億年前に、チャフィーSクレータ(Chaffee S crater)の南に噴出し、断層に関係していると思われる局所的な地形上の高所に遭遇するまで西に流れ下った。この領域のいくつかのしわの隆起は、この海の表面を変形させ、隆起させている。着陸地点は、この二つの突出した尾根のほぼ中間に位置している。この玄武岩質の流れは、さらに西に見える約33億年前の少し古い流れとも重なっているが、酸化鉄と二酸化チタンの存在量が多い、若い流れが特徴的である。

    <ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。左上のイメージは動画 .gif です。

    <出典>: Goddard Digital Team

    6月15日(土)
    ボイジャー1号、四つの観測装置すべてからの科学データを送り返す

    NASAのボイジャー1号宇宙船は、2023年11月に発生した技術的な問題の後、初めて通常の科学運用を行っている。

    チームは、4月に、探査機の健全性や状態に関する情報を含む技術データの戻すように探査機に促し、この問題を部分的に解決した。5月19日、ミッションチームはその修理プロセスの第2段階を実行し、探査機に科学データの送信を開始するよう命令を出した。四つの科学機器のうち二つはすぐに通常の動作モードに戻った。他の二つの機器には追加の作業が必要だったが、現在、四つ全てが使用可能な科学データを送り返している。これら四つの装置は、プラズマ波、磁場、粒子を調べている。

    ボイジャー1号とボイジャー2号は、太陽圏(太陽が作り出す磁場と太陽風の保護バブル)の外の領域である星間の空間を直接サンプリングしている唯一の探査機である。

    ボイジャー1号は科学的な運用を再開しているが、この問題の影響を浄化するためには追加の小さな作業が必要である。エンジニアは、宇宙船に搭載された3台のコンピュータで計時ソフトウェアを再同期し、適切なタイミングでコマンドを実行できるようにする。また、年に2回地球に送られる、プラズマ波動装置のデータを記録する、デジタルテープレコーダのメンテナンスも行う。但し、ボイジャーの科学データのほとんどは、記録されずに直接地球に送られる。

    ボイジャー1号は地球から240億キロメートル以上の距離にあり、ボイジャー2号は地球から200億キロメートル以上離れている。これらの探査機は、今年後半に運用開始から47年を迎える。NASAで最も長命な宇宙船であり、最も遠い宇宙船でもある。

    <参考>: ボイジャー は、NASAによる2機の無人惑星探査機ボイジャー1と2による探査計画であり、両機とも1977年に打ち上げられた。木星・土星・天王星・海王星を“通過”し探査することができる機会を狙って打上げられている。両機とも既に太陽圏を離れ宇宙空間に入っている。ボイジャー1号は、最近、接触が乱れ、不安視されていた。

    --- 大判はイメージをクリック(タップ)。

    <出典>: agreicius(著者名です)

    6月14日(金)
    太陽軌道船、太陽の活動領域を観測

    2022年3月3日、探査機が初めて太陽に接近した際に太陽軌道船(Solar Orbiter)が見た太陽。この視界は、太陽物理学者達が太陽風の起源領域を研究するための新しい道を開く重要な調査の一部だった。

    その最も大きなイメージは、軌道船の極紫外線撮像装置(EUI)の太陽撮像装置モードをフルにして撮影されたものである。5秒後に表示される中サイズのイメージは、装置の高解像度モードで撮影したものである。3枚目の最も小さなのイメージは、軌道船の SPICE(Spectral Imaging of the Coronal Environment)装置で撮影されたものである。

    太陽の活動領域は、しばしば太陽フレアや噴出の原因となる。活動領域の視覚的な指標は、暗い黒点、つまり強い磁場がねじれて集中する太陽の光球のより冷たい領域である。黒点を生み出す磁気活動は、いわゆる「遅い」太陽風(slow solar wind)と関係があると考えられている。

    この調査では、軌道船の装置で太陽の活動領域を撮影し、数日後に探査機の現場観測装置でゆっくりとした太陽風を測定した。これは、太陽表面の至近距離の高解像度画像と、探査機周辺の太陽風の直接測定を結びつけた初めての事例である。これによって、科学者達は、遅い太陽風がどこから来るのかをより明確に特定することができ、太陽物理学者が太陽風の源領域を研究するための新しい道が開かれた。

    <ひとこと>: イメージのリンク先は動画 .mp4 です。

    <出典>: Solar Orbiter

    6月13日(木)
    CG4: グロビュールと銀河

    このガスの雲は銀河を食することができるだろうか? 写真に写っているこの奇妙な見た目の「生き物」の「爪」は、彗星の小球(Cometary globule)として知られるガスの雲である。 しかし、この小球(globule:グロビュール)は破裂している。彗星の小球は典型的にはダストの頭部と細長い尾を持っている。これらの特徴によって、彗星の小球は、視覚的には彗星と類似している。 しかし、実際にはそれらは非常に異なっている。小球はしばしば星の誕生の場であり、 そして、多くの人は頭の中で非常に若い星を描いている。 この物体の頭部が破裂した理由はまだ判明していない。小球の左側にある銀河は巨大であるが非常に遠くにあり、偶然の重ね合わせによって CG4 の近くに配置されているに過ぎない。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

    <出典>: Astronomy Picture of the Day

    6月12日(水)
    NASAの研究、軌道上のゴミの解決可能性に新たな視点を提供

    新しいデータ分析は、NASAとそのパートナーが、増大する軌道上の宇宙ゴミ(デブリ)の問題に対処するための、これまで考えられていたよりも費用対効果の高い方法を持つ可能を示している。

    NASAの技術・政策・戦略局(Office of Technology, Policy, and Strategy)が発表した新しい報告書は、軌道上のデブリがもたらすリスクを測定する方法について、NASAのリーダー達に新たな洞察を与えている。

    地球周回軌道での活動の活発化によって、地上通信の高速化から気象変動の理解の深化まで、いろいろなことがもたらされた。こうした機会の開花はより混雑した宇宙環境をもたらしている。この研究は、NASAが最近発表した宇宙持続可能性戦略で概説されているように、この重要な問題に経済学的なレンズを適用することによって、その環境の理解を急速に向上させるNASAの取り組みの一部である。

    報告書「軌道デブリの軽減、追跡、修復の費用と便益の分析」は、軌道デブリに関連する技術的および経済的不確実性に対処するための OTPS の作業の第2段階である。

    2023年に発表された OTPS フェーズ1報告書は、物体の移動、除去、再利用など、軌道上のデブリの修復措置の費用便益分析を求める政策立案者に初期情報を提供した。新しい報告書は、軌道上のデブリが宇宙船にもたらすリスクの推定の質を向上させた。これらの新しい推定値は、宇宙空間で最大のデブリからミリメートルサイズの破片まで、あらゆるものをカバーしている。また、 OTPS チームの焦点を拡げ、新たなデブリの発生を軽減し、既存のデブリを追跡できる行動も取り上げている。

    --- 以下略。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

    <出典>: NASA Communications

    6月11日(火)
    ガイア:ミルキウェイの最後の大きな衝突は驚くほど最近のことである

    我々の銀河系は、その生涯の間に他の多くの銀河のシステムと衝突してきた。ヨーロッパ宇宙機関(ESA)のガイア宇宙望遠鏡は、これらの衝突のうち、最も最近の衝突が、考えていたよりも何十億年も遅れて起こったことを明らかにした。

    ミルキウェイ銀河は、他の銀河が我々の銀河のシステムに接近し、衝突し、引き裂かれ、飲み込まれるにつれて、時とともに成長してきた。衝突のたびに皺が生じ、その皺は今でもさまざまな星のファミリーに波紋を広げ、宇宙空間での星の動きや振る舞いに影響を与えている。

    ガイアの目的の一つは、これらの皺を調査することによってミルキウェイの歴史を解明することであり、それは、観測された約20億の天体のごく一部である、我々の星の近くにある10万個以上の星の位置と動きを特定することによって行うことである。

    これらの銀河の皺は、2018年にガイアによって発見された。これは、観測結果と宇宙論的シミュレーションを比較することによって、その皺を寄せた衝突のタイミングを正確に決定した初めての調査である。

    不可解な動き

    ミルキウェイのハローには、珍しい軌道を持つ星の大きなグループがあり、その多くは、天文学者達が「最後の大きな合体(last major merger)」と呼ぶ出来事の間に我々の銀河システムに取り込まれたと考えられている。その名前が示すように、我々の銀河が他の銀河との重大な衝突を経験したのはこれが最後であり、我々の銀河の中心のすぐ近くを通過する星によってミルキウェイをあふれさせた、巨大な矮小銀河であると提起されている。

    科学者達は、この合体を80億年から110億年前、ミルキウェイ銀河が揺籃期にあった頃と年代測定し、ガイア・ソーセージ・エンケラドゥス(GSE:Gaia-Sausage-Enceladus)として知られている。しかし、2022年にこの望遠鏡のデータ公表3の一部として公開されたガイアのデータは、別の合体が異常に動く星をもたらした可能性があることをも示唆している。

    --- 以下略。

    <ひとこと>: 左上のイメージの比較を見るには下記リンクから。右上のイメージのリンク先は動画 .mp4 、右下のイメージの大判はリンク先から。

    <出典>: Gaia

    <参考>: ヨーロッパ宇宙機関のガイア(gaia)衛星は、ミルキウェイの中心の星の位置と動きの方向を、徹底的に調査することを目的として、2013年12月に打上げられた。その膨大な観測結果から得られたのは、ミルキウェイのハローを大きく飛び回る多数の星達であった。これらはミルキウェイの比較的近い段階での、他の銀河との衝突と併合に伴って残された、他の銀河の星達であると考えられている。

    6月10日(月)
    NASAのジュノ、エウロパの高精細な氷の殻を提供する

    太陽を動力源とする探査機からのこのイメージは、氷に包まれた木星の衛星の、いくつかの興味深い特徴を示している。

    NASAのジュノ(Juno)探査機に搭載されたジュノ・カメラ(JunoCam)からのイメージは、木星の衛星エウロパの北極と南極の氷の地殻が、かつてあった場所と異なるという理論を裏付けている。この探査機の恒星基準装置(SRU)による、この氷の月の別の高解像度イメージが、プルーム(噴煙)活動の可能性のある兆候と、最近、塩水が表面に泡立った可能性のある氷殻の破壊領域を明らかにしている。 エウロパの氷の外側の下には巨大な海が存在すると考えられており、これらの表面の特徴は、エウロパの外側の氷殻が本質的に自由に浮遊して移動しているという理論である「真の極地彷徨い」と関連している。

    惑星科学研究所で JunoCam の計画を主導する科学者は、「エウロパの氷の殻が岩石の内部から切り離され、その結果、殻に高い応力レベルがかかり、予測可能な破壊パターンが生じると真の極地徘徊が起こる」と述べている。「南半球でこれらの破砕パターンがマッピングされたのは今回が初めてであり、エウロパの表面の地質に対する真の極域の彷徨の影響が、これまで同定されていたよりも広範囲に及んでいることを示唆している」

    --- 中間略 ---

    エウロパ・クリッパー(Europa Clipper)は、この氷の衛星が生命に適した条件を持つかどうかの調査など、エウロパに焦点を当てている。2024年秋に打ち上げられ、2030年に木星に到着する予定である。2023年4月14日に打ち上げられたヨーロッパ宇宙機関の木星氷衛星探査ジュースミッションは、2031年7月に木星に到達し、特にガニメデに焦点を当て、木星の三つの大きな氷の衛星、燃えるようなイオおよび小さな衛星、惑星の大気、磁気圏、リングなど多くのターゲットを調査する。

    ジュノは5月12日に61回目の木星への接近フライバイを実施した。6月13日に予定されているガス惑星の62回目のフライバイには、高度約 29,300 キロメートルでのイオのフライバイが含まれている。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

    <出典>: Jet Propulsion Laboratory

    6月9日(日)
    モンゴルの山々の長い影

    モンゴル中央部上空を周回中に、国際宇宙ステーション(ISS)は、雪に覆われたゴビ・アルタイ山脈とその周辺の平野の画像を撮った。

    午後遅くの日差しが、眼下の平原に山頂の長い影を落としている。山塊には無数の急峻な峡谷が切り込んでおり、その険しい外観は、イメージ上部に沿って広がる平坦な平原とは対照的である。この平原は半ば砂漠化した草原、または、この地域の家畜遊牧民に牧草地を提供する草原である。

    イメージの左上には小さな干上がった湖の一部がある。雨の多い年には、この湖の水がオログ湖(Orog Lake:このイメージにはない)に供給される。この湖と他の近くの湖は、水鳥の保護生息地としてラムサール条約保護地域である。

    馬、牛、ラクダ、ヤギ、羊に加えて、モンゴルにはヤクや牛が生息している。2000年以降、四回の、主に異常に深い雪や氷が草へのアクセスを妨げ、家畜の大幅な損失を引き起こしている。1990年以降、群れのサイズが急速に拡がり、厳しい冬に脆弱な動物の数が増えた。

    山塊を囲む草原は、科学者達によって寒冷地に分類され、半砂漠の海抜約 1,250 メートルの標高に達している。山塊の山頂では年間気温はさらに低く、最高峰のイク・ボグド(Ikh Bogd:別名テルグン・ボグド:Tergun Bogd)は、 4,000 メートル近くに達している。山頂の気候は年間の平均気温が氷点下であり、極地のツンドラに分類される。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

    <出典>: Earth Observatry

    6月8日(土)
    火星のロボットの影

    パーサビアランスは、2021年から赤い惑星を調査し、火山活動と古代の流れる水の複雑な歴史の証拠を見つけ、内部太陽系を横断する息をのむようなイメージを送ってきた。ここでは、2024年2月に、パーサビアランスが、フレームのトップに見えるローカルな丘と共に、太陽の反対側の、ジェゼロ・クレータのネレトヴァ谷(Neretva Vallis)の全貌を見ている。車サイズのローバーの、明らかに人間でない影が、散らされた岩の上に重ねられて中央下に見える。パーサビアランスは、今、その飛行する仲間インジェニュイティなしで働き、古代の生命のサインを求めて火星の調査を続けている。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

    <出典>: Astronomy Picture of the Day

    6月7日(金)
    NASAの小型双極衛星について知っておくべき五つのこと

    「PREFIRE」と名付けられたこのキューブサットの二つ組デュオが、地球の極域が宇宙に放射する熱の量と、それが気象にどのような影響を与えるかについての理解を深める。

    靴箱ほどの大きさの双子の気候衛星が、まもなく地球上で最も遠い二つの地域、北極と南極を調査することになる。NASAのミッションでは、地球が極地から宇宙空間に放出する熱の量を測定する予定で、これは地球に出入りするエネルギーのバランスと、それが地球の気象にどのような影響を与えるかを理解するための鍵となる情報である。

    この PREFIRE (Polar Radiant Energy in the Far-InfraRed Experiment:遠赤外線極放射エネルギー装置)ミッションのデータは、両極での温室効果、特に水蒸気、雲、その他の地球大気の要素が熱を閉じ込めて宇宙空間に放射されないようにする能力についての理解を深めるのに役立つ。研究者達は、この情報を使用して気象のモデルを更新し、温暖化が進む世界での、海面、天候、雪や氷の覆いがどのように変化するかについて、より正確に予測できるようにする。

    PREFIRE の各キューブ衛星(キューブサット)は、熱赤外分光計を使用して、地球の表面と大気から宇宙空間に放射される遠赤外線エネルギーの形で熱を測定する。

    ここでは、この小さいながらも強力なミッションについて知っておくべき五つのことを紹介する。

    1. PREFIREキューブサットは、地球の大気と氷が、北極と南極から宇宙に放射される熱量にどのように影響するかについての、新しい情報を提供する。
    2. このミッションでは、地球が宇宙空間に放出する熱の遠赤外線部分に焦点を当てる。
    3. PREFIRE からのデータは、極域および全球の気象モデルの改善に役立つ。
    4. PREFIRE キューブ衛星は、フルサイズの衛星よりも低コストのプラットフォームを使って、重要な疑問に答えるように設計されている。
    5. PREFIREミッションは、次世代の衛星気候科学者の育成に役立つ。

    <ひとこと>: この PREFIRE 衛星は、一機目が5月27日に、二機目が6月5日に打上られました。 「アストロサイエンス(6月7日)」 参照。大判はイメージのリンクから。

    <出典>: Jet Propulsion Laboratory

    6月6日(木)
    NASA、ハッブル宇宙望遠鏡の方向決定方法を変更

    一連のテストを完了し、選択肢を慎重に検討した後、NASAは、火曜日に、ハッブル宇宙望遠鏡を一つのジャイロスコープのみで運用するように移行する作業が進んでいると発表した。望遠鏡は5月24日にセーフモードに入り、作業が完了するまでそこに留まるが、この変更により、ハッブル宇宙望遠鏡は、観測の大部分に影響を与えずに、この10年間、更に次の10年間、宇宙の秘密を探求し続けることができる。

    現在探査機に搭載されている六つのジャイロのうち三つが稼働でき、望遠鏡が向けられる方向を決定および制御するシステムの一部となっている。これまでの6ヶ月間、ある特定のジャイロが誤った測定値を返し、探査機が何度もセーフモードに入り、望遠鏡が地上からの新しい指示を待つ間、科学観測を中断してきた。

    この一つのジャイロは「飽和」を経験しており、チームはジャイロの電子機器をリセットして正常な測定値に戻すことに何度も成功してきたが、その結果は一時的なものであり、5月下旬に再び問題が再発した。

    NASAは、一貫した科学運用に戻るために、宇宙船を長い間検討してきた新しい運用モードに移行している。ハッブル宇宙望遠鏡は一つのジャイロのみで運用し、他のジャイロは将来の使用のために利用可能にしておくということである。この宇宙船は、2009年の5回目で最後のスペースシャトルサービスミッションによって六つの新しいジャイロが設置された。これまでに、これらのジャイロのうち三つは、現在問題が発生しているジャイロを含めて引き続き稼働しており、チームは引き続き監視を続ける。ハッブル宇宙望遠鏡は、これまで、効率を最大化するために三つのジャイロを使用してきたが、一つのジャイロだけで科学観測を続けることもできる。NASAは、20年以上前に、ハッブル宇宙望遠鏡の寿命を延ばし、三つ以下のジャイロで科学を成功裏に提供できるようにするための方法として、この計画を開発した。ハッブル宇宙望遠鏡は、2005年から2009年にかけて、二つのジャイロモードで運用されていた。2008年には、科学観測の質に影響を及ぼさずに短期間、一つのジャイロ運転が実証された。

    今後、一つのジャイロモードで科学観測を続けるが、いくつかの小さな制限が予想される。ハッブルが科学的な目標を捜し固定するのにより多くの時間を必要とする。また、火星よりも近い移動天体を追うこともできないが、これはハッブル宇宙望遠鏡にとっては稀なターゲットである。

    この移行には、天文台と地上システムの再構成と、将来計画されている観測への影響の評価が含まれる。チームは、6月中旬までに科学活動を再開する予定である。NASAは、ハッブル宇宙望遠鏡がジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡や将来のナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡など、他の天文台とともに、今後数年間にわたって新しい宇宙の発見を続けると予想している。

    1990年に打上げられたハッブル宇宙望遠鏡は、予想された設計寿命の2倍以上、30年以上にわたって宇宙を観測し続け、最近34周年を迎えた。

    <要点>: ハッブル宇宙望遠鏡は、三つのジャイロスコープを同時に使って目標天体に姿勢を合わせてきた。ジャイロは、2009年の最後の保全ミッションで六つを新しく設置したが、既に三つのジャイロは使用不能になっている。残り三つのうちの一つは、これまで何回かトラブルを起こしてきたが、5月下旬再び異常が検出された。
    望遠鏡は、効率は落ちるが、一つのジャイロでも運用できるように設計されている。今後は残り二つのジャイロの一つづつを使う運用モードに切り替えられる。
    なお、2003年のスペースシャトルコロンビアの事故の詳細検討の結果、以降のハッブル宇宙望遠鏡の保全は行わないことに決定されている。

    <ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。ハッブル宇宙望遠鏡の姿勢制御方法の概要は こちら(英語) から。

    <出典>: NASA Hubble Mission Team

    6月5日(水)
    シミュレーション:ブラックホールの合体

    リラックスして、二つのブラックホールが合体するのを見よう。2015年に初めて重力波を直接検出したことに触発され、このシミュレーションはスローモーションではあるが、実際には約3分の1秒かかる。このブラックホールは、宇宙を舞台に、星、ガス、ダストの前面にポーズをとっている。それらの極度の重力は、それらが間近に螺旋を描き最終的に一つに合体して、アインシュタイン・リングにレンズ化する。この特に見えない重力波は、ブラックホール併合の後でさえアインシュタイン・リング内外にさざ波を立て、このような可視光線のイメージをつくる。 GW150914 と呼ばれ、 LIGO によって検出されたこの重力波は、13億光年の距離にある太陽質量の36および31倍のブラックホールの融合と合致している。この最終的な一つのブラックホールは、太陽の質量の63倍になり、重力波として放散されるエネルギーに変わり、三つの太陽の質量として残る。それらの極度の重力は、それらが間近に螺旋を描き最終的に一つに合体して、アインシュタイン・リングにレンズ化する。この特に見えない重力波は、ブラックホール併合の後でさえアインシュタイン・リング内外にさざ波を立て、このような可視光線のイメージをつくる。 GW150914 と呼ばれ、 LIGO によって検出されたこの重力波は、13億光年の距離にある太陽質量の36および31倍のブラックホールの融合と合致している。この最終的な一つのブラックホールは、太陽の質量の63倍になり、重力波として放散されるエネルギーに変わり、三つの太陽の質量として残る。

    <ひとこと>: イメージのリンク先は動画 Youtube です。

    <出典>: Astronomy Picture of the Day

    6月4日(火)
    LRO からの回転する月

    今、月がこのように自転しているのを見る人はいない。 それは地球の月が潮汐的に地球に固定されており、我々には一面しか見えないからである。 しかし、現代のデジタル技術を考えると、月探査軌道船(LRO:Lunar Reconnaissance Orbiter)が送り返した多くの詳細な画像と組み合わせることで、 高解像度の仮想月回転ムービーが構成されている。 注目のタイム・ラプス(コマ落とし)動画は、標準的な地球の視界から始まる。 しかし、直ぐに、地球からは見るのが難しい暗い中央の大きなクレータ、メア・オリエンターレ(Mare Orientale)が赤道の下の視界の中で回転する。全太陰暦(注:月の一回転)を24秒に圧縮したこのビデオは、月の地球に面する側が豊かな暗い月の海を含み、一方月の遠い側が明るい月の高地によって支配されていることを明瞭に示している。今、今後数年以内に再び月面に着陸することを目的としたNASAのアルテミス計画など、複数の国や企業からの32を超える新しい月へのミッションが活発に開発されている。

    <ひとこと>: イメージのリンク先は動画 Youtube です。

    折しも、北京時間の2日朝、中国の無人月探査機「嫦娥(じょうが)6号」が月の裏側への着陸に成功したと報じられました。国家航天局の発表によると、月の南極に近い「南極エイトケン盆地」に着陸し、間もなく表面からの試料採取を開始し、世界で初めて、月の裏側からの試料を持ち帰ることを目指します。
    中国では、2019年に嫦娥4号が史上初の裏側への着陸に成功しており、嫦娥6号の打上げに先立って、3月に中継通信衛星「鵲橋(じゃっきょう)2号」が月の周回軌道に投入されていました。

    <出典>: Astronomy Picture of the Day

    6月3日(月)
    NASAのジュノ・ミッション、木星の小さな衛星アマルテアを発見

    NASAのジュノーミッションは、2024年3月7日に行われた59回目の木星接近フライバイで、これらの木星の姿を捉えた。木星の様々な色の帯や、大赤斑を含む渦巻く嵐をよく見ることができる。よく見ると、小さな衛星 アマルテア(Amalthea) が見える(右図)。

    半径僅か84キロメートルのアマルテアはジャガイモのような形をしており、球体になるほどの質量がない。2000年、NASAのガリレオ探査機は、インパクトクレータ、丘、谷など、いくつかの表面の特徴を明らかにした。アマルテアは、木星の四つの最も大きな衛星の中で最も内側にあるイオの、更に内側で木星の周りを回っており、1周するのに地球の日付で 0.498 日かかる。

    アマルテアは太陽系で最も赤い天体であり、観測によると、太陽から受ける熱よりも多くの熱を発している。これは、木星の強力な磁場の中を公転する際に、この月の核に電流が誘導されるためと考えられる。あるいは、この熱は木星の重力によって引き起こされる潮汐応力によるものかも知れない。

    この2枚のイメージの1枚目が撮影された時点で、ジュノ探査機は木星の雲の頂きから約 265,000 キロメートル上空、赤道から北に約5度の位置にいた。

    <ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

    <出典>: Jet Propulsion Laboratory

    6月2日(日)
    ハリケーンシーズン始まる

    6月1日は、大西洋における2024年のハリケーンシーズンの始まりである。NASAは、宇宙ステーションからの眺めと人工衛星の両方からハリケーンを観測し研究している。この視点は、科学者達が気候変動がハリケーンにどのような影響を与えるかを理解し、温暖化が進む世界で地域社会の熱帯低気圧に備える方法を学ぶのに役立っている。

    このイメージは、米国東部時間2023年8月29日午前11時35分に、国際宇宙ステーション(ISS)の外部高解像度カメラが撮影したハリケーン「アイダリア(Idaria)」のイメージである。国立ハリケーンセンターによると、アイダリアはメキシコ湾でカテゴリー1の嵐であり、時速140キロメートル(秒速39メートル)の風が吹いていた。

    <ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

    <出典>: Monika Luabeya (著者名です)

    6月1日(土)
    2024年6月:NASAによるスカイ・ウォッチングのヒント

    土星と火星が月と出会い、木星が夜明けに戻り、また、空に見られるいくつかの一般的な天体を識別するためのヒント。

     今月中 - すべての惑星の活動は明け方の空にあり、土星と火星は早朝に昇る。今月後半には木星が加わる。
     6月 2日 - 日の出1時間前に、赤みを帯びた火星が三日月のすぐ下に浮かぶ。南に向かって近くに潜んでいる土星とともに東の低空でペアを見つけよう。
     6月 3日 - 朝の薄明りに三日月が火星の下にある。東の空の低いところを探そう。
     6月 6日 – 新月
     6月21日 – 満月
     6月24日 - 日の出前に木星が東の低い空に見えるようになる。6月の最終週に、地平線から約10度の高さにある明るい惑星を探し、火星と土星と南に向かって伸びる線を形成する。
     6月27日 - 真夜中に土星とともに東に昇る月を探そう。この朝の夜明けまでには、あなたは南の空高くに彼らを発見するだろう。それらは、双眼鏡による視界の同じフィールドに非常に間近に現れる。

    6月29日には、土星、月、火星、木星が明け方の空に並ぶ。これは7月まで続く。

    「プラネットパレード」: 天王星と海王星は、特に朝の空が明るくなると、望遠鏡なしでは見ることができないほど暗い。惑星のパレードに最も近いのは6月29日、土星、月、火星、木星が明け方の空に並ぶ(右図)。これは7月まで続く。

    --- 以下略。

    <ひとこと>: 他の天体現象は、トップのイメージのリンク先、動画 Youtube(英語解説)からご覧ください。

    <出典>: Preston Dyches(著者名です)


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