このページでは様々な時宜に即した「今日の宇宙(Space of the Day)」をご紹介しています。
掲載期間は約一か月。土曜日・日曜日・祝日は「肩の凝らない」記事を選んでいます。

  

10月9日(水)
NASA、第44回アルテミス協定の署名国としてドミニカ共和国を歓迎する

ドミニカ共和国は、アルテミス合意に署名した最新の国であり、NASAとともに、月、火星、およびその先の安全で透明性があり、責任ある探査のための原則を推進するというコミットメントで他の43か国に加わった。

ドミニカ共和国の駐米大使は、10月4日、ドミニカ共和国を代表してアルテミス合意に署名した。また、同国は、10月14日の国際宇宙会議中に開催されるアルテミス合意署名国のハイレベル会議への参加を確認する予定であり、そこでは、さらなる原則の実施が議論される。

2020年、米国と他の7カ国は、人類にとって宇宙の有益な利用を促進する初期の原則を特定したアルテミス合意に最初に署名した。この協定は、宇宙条約や登録条約、救助・帰還などの協定、NASAとそのパートナーが支持してきた科学データの公開など、責任ある行動のベストプラクティスと規範に基づいている。

アルテミス合意のコミットメントと、これらの原則の実施を進めるための署名国による努力は、安全で持続可能な宇宙探査を支援するものである。今後数週間から数か月で、更に多くの国が署名する予定である。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Jessica Taveau(著者名です)

10月8日(火)
10月の夜空ノート:アンドロメダの上昇をキャッチ!

銀河を思い浮かべるなら、頭の中のイメージはおそらくアンドロメダ銀河だろう! この巨大な隣接する銀河(M31)の研究は、現代の天文学を形作る上で非常に重要な役割を果たしてきた。スター観察者のボーナスとして、アンドロメダ銀河も美しい光景である。

<図の解説>: アンドロメダ銀河を見つけよう! M31 のより一般的な名前は、北半球に秋が到来すると目立つようになる親の星座に由来している。暗い空の場所から見ると、肉眼で驚くほどのディテールを観察できる。このヒントは、光害のある地域からでさえ可能である。ペガサスの大広場またはカシオペア座をガイドとして使用してそれを見つけよう。

夜に見るすべての星は、ミルキウェイ銀河の一部であると聞いたことがあるだろうか? それはほとんど真実であるが、アンドロメダ座とカシオペア座の境界近くに位置する一つの星のような天体は、肉眼ではぼやけて見える。それは、それが星ではなく、アンドロメダ銀河であり、その1兆個の星達が我々の目には 3.4 等級の霞の塊として見えるからである。なぜこんなに暗いのだろう? 距離? それは我々の銀河の外側にあり、約2千5百万光年離れており、我々の最も初期の祖先が石器を見つけ出したときに、我々が見ている光が M31 の星を離れるほど遠く離れている。双眼鏡はより詳細に示すだろう。 M31 の明るいコアは、そのかすかな円盤とともにやや際立っている。望遠鏡は更に詳細に引き出すが、多くの場合、銀河全体を一度に見ることはできない。空の質と倍率によっては、個々の球状星団、構造、および、その周回する矮小銀河の少なくとも二つ(M110とM32)を確認できる場合がある。光害や薄い雲、煙、または霞は、「かすかなぼやけた」場合と同様に、詳細の観察を著しく妨げる。驚くべきことに、しつこい観察者は、空が澄んでいる限り、中程度の光害の地域からも M31 のコアを見つけることができる。

現代の天文学は、アンドロメダ銀河の研究によって大きく形つくられた。100年前、我々の銀河以外にも銀河があるという考えは広く受け入れられなかった。このために M31 は「アンドロメダ星雲」と呼ばれていた。 M31 の観測がますます詳細になるにつれ、天文学者達は、 M31 が我々の宇宙におけるその位置付けに疑問を抱くようになった。 M31 はそれ自体が「島宇宙」であり、我々のミルキウェイ銀河の一部ではないだろうか? ハーロウ・シャプレーとヒーバー・カーティスは、その性質をめぐって1920年の「大論争」に参加した。カーティスは、予想よりも暗い新星、ダストレーン、その他の奇妙なものの観察から、この「星雲」は、実際には、我々の銀河とはまったく異なる銀河であると強く主張した。数年後、エドウィン・ハッブルは、ヘンリエッタ・リービットの研究を基礎に、距離測定の「標準的なろうそく」としてのケフェイド変光星を基に、アンドロメダの写真によってケフェイドを観察し、 M31 の距離を私たちの銀河の境界からはるかに外側に推定し、 M31 が確かに別の銀河であると結論付けた。そして、アンドロメダ星雲はアンドロメダ銀河として知られるようになった。

<図の解説>: 科学者達がアンドロメダのガス状のハローを探査するために使用した43個のクエーサーの位置を示している。これらのクエーサー(ブラックホールを動力源とする活動銀河の非常に遠くの輝かしいコア)は、ハローのはるか後ろに散らばっているために、科学者達は、複数の領域を調べることができる。クエーサーの光を巨大なハローを通して観察し、この光がハローにどのように吸収されるか、そしてその吸収がさまざまな領域でどのように変化するかを観察した。背景のクエーサーからの光の吸収を追跡することによって、科学者達はハローの物質を調べることができる。

これらの発見は、今日まで天文学者達を鼓舞し、彼らは我々の宇宙の性質に関するヒントを求めて M31 や他の多くの銀河を観測し続けている。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Kat Troche(著者名です)

10月7日(月)
ヘラ地球防衛ミッション:小惑星の謎を解く

2022年9月26日、NASAの DART 宇宙船は秒速 6.1 km で移動しつつ小惑星ディモルフォスに衝突した。この衝突によって親小惑星の周りのピラミッドサイズのディモルフォスの軌道が縮んだ。

この壮大な実験は、小惑星の接近の際に、宇宙船で叩いてそらすことによって、地球を守ることができることを証明するために行われた。 DART は成功した。しかし、それでも、科学者達が知らないことが多くある。ディモルフォスの正確な質量と構成はどれくらいだろう? 衝突は小惑星に何をしたのだろう? DART の衝突によって残されたクレータの大きさはどれくらいだろう? それとも、ディモルフォスは完全にバラバラになり、自身の弱い重力によってのみ保持されているのだろうか?

ヨーロッパ宇宙機関の Hera ミッションでは、探査機は、ディモルフォスを再訪し、偏向した天体に関する重要なクローズアップデータを収集し、 DART の大規模な実験をよく理解し、再現可能な地球防衛技術に変える予定である。

このミッションでは、連星システムでのこれまでで最も詳細な探査も行われる。連星は既知の小惑星全体の15%を占めているが、詳細に調査されたことのない小惑星もある。

Hera はまた、メインミッションよりも近くに進出し、最終的に着陸する靴箱サイズの宇宙船、ヨーロッパ宇宙機関初の深宇宙「キューブサット」の展開や、ビジョンベースのナビゲーションに基づくメイン宇宙船の「自動運転」の野心的なテストなど、技術実証実験も行う。

ヘラの観測が終わる頃には、ディモルフォスは歴史上最も研究された小惑星となるだろう。これは、もしこの大きさの天体が地球に衝突すれば、都市全体を破壊する可能性があるので極めて重要なことである。

<ひとこと>: イメージのリンク先は動画 mp4 です。打上に関する記事は 「アストロサイエンス(10月7日)」 から。

<出典>: Space Safety (ESA)

10月6日(日)
ハリケーンヘレーン、メキシコ湾岸の海域をかき混ぜる

2024年9月26日、ハリケーン「ヘレーン(Helene)」がフロリダ州ビッグベンド地方に上陸し、複数の州で壊滅的な被害をもたらした。陸地に影響を与えた大雨、強風、高潮も海に痕跡を残した。このイメージ(右上)は、ヘレーンが上陸した数日後の、9月29日のメキシコ湾を示している。比較のために、左下のイメージは、より典型的な条件での9月22日の同じ領域を示している。これらのイメージは NOAA-21 衛星によってとられた。

ヘレーンの風と波は、浅い沿岸地域に沿って海底からの堆積物をかき混ぜた。この微粒子からの光が反射し、水が鮮やかな青色に見える。高潮、河川の氾濫、鉄砲水の発生と流出が陸面を侵食し、さらに多くの粒子を海に運び色を増した。

9月28日、浮遊堆積物がさらに広い範囲で水を彩った。その日は雲が多かったが、海面の一部がまだ見えていた。この影響は嵐が過ぎ去った後もずっと見ることができ、ヘレーンがフロリダ州に上陸してから1週間後の10月3日にも広く分布している。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。なお、左上の比較のイメージを見るときは出典欄の原典から。

<出典>: Earth Observatry

10月5日(土)
運命の星イータ・カリーナ

イータ・カリーナは爆発しようとしているのかもしれない。しかし、それが来年か、今から百万年後か誰も知らない。イータ・カリーナの質量は、それを完全なふくれた超新星の優れた候補にする、我々の太陽より約100倍の大きさである。歴史の記録は、約150年前に、イータ・カリーナが、南の空で最も明るい星の一つになった、変わった爆発を起こしたことを示している。鍵穴星雲のイータ・カリーナは、現在自然のレーザー光を発していると考えられる唯一の星である。1996年にとられたこのイメージは、この危険な星を囲む変わった星雲における、新しい詳細をもたらした。今、この鮮明な視界には、二つの明白なローブ、熱い中心領域と奇妙な放射状の筋が見えている。このローブは、中央近くで発せられる青と紫の光を吸収する、ガスとダストのレーンで満たされている。この筋はまだ説明できていない。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

10月4日(金)
ポルフィリオン:知られている最長のブラックホールのジェット

ブラックホールジェットはどこまで伸びるだろう?
つい最近、数十億年前に活動していたブラックホールから 2300 万光年の長さのジェットのペアが発見され、新しい記録が見つかった。

神話上のギリシャの巨人にちなんでポルフィリオン(Porphyrion)と名付けられたこの印象的なジェットは、落下するガスから放射線を生成するのに忙しい、一般的には長いジェットをつくらないタイプのブラックホールによってつくられた。

この注目のアニメーションビデオは、この強力なブラックホールシステムの周りを旋回する様子を描いている。

ポルフィリオンは高エネルギー粒子の速い流れとして示され、明るい領域はこれらの粒子が周囲のガスに影響を与えている場所である。これらのジェットの存在は、ブラックホールがそれらの故郷の銀河だけでなく、周囲の宇宙のはるか彼方に影響を与える可能性があることを示している。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

10月3日(木)
大気汚染と戦うために月のダストを測定

月の塵またはレゴリスは、本棚や卓上に集まる地球上の粒子とは異なり、研磨性があり、あらゆるものにまとわりつく。NASAのアポロ計画による月へのミッションを通して、これらのレゴリスは、宇宙飛行士や貴重な宇宙のハードウェアに課題をもたらした。

アポロ17号のミッションの中で、宇宙飛行士のハリソン・シュミットは、塵を吸い込んだときの反応を「月の花粉症」と表現し、くしゃみ、涙目、喉の痛みを経験した。症状は消えたが、人間の健康への懸念は、月のあらゆる形態の土壌に関する広範なNASAの研究の背後の原動力となっている。

宇宙飛行士達の健康と重要な技術を保護するために塵を管理する必要性は、大気汚染との闘いにおいて、地球上でも既に有益である。

NASAの計画への貢献者として、月前線社(Lunar Outpost Inc)は、地球上の汚染物質も検出する、大気中の月の土壌の量を検出および測定する大気質センサーシステムを開発した。

Canary-S とブランド名を変更したこのセンサーは、現在、地球の低コストでワイヤレスの大気質および気象監視のニーズに応えている。粒子状物質、一酸化炭素、メタン、二酸化硫黄、揮発性有機化合物など、さまざまな汚染物質を測定できる。

石油・ガス業界では、このセンサーを使って漏洩ガスの排出を継続的にリアルタイムで監視し、米国森林局では森林火災の排出を監視している。

<図の解説>: 宇宙飛行士のジーン・サーナンが、アポロ17号のミッションで月面にいたとき、彼の宇宙服は大量の月の塵を集めた。灰色の粉末状の物質が布地に付着してカプセルに入り込み、「月の花粉症」と呼ばれる、目、鼻、喉の炎症を引き起こした。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。記事は要点のみ。

<出典>: Margo Pierce(著者名です)

10月2日(水)
若い星の集団 NGC 1333

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡からのこの壮大な合成イメージは、 若い星団 NGC 1333 の中心を覗いている。英雄的なペルセウス座から僅か 1,000 光年の距離にあるこの近くの星団は、大きなペルセウス座の分子雲の端にある。ジェームスウェッブ宇宙望遠鏡は、低質量の褐色矮星や自由浮遊惑星を特定するためにこの地域を深く探査し、その一環である宇宙望遠鏡のこの視界は、ダストの多い星団の乱流の星座を横断して約2光年にわたって広がっている。

実際に、 NGC 1333 は、100万年未満の星を宿していることが知られているが、そのほとんどは、広く分布する星屑によって光学望遠鏡から隠されている。この混沌とした環境は、45億年以上以前に我々の太陽が形成された環境と似ているかも知れない。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。ジェームスウェッブ宇宙望遠鏡から発表された記事(ヨーロッパ宇宙機関)は こちら

<出典>: Astronomy Picture of the Day

10月1日(火)
ゲートウェイ:エネルギッシュな探索

人類初の月面宇宙ステーションであるゲートウェイを支える最先端技術を紹介しよう。

技術者達は、これまでに飛行した中で最も強力な太陽電気による宇宙船となる月面宇宙ステーション、ゲートウェイの主要な動力要素を組み立てるために熱心に取り組んでいる。

ゲートウェイのパワーと推進エレメントは、アメリカン・フットボールのフィールド・エンドゾーンとほぼ同じ大きさの、これまでに建設された中で最大のソーラーアレイを使用し、太陽エネルギーを深宇宙探査に利用する。

これには、ゲートウェイを地球から月周回軌道に送り、アルテミスIV、V、VI ミッションでは、それを維持するために必要な推力を生成するためにキセノンガスにエネルギーを供給する。これらのミッション以降、宇宙飛行士の国際チームは、追加の居住スペースと作業スペースでゲートウェイを拡大し、ゲートウェイから月の南極地域への旅をする。

パワー&プロパルジョンエレメントは、ゲートウェイのサブシステムに電力を供給し、月面、宇宙ステーション、地球、そしてその逆の間の通信を可能にしする。このモジュールは、プシュケ(Psyche)や DART(Double Asteroid Redirection Test)などの過去の成功した電気推進ミッションからの技術の進歩に基づいており、NASAが深宇宙で可能な境界を広げるのに役立つ。

<ひとこと>: 大判はそれぞれのイメージのリンクから。

<出典>: Dylan Connell(著者名です)

9月30日(月)
3Dのゲートウェイ宇宙ステーション

深宇宙科学探査の未来に没頭し、ゲートウェイ(Gateway)の3Dモデルをダウンロードしよう。クリックしてドラッグし、複数の角度から月面の宇宙ステーションの外観を探索しよう。

宇宙飛行士達の国際チームは、人類初の月周回宇宙ステーションであるゲートウェイを使って、深宇宙の科学的な謎を探求する。ゲートウェイは、科学的発見のために人間を月面に送り返し、火星への最初の有人ミッションの道筋を描くアルテミス・キャンペーン(Artemis campaign)の一部である。

国内外のパートナーと共同で建設されるゲートウェイは、人類初の月周回宇宙ステーションとなる。これは、月面での永続的な存在を確立し、火星への最初の有人ミッションへの道を開くNASAのアルテミス・キャンペーンの一環として、月探査と深宇宙発見の新時代をサポートする。ゲートウェイの素子は、世界中の施設で製造されている。最初の二つのモジュールは、アルテミスⅣに先立って月周回軌道に打ち上げられる。ゲートウェイの詳細、およびその建設と月周回軌道への旅に関する最新情報については こちら(英語) から。

ゲートウェイのコア
このインタラクティブモデルは、ゲートウェイのコア・エレメントを紹介しており、ゲートウェイは一年中月軌道に留まり、貴重な科学データを収集しながら自律的に運用される。月面宇宙ステーションは、クルーの宇宙船と補給モジュールがドッキングし、月面へのミッションに備える中央ハブとして機能する。

国際ゲートウェイの月周回軌道(右図)
NASAのゲートウェイ宇宙ステーションのユニークな月周回軌道は、アルテミス計画の宇宙飛行士達とその宇宙船に、アルテミスミッションの焦点である重要な月の南極地域を含む月の表面全体へのアクセスを提供する。また、深宇宙環境内でのユニークな科学的機会を提供する。

<ひとこと>: 複数の記事から編集しています。左上のイメージのリンク先は動画 .mp4 、右下のイメージのリンク先は動画 .gif です。

<出典>: Dylan Connell(著者名です)

9月29日(日)
より安全な方法を

1994年9月16日、宇宙飛行士のマーク・C・リーは、クルーが船外活動中に拘束から外れた場合に使用するように設計された SAFER(Simplified Aid for EVA Rescue)システムの試験を行った。 STS-64 ミッション中に行われたこの船外活動は、10年ぶりの米国の無力宇宙遊泳だった。

この SAFER テストは、スペースシャトルと宇宙ステーションの、二つのプログラムのニーズに対する共通の要件セットを確立し、 SAFER の飛行デモンストレーションを開発し、システムのパフォーマンスを検証し、最後にシャトルとステーションプログラム用の SAFER の製品バージョンを開発することを目的とした、より大きな SAFER 計画の第一フェーズだった。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Monika Luabeya(著者名です)

9月28日(土)
すばる望遠鏡、バーチャルツアー

国立天文台ハワイ観測所が運用するすばる望遠鏡は、酸素が地上の 6 割しかない標高約 4200 メートルのハワイ島マウナケア山頂域にあります。このバーチャルツアーではウェブブラウザまたは VR ゴーグルを使って、すばる望遠鏡ドーム内を 3D またはバーチャル空間で自由に散策することができます。また一部主要施設については説明・動画付きでご覧になれます。いつでもどこでも気軽に「すばる体験」をお楽しみください。

<ひとこと>: イメージのリンク先は動画のページです。

<出典>: すばる望遠鏡

9月27日(金)
時計の再開発:NASAの宇宙計時のための新技術

地球上では、腕時計が数秒遅くても問題ないかも知れない。しかし、宇宙船の重要な機能には、10億分の1秒以下の精度が必要である。たとえば、 GPS を使用したナビゲーションでは、衛星からの正確なタイミング信号に依存して位置を特定している。NASAのゴダード宇宙飛行センターの三つのチームは、宇宙探査の計時を新たな精度に引き上げるために取り組んでいる。

あるチームは、重要な宇宙船の通信とナビゲーションを支援するために、高精度の量子クロック同期技術を開発している。別のチームは、望遠鏡を一つの巨大な天文台として機能させるために、宇宙ベースのプラットフォームでの時計同期の技術を採用することに取り組んでいる。第3のチームは、現在の技術では不可能な科学観測を可能にするために、金属化学元素であるストロンチウムをベースとした宇宙船用原子時計を開発している。

社会では、電力網管理、株式市場の開場、金融取引など、多くの重要な機能にクロックの同期が必要である。二つのクロックを並べて同期させると、永遠に同じ速度で時を刻むことが期待できるかも知れない。しかし、実際には、特にそれらの時計が時速数万マイルで移動する宇宙船に搭載されている場合には、時間が経過すればするほど時計は同期しなくなる。

時計を同期させ、望遠鏡を結んで、これまで以上に多くのものを見る。
天文学では、一般的経験則では、望遠鏡が大きければ大きいほど、そのイメージは良くなる。仮に地球ほどの大きさの望遠鏡があれば、宇宙のイメージは非常に高解像度になるが、それは現実的ではない。しかし、さまざまな場所に複数の望遠鏡を設置し、各望遠鏡が高い時間の精度で記録し、その後、その観察をつなぎ合わせて、超高解像度のイメージを作成できる。

宇宙旅行のためにつくられた光原子時計
現在、宇宙船のナビゲーションシステムは、可能な限り正確な時刻を得るために、搭載された原子時計に依存している。ゴダードの物理学者は、原子時計のより正確なタイプである光原子時計を研究している。光原子時計は実験室には存在しているが、チームは、より精度の高い宇宙船対応バージョンの開発を目指している。

<ひとこと>: 記事は要約です。地球規模の望遠鏡の実例としては、2019年4月に発表された、イベント・ホライズンズ・テレスコープによって撮影された M87 中心の超大質量ブラックホールが知られている(左上の図)。この撮影では地球規模の8基の電波望遠鏡が、数日間にわたって収集した撮影データを基に作成された。大判はイメージのリンクから。

<出典>:  Goddard Digital Team

9月26日(木)
NASA、探査イニシアチブのための月面標準を開発

NASAは、4月のホワイトハウスからの政策指示を受けて、米国政府の利害関係者、パートナー、国際標準化団体と協力して、調整された月時(LTC:Coordinated Lunar Time)を確立する。NASAの宇宙通信・航法(SCaN)計画は、調整された時間をつくり出す取り組みを主導しており、これによって、太陽系の他の場所にも拡張可能な、将来の月面生態系が可能になる。

月の時間は、科学者達が地球の世界的に認められた協定世界時(UTC)を計算する方法と同様に、月の原子時計の加重平均によって決定されるだろう。現在の分析では、月の表面に置かれた原子時計は1日あたり数マイクロ秒ずつ速く「時を刻む」ように見えることが示されているので、月の正確な位置はまだ決定されていない。マイクロ秒は100万分の1秒である。NASAとそのパートナーは、現在、月の時間を確立するためにどの数学的モデルが最適かを研究している。

マイクロ秒は小さな差と思われるかもしれないが、光速で移動するものの場合、約168のサッカー場の距離を移動するのに十分な時間である。NASAのアルテミス・キャンペーンが月面とその周辺で持続的なプレゼンスを確立する準備をしている中で、NASAの SCaN チームは、重要な時差が将来の探査機の安全性に影響を与えないように、月での時間基準を確立する予定である。また、時間システムへのアプローチは、火星や太陽系全体の他の天体に対してもスケーラブルであり、長期の探査が可能になる。

商業的宇宙産業が成長し、より多くの国が月に活動するにつれて、時間の標準化の必要性は高まっている。

--- 以下略。

<ひとこと>: 大判は省略。

<出典>: Brian Dunba(著者名です)

9月25日(水)
NASAの木星探査ミッションについて知っておくべき八つのこと

地球の向こうの海の世界を調査する、NASA初の宇宙船であるエウロパ・クリッパー(Europa Clipper)は、氷に包まれた衛星エウロパが居住可能かどうかを調べることを目指している。

エウロパクリッパー宇宙船は、NASAが惑星ミッションのためにこれまでに建造した中で最大のものであり、フロリダのケネディ宇宙センタから、興味深い木星の氷の衛星であるエウロパまで、29億キロメートルを移動する。
宇宙船の打上期間は10月10日木曜日に始まる。

NASAの過去のミッションのデータは、科学者達に、凍った月の表面の下に巨大な塩の海があるという強力な証拠を提供してきた。エウロパ・クリッパーは木星を周回し、49回月への接近フライバイを行い、厚い凍った地殻の下に生命を維持できる場所があるかどうかを判断するために必要なデータを収集する。

以下はミッションについて知っておくべき八つのことを、項目のみ取上げている。

1、エウロパは、地球外で現在居住可能な条件を探すのに最も有望な場所の一つである。
2、この宇宙船は、太陽系で最も過酷な放射線環境、つまり太陽に次ぐ環境の中を飛行する。
3、エウロパ・クリッパーは木星を周回し、月のそばを何十回も飛行しながらエウロパを調査する。
4、宇宙船は、NASAのこれまでで最も洗練された科学機器群を搭載している。
5、アンテナと太陽電池アレイが完全に展開された宇宙船は、NASAが惑星ミッションのためにこれまでに開発した最大の宇宙船である。
6、木星までは長い旅である。木星は地球から平均して約7億 7000 万キロメートルにある。何れの惑星も動いており、宇宙船が運べる燃料の量は限られている。エウロパクリッパーは火星と地球の重力支援を得て、年間29億キロメートルを旅した後、2030年に木星の周りの軌道に入る。
7、米国とヨーロッパの機関が宇宙船に貢献している。br> 8、8260 万以上の人々の挨拶が、「Message in a Bottle」と呼ばれるミッションキャンペーンの一環として、宇宙船で運ばれている。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。記事は一部省略しています。右上のイメージのリンク先は動画 Youtube です。

<出典>: Jet Propulsion Laboratory

9月24日(火)
センチネル2C、驚異的な初めてのイメージを提供する

ヨーロッパ宇宙機関のセンチネル2C(Sentinel-2C)は、軌道に打ち上げられてから2週間も経たないうちに、最初のイメージを届けた。これらの壮大な地球の景色は、ヨーロッパが世界をリードする地球観測計画コペルニクスが提供する、新しい衛星のデータを垣間見ることができる。3機目のコペルニクス・センチネル2号衛星は、中央ヨーロッパ時間9月5日3時50分に、フランス領ギアナのヨーロッパの宇宙基地から、最後のベガ(Vega)ロケットで打ち上げられた。

Sentinel-2C は、その兄弟である Sentinel-2A と Sentinel-2B と同様に、軌道高度786 km から、地球の陸地、島、内陸および沿岸水域の高解像度イメージを撮影する、マルチスペクトル画像装置を搭載している。

この最初のイメージの一つでは、スペイン南部のセビリアとその周辺を見渡せる。アンダルシアの首都セビリアは、スペインで最も長い川の一つ、グアダルキビル川沿いにある。

<ひとこと>: この記事は、現時点で実用化されている世界で最高の、高精細な地球観測装置の精度を見ていただくために取り上げました。イメージをクリック(タップ)して大判(原版)から確認してください。

<出典>:  Sentinel-2C (ESA)

9月23日(月)
イタリアの南端

国際宇宙ステーションの遠征49クルーによってとられたこのイメージにイタリアの南端が見える。ナポリ市の明る灯がイメージの下部に見える。ロシアのソユーズ宇宙船が手前に見える。

<解説>: これは、8年前の2016年9月20日に掲載された記事である。国際宇宙ステーションへの宇宙飛行士達の送迎は、今でこそ米国独自のスペースXクルー船とロシアのソユーズ宇宙船が並行して担っているが、この時期は、米国のスペースシャトル計画の廃止に伴って、ソユーズ宇宙船が唯一の往復手段であった。現在は、スペースXクルー船とロシアのソユーズ宇宙船には、共に米国とロシアの飛行士達が同乗している。
--- 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Expedition 49, International Space Station

9月22日(日)
北京、中国

ヨーロッパ宇宙機関のセンチネル1A衛星からこのイメージは、中華人民共和国の首都北京を示している。それは 2,100 万人超が住む世界で最も人口の多い都市の一つである。しかし、中国の新年または 「春節祭」 の間には、休日を家族とともに過ごすために数百万人が大都市から彼らの故郷へ戻る旅をする。それは世界最大の年間の移動と考えられる。このイメージは、2014年10月8日、11月13日、12月31日からの、センチネル1Aレーダーの三つのスキャンの編集である。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Space in Image (ESA)

9月21日(土)
宇宙から見た地球:アドリア海の花

このヨーロッパ宇宙機関のコペルニクス・センチネル2号のイメージは、イタリアの海岸沿いのアドリア海北部で渦巻く藻類を捉えている。

イメージをクリック(タップ)して、この壮観なイメージを10メートルのフル解像度で見よう。

藻類の異常発生は、植物プランクトン---海面上または海面近くを漂う微細な海洋植物---の急速な成長を表している。植物プランクトンが光合成に利用するクロロフィルが周囲の水域を自然に着色し、特定の衛星センサーの使用によって、宇宙からの、これらの小さな生物を検出する手段を提供する。

13のスペクトルチャンネルを持つコペルニクス・センチネル2号の画像装置が、これらのブルームの範囲と進化を検出するために使用できる。2024年8月12日に撮られたこのイメージでは、風と海流が織りなすエメラルドグリーンの縞模様、渦巻き、花の渦がはっきりと見え、約9千平方キロメートルの面積をカバーしている。

藻類の異常発生は、海洋生物の、自然で不可欠な部分である。2024年7月と8月には、表層の水温が 29°C に達する温暖な気候と海の穏やかさが、アドリア海の藻類が分泌する粘液の増加につながった。ここでは、花の至る所に粘液の白い糸が見られる。海流と風が粘液を海岸沿いの目に見える塊に集中させ、漁業活動を妨げ、水泳選手にとっての水の魅力を低下させた。

センチネル2号のような衛星データは、ブルームの成長と広がりを追跡するために使用でき、地方機関が観光や漁業への影響を軽減するためのタイムリーな戦略を実施するのに役立つ。

<ひとこと>: イメージのリンクから大判で見ることをお勧めします。

<出典>: Week in images (ESA)

9月20日(金)
火星:その月、クレータ、火山

火星の上空を飛ぶことができたら何が見えるだろう? この注目のイメージは、7月に火星の特に興味深い地域を撮影した、ヨーロッパ宇宙機関のマーズエクスプレス(Mars Express)の光景である。この写真の最も有名な地形は、右上に見える太陽系最大の火山であるオリンパス山(Olympus Mons)である。右の地平線には、別の大きな火星の火山、パボニス・モンス(Pavonis Mons)が見える。いくつかの円形のインパクト・クレータが、この赤い惑星の表面に見ることができる。 印象的なことに、このイメージは、中央のすぐ左に見える、暗く運命的な火星の衛星フォボス(Phobos)を捉えるようにタイミングが合っていた。 左下の表面の地形は、オルカス・パテラ(Orcus Patera)として知られている。 その大きなサイズと長方形の形が珍しく、それをつくり出したプロセスが未だ不明であるために神秘的である。ヨーロッパ宇宙機関のロボット宇宙船マーズエクスプレスは2003年に打ち上げられ、多くの注目すべき科学的発見の中で、火星がかつて大きな水のホームであったという証拠を補強した。

<付記>: 日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、火星の衛星フォボスのサンプルリターンを意図して、今、小惑星「リュウグウ」の探査を終えた「ハヤブサ2号」を火星に向かわせています。このサンプルリターン探査は MMX (Martian Moons eXploration)と呼ばれ、2031年にフォボスから試料を持ち帰る予定です。火星の衛星にはフォボスとデイモスがありますが、木星や土星の衛星のように、惑星周辺を周る材料が固まって同時期につくられたものではなく、宇宙空間を浮遊する小惑星のような天体が、火星の引力によって捕らえられたのではないかという説が有力です。 MMX の採集資料の分析は、この疑問に答えるサンプルを持ち帰ることが期待されています。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

9月19日(木)
夜の朝鮮半島

国際宇宙ステーションに搭乗していた宇宙飛行士が、夜間の光の分布を示す朝鮮半島の写真を撮った。北朝鮮はこの半島の上部にあり、夜間の明かりはほとんどない。対照的に、韓国は半島の下部にあり、多くの様々な都市からの灯を放っている。半島の両側の海は非常に暗く見えるが、雲が光を反射しているところもある。

最大かつ最も明るい都市の灯の集まりは、黄海の海岸に位置する人口967万人の韓国の首都ソウルである。北朝鮮に見えるのは、人口316万人の首都平壌と、中央の揚徳(ヤンドク)の二つだけである。

ソウルのすぐ北の、黄海から日本海まで半島を横切る細い光の線は、北朝鮮と韓国の間の非武装地帯(DMZ)を示している。この境界は、1953年に国連によって設立され、幅は約4キロメートル、長さ250キロメートルである。

街の灯の明るさと広がりの違いは、人口規模(韓国が約 5,200 万人、北朝鮮が約 2,600 万人)と、両国の都市開発の程度の違いを示している。この夜間照明のイメージは、経済や国内総生産(GDP)の研究にも使用されている。1960年代以降のダイナミックな産業成長によって、韓国は、シンガポール、台湾、香港と並ぶ、アジアの4大国の一つと呼ばれている。この宇宙飛行士の写真は、2024年1月24日に、ニコン D5 デジタルカメラで、焦点距離 24mm で撮られた。
--- 国際宇宙ステーションの宇宙飛行士達が使う地球観測の写真の撮影には、ほとんどニコン製のカメラが使われている。

<参考>: 上の写真は、9月8日の、NASAのスーオミNPPからの、世界の夜間イメージから切り出した、朝鮮半島周辺の明かり(明るさは強調している)。38度線を挟んだ韓国と北朝鮮の照明の違いは、世界の夜間の写真でも常に際立っている。海にはいくつかの漁火が見えるが、この季節は比較的少ないようだ。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Earth Observatry

9月18日(水)
リングの氷の巨人、ネプチューン

リングの氷の巨人海王星が、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡からのこの鮮明な近赤外線イメージの中心近くにある。この薄暗く遠い世界は、太陽から最も遠い惑星であり、地球よりも約30倍離れている。しかしながら、ウェッブの、この惑星の暗く幽霊のような外観は、赤外線を吸収する大気中のメタンによるものである。イメージでは海王星の吸収するメタンの大部分の上の高高度の雲が目立っている。凍った窒素でコーティングされた海王星最大の衛星トリトンが反射する太陽光で海王星よりも明るく、左上にはウェッブ望遠鏡の特徴的な回折スパイクが見られる。トリトンを含む海王星の14の既知の衛星のうち七つがこの視野に識別できる。この宇宙ベースの惑星の肖像画では、海王星のかすかなリングが印象的である。1989年8月にボイジャー2号探査機が海王星を訪れて以来、複雑なリングシステムの詳細が初めてここに見ることができる。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

9月17日(火)
ボイジャー1号チーム、トリッキーな推進装置交換を実現

双子のボイジャー(Voyager 1 & 2)は、1977年から飛行しており、現在、太陽系の外の領域を探査している。この宇宙船は、推進装置を使用して地球に向いているが、宇宙で47年が経過し、一部の燃料チューブが詰まってしまった。

NASAのボイジャー1号探査機に取り組んでいるエンジニア達は、宇宙船の推進装置の問題をうまく軽減した。推進装置は、遠方の探査機を地球に向けて維持し、コマンドを受信し、エンジニアリングデータを送信し、収集している独自の科学データを提供できるようにしている。

47年の後、推進装置内部の燃料チューブは、宇宙船の燃料タンクのゴム製ダイヤフラム(横隔膜)から経年劣化とともに現れる副産物、二酸化ケイ素で詰まっている。この目詰まりは、推進装置が力を生成できる効率を低下させる。何週間にもわたる慎重な計画の後、チームは宇宙船を別の推進装置のセットに切り替えた。

推進装置は液体ヒドラジンを燃料とし、これをガスに変えて数十ミリ秒のパフで放出し、宇宙船のアンテナを地球に向けてゆっくりと傾ける。目詰まりした推進装置が健康であれば、これらの短いパルスを1日に約40回行う必要がある。

2002年、NASAのジェット推進研究所に拠点を置くミッションのエンジニアリングチームは、ポインティングに使用されている姿勢推進装置ブランチの一部の燃料チューブが詰まっていることに気づき、2番目のブランチに切り替えた。2018年にそのブランチが目詰まりの兆候を示したとき、チームは装置を切り替えた。

現在、これらの軌道修正推進装置のチューブは、2018年に交換した元のブランチよりもさらに詰まっている。チューブの開口部はもともと直径が僅か 0.25 ミリメートルだったが、目詰まりによって 0.035 mm、つまり人間の髪の毛の幅の約半分に減少した。その結果、チームは姿勢推進推進装置のブランチの1つに戻す必要があった。

推進装置のウォーミングアップ
異なる推進装置への切り替えは、主に電源と温度に関連する新たな課題をもたらした。このミッションでは、プルトニウムの崩壊によって生成される電力供給が徐々に減少するのを節約するために、二つの宇宙船の一部のヒーターを含むすべての不要な搭載システムをオフにした。

これらの措置は電力を削減するのに役立った一方で、宇宙船の寒さを増し、熱を発生させる他の重要でないシステムの損失によって影響が悪化した。その結果、姿勢推進推進装置の枝が冷え、その状態で電源を入れると推進装置が損傷し、推進装置が使用できなくなる可能性がある。

更なる調査と計画の後、エンジニアリングチームは、宇宙船のメインヒーターの一つを最大1時間安全にオフにし、推進装置のヒーターをオンにするのに十分な電力を解放できると判断した。

8月27日、彼らは必要な推進装置のブランチが再び作動し、ボイジャー1号が地球に向けられていることを確認した。

今後、全て決定には、以前よりもはるかに多くの分析と注意が必要になるだろう。

この探査機は、太陽が作り出す粒子と磁場の泡の外側の領域、星間空間を探査しており、今後も長期間他の探査機が訪れることはないだろう。ミッション科学者達のチームは、ボイジャーが星間環境がどのようなものかを明らかにし続けることができるように、ボイジャーをできるだけ長く維持するように取り組んでいる。

<ひとこと>: ボイジャー(Voyager 1 & 2)は、太陽系を離れて宇宙空間を探査している稀有な探査機であり、今後も当分はこのような探査は計画出来ないでしょう。長期間の飛行で何かと問題を起こしていますが、幸い、その度に切り抜けています。なお、この記事は宇宙船の構造やその原理の触れており、訳を誤る恐れがあることから、要点のみ意訳しました。大判はイメージのリンクから。

<出典>: agreicius(著者名です)

9月16日(月)
偉大なオーロラ

国際宇宙ステーションがオーストラリアと南極大陸の間の南インド洋の273マイル(437キロメートル)上空を周回するとき、鮮やかなオーロラが地球の空を流れる。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Gary Daines(著者名です)

9月15日(日)
唐辛子の花、宇宙で咲く

2021年7月、国際宇宙ステーションに搭乗したNASAの宇宙飛行士は、植物生育04(PH-04:Plant Habitat-04)実験の一環としての先進的植物生育(Advanced Plant Habitat)で、チリ・ペッパー(chile peppers)の栽培を開始した。宇宙飛行士とケネディ大学の研究者達チームは、収穫前のピーマンの成長を監視するために協力した。2021年9月30日のこのイメージには、チリの花とつぼみを見ることができる。 PH-04 は、軌道実験室で試みられた最も長く、最も困難な植物実験の一つだった。2回目の収穫では、26の唐辛子が栽培され、宇宙で栽培された作物から、最も多くの宇宙飛行士達に食料を供給するという記録を破った。

<参考>: 英語での名「チリ」(chili, chile, chilli, chille)はメキシコのナワトル語での唐辛子の呼称 chilli に由来する。南米西側の地名・国名「チリ (Chile)」とは語源が異なる。 ウィキペディア から。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Monika Luabeya(著者名です)

9月14日(土)
NASA、2024年夏をこれまでで最も熱い夏と評価

<前書き>: これは昨日の 「地球観測」 の記事の再掲です。

科学者達は、1880年まで遡って、地球の気温を任意の月や地域の温度をより確実に追跡できる新しい最先端のデータセットも共有した。

NASAのゴダード宇宙研究所(GISS)の科学者達は、1880年に世界的な記録が始まって以来、2024年8月が、地球で最も暑い夏となる、月間気温の新記録を樹立したと発表した。この発表は、新しい分析が、NASAの約145年前の気温の記録に対する信頼性をサポートする中で行われた。

北半球の夏、2024年の6月、7月、8月を合わせると、NASAの記録にある他のどの夏よりも摂氏約 0.1 度暖かく、2023年に記録したばかり値を僅かに上回った。2024年の夏は、1951年から1980年までの平均の夏よりも摂氏 1.25 度暖かく、8月だけでも平均より摂氏 1.3 度暖かかった。

「複数の記録からのデータによると、過去2年間の温暖化は拮抗しているように見えるが、強いエルニーニョの年を含め、その前年に見られたものをはるかに上回っている。これは、人間が引き起こした、気候の温暖化が続いていることを明確に示している。」

NASAは、数万の気象観測所で得た地表の気温データと、船舶やブイベースの機器からの海面温度から、 GISS 表面温度分析と呼ばれる温度記録をまとめている。また、南極大陸からの測定値も含まれている。解析の手法では、地球上の温度ステーションの間隔がさまざまであることや、計算に歪みを与える可能性のある都市の暖房の効果が考慮されている。

温度記録の新たな評価
この夏の記録は、コロラド鉱山大学、全米科学財団、米国大気海洋局(NOAA)、NASAの科学者達による新たな研究により、NASAの全球および地域の気温データに対する信頼性がさらに高まったことによるものである。

--- 以下略。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Sally Younger(著者名です)

9月13日(金)
NASAの新しい音響化、宇宙の過去を聴く

四半世紀前、NASAはチャンドラX線天文台からの「最初の光」のイメージを公開した。チャンドラの高解像度X線画像能力の世界へのこの紹介には、地球から約 11,000 光年にある爆発した星の残骸、カシオペアAの前例のない眺めが含まれていた。長年にわたるチャンドラのカシオペアAの眺めは、この望遠鏡の最も有名なイメージの一部になった。

この節目の記念日を記念して、カシオペアA(Cas A)を含む三つのイメージの、新しい音響化が発表される。この音響化は、デジタルデータが日常的にイメージに変換されるのと同様に、天文データを音に変換するプロセスである。

この Cas A の音響化は、チャンドラだけでなく、NASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡、引退したスピッツァー宇宙望遠鏡からのデータをも特徴としている。スキャンは、残骸の中心にある中性子星から始まり、三角形の音でマークされ、外側に移動する。天文学者達が初めてこの中性子星を見たのは、25年前、チャンドラの初観測が発表されたときだった。チャンドラのXの線写真は、爆発した星の破片が宇宙空間に広がっていることも明らかにしている。イメージの明るい部分は、より大きな音量と高い音によって伝えられる。チャンドラからのX線データは、変化するピアノの音にマッピングされ、高温ガスに埋め込まれた、温められたダストを検出するウェッブとスピッツァからの赤外線データは、さまざまな弦楽器や金管楽器に割り当てられている。ハッブルが検出した星は、 クロタール(打楽器の一種。シンバルを小さくしたような形であるが音は全く異なる または小さなシンバルで演奏される。

<ひとこと>: 音はイメージのリンク先の動画 Youtube から。

<出典>: Chandra

9月12日(木)
小さな月デイモス

火星には、フォボスとデイモス(Deimos)という2つの小さな衛星がある。 これらはギリシャ神話の恐怖とパニックの人物にちなんで名付けられた。 ここには小さな衛星デイモスの詳細な表面図が示されている、これらのパネルの二つのイメージは、NASAの長寿命の衛星であるマーズ・リコネッサンス軌道船に搭載された HiRIS カメラによって、2009年に撮影したものである。火星の二つの衛星の外側のダイモスは、太陽系で知られている最小の衛星の一つである。 直径は僅か約15キロメートル。火星の衛星は、二つともに、アメリカの天文学者アサフ・ホール(Asaph Hall)によって1877年に発見された。しかし、それらの存在は、惑星の運動法則を導き出した天文学者、ヨハネス・ケプラーによって、1610年ごろには仮定されていた。この例では、ケプラーの予測は科学的な原理に基づいていなかったが、 彼の著作とアイデアは非常に影響力があり、これらの火星の二つの衛星は、150年以上も前の1726年のジョナサン・スウィフトの「ガリバー旅行記」にも描かれていた。

<ひとこと>: 以上要点のみ。大判はイメージのリンクから。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

9月11日(水)
土星のエンケラドゥスに描かれたフレッシュなタイガーストライプ

土星の衛星エンケラドゥスの亀裂から地下の海が流れ出ているのだろうか? タイガー・ストライプと呼ばれるこの長い徴は、この月の南極に細かい氷の粒の雲を作り、土星の神秘的なEリングを作りながら、この月の氷の内部から宇宙に氷を噴出していることが知られている。 その証拠は、2004年から2017年にかけて土星を周回したロボット宇宙船「カッシーニ」からもたらされた。ここに描かれているエンケラドゥスの高解像度画像は、近接するフライバイから示されている。 タイガー・ストライプと呼ばれる珍しい表面の徴が疑似カラーの青で見えている。エンケラドゥスがなぜ活動しているのかは謎であり、隣の衛星ミマスはほぼ同じ大きさであるが、完全に死んでいるように見える。 放出された氷の粒の分析によって、エンケラドゥスの内部に複雑な有機分子が存在するという証拠が得られた。 これらの大きな炭素に富んだ分子は、エンケラドゥスの表面の下の海に生命が生息している可能性があることを補強はしているが、証明はしていない。

<付記>: カッシーニ宇宙船の探査終期の記事は こちら から。エンケラドゥスのタイガー・ストライプを発見したカッシーニ宇宙船は、探査の後半でその氷の噴出物の中に飛び込み解析している。ミッション終了後発表された、エンケラドゥスのタイガー・ストライプ関する解析記事は こちら から。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

9月10日(火)
太陽風はどのようにエネルギーを得るか

1960年代以降、天文学者達は、太陽の超音速の「太陽風」、つまり太陽系に流れ出る高エネルギー粒子の流れが、太陽を離れた後もエネルギーを受け続ける仕組みを不思議に思ってきた。今、NASAとヨーロッパ宇宙機関(FSA)の宇宙船の幸運なラインナップのお陰で、科学者達が太陽と地球の間の太陽活動をよりよく予測するのを助けるパズルの重要なピースとなる知識、その答えを発見したかもしれない。

2024年8月30日のサイエンス誌に掲載された論文では、最速の太陽風が太陽の近くの磁場の大きな捩じれ、磁気の「スイッチ・バック」が動力源となっているという説得力のある証拠を提供している。

以前、NASAのパーカー(Parker)太陽探査機は、これらのスイッチバックが太陽風全体で一般的であることを発見した。2021年に太陽の磁気大気に突入した最初の宇宙船となったパーカーは、科学者達が、スイッチ・バックが太陽の近くでより明確で強力になると判断することを可能にした。しかし、科学者達は、これまで、この興味深い現象が実際に太陽風で重要なエネルギーを蓄積しているという実験的証拠に欠いていた。

科学者のチームは二つの異なる宇宙船を使った。パーカーは、太陽の大気、即ち「コロナ」の中を飛ぶように作られており(右図)、ヨーロッパ宇宙機関とNASAの太陽軌道船(Solar Orbiter)ミッションは、太陽に比較的近い軌道上にあり、より長い距離で太陽風を測定している。

この発見は、2022年2月に、パーカー太陽探査機と太陽軌道船が、2日の内に同じ太陽風の流れを測定できるという偶然の一致によって可能になった。太陽軌道船は太陽のほぼ半分まで来ており、パーカーは太陽の磁気大気の端を迂回していた。

科学者達は、長い間、エネルギーが、太陽のコロナと太陽風全体が、少なくとも部分的には「アルベン波(Alfvén waves)」として知られる波を通じて移動することを知っていた。これらの波は、太陽風を構成する物質の過熱状態であるプラズマを介してエネルギーを輸ぶ。

アルベン波(Alfvén waves)
英語 Wikipedia からの翻訳---プラズマ物理学で、ハンネス・アルヴェンにちなんで名付けられたアルヴェン波は、磁力線上の有効張力によって提供される、復元力に応答してイオンが振動するプラズマ波の一種である。

しかし、アルヴェン波が太陽と地球の間の太陽風とどれだけ進化し、相互作用するかは、これら二つのミッションが、これまでにないほど同時に太陽の近くに送られるまで測定できなかった。今、科学者達は、コロナ近くのこれらの波の磁気変動と速度変動に、どれだけのエネルギーが蓄えられているか、また、太陽から遠い波によって運ばれるエネルギーがどれだけ少ないかを直接判定できる。

新しい研究は、スイッチバックの形でのアルベン波が、太陽風が太陽から離れて流れるときのより速い流れで記録された加熱と加速を説明するのに十分なエネルギーを提供することを示している。

--- 以下略。

<ひとこと>: 少々難しい記事なので、この訳文自体も要約して載せています。

<出典>: Abbey Interrante(著者名です)

9月9日(月)
明かされつつある太陽系外縁の構造
― すばる望遠鏡とニューホライズンズの20年の挑戦 ―

<図>: すばる望遠鏡(左)とニューホライズンズ探査機(右)--大判は原典から。

すばる望遠鏡の広い視野を活用した探査で、 カイパーベルトの外側に未知の天体集団が存在する可能性 が示されました。太陽系の成り立ちを知る上で重要なこの研究成果は、太陽系外縁部をさらに外へと進むニューホライズンズ探査機と、すばる望遠鏡との国際協力によって得られたものです。

太陽系外縁天体のうち、太陽からの距離が 30-55 天文単位(1天文単位は地球と太陽の平均距離)にあるものを「カイパーベルト天体」と呼びます。米国航空宇宙局(NASA)のニューホライズンズ探査機は、人類史上初めて、太陽系外縁天体の表面を間近から観測するという重大な任務を担い、2006年に打ち上げられました。2015年に冥王星に近接しその表面を詳細に観測した後、2019年にはカイパーベルト天体の一つであるアロコスに近接し観測を行いました。

探査機に搭載されているカメラは視野が狭く、自らカイパーベルト天体を発見することはできません。ここで活躍するのが広い視野を持つすばる望遠鏡です。すばる望遠鏡の広視野カメラでカイパーベルト天体を多数見つけ出し、その中から、探査機が近接観測できる天体や、少し遠くても観測できる天体を絞り込んでいったのです。

2004年から2005年に行った主焦点カメラSuprime-Cam(シュプリーム・カム)による観測では、24個のカイパーベルト天体を発見することができました。さらに、この観測の間に開発された移動天体検出のための手法を活用して、2020年からは超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)を使ったより深い観測を開始し、2023年までの観測で239個の太陽系外縁天体を発見しました。

「HSCによる観測で最もエキサイティングだったのは、既知のカイパーベルトを超える距離にある天体が11個も見つかったことです」と、研究チームの吉田二美(よしだ ふみ)博士(産業医科大学、千葉工業大学惑星探査研究センター)は語ります。55-70 天文単位の距離にある天体は少ない一方で、70-90 天文単位あたりに一群の天体があるように見えたのです。このような天体群の谷間は他の観測では報告されていなかったものです。これが確かならば、原始太陽系星雲は、これまで信じられていたよりもはるかに大きかったことになり、太陽系の惑星形成過程の研究に影響を与えるかもしれません。

本研究で発見した天体の正確な軌道を決定するため、研究チームは HSC を用いた観測を継続しています。遠方天体の発見とその軌道分布を明らかにすることで、太陽系の形成史を知り、太陽系外惑星系と比較して普遍的な惑星形成を理解する一端となるでしょう。ニューホライズンズ探査機は現在、太陽から60天文単位の位置にあってさらに外側へと向かって進んでいます。すばる望遠鏡とニューホライズンズ探査機が、カイパーベルトの先に何を発見するのか、研究チームは楽しみにしています。

<ひとこと>: 大判イメージを含む詳細はヘッドラインから。

<出典>: 国立天文台

9月8日(日)
キューブサット、地球軌道に展開される

キューブサットとも呼ばれる小型衛星が、国際宇宙ステーションの「きぼう」実験棟の外側にある小型衛星軌道展開装置から、地球軌道に展開された。このキューブサットは、ノースロップ・グラマンの宇宙貨物船シグナスに搭載されて届けられ、世界中の公的機関や民間組織のさまざまな教育・研究目的に役立てられる。

<ひとこと>: キューブサットと呼ばれている小型衛星は、日本の誇れる技術の一つである。記事にある「きぼう」実験棟の外の小型衛星軌道展開装置は、国際宇宙ステーションの初期から日本の「きぼう」実験棟の外に用意された。放出される小型衛星は、「きぼう」の内部で展開装置に装着され、外部に出されて宇宙に放出される。これらの小型衛星は、独自では打上が難しい国や企業、学生達に期待され、実際に使われてきた。この装置のキューブサットは10センチメートルの3次元構造を基本としており、最近では用途によって大小さまざまではあるが、10センチメートル(またはその倍数)という基準は今でも通用している。また、これに限らず、最近では、キューブサットの技術が大型衛星を凌ぐ実用性を発揮している。--- 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>:  Gary Daines(著者名です)

9月7日(土)
ベピコロンボ、4回目の水星フライバイ

ヨーロッパ宇宙機関(ESA)/日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)のベピコロンボ(BepiColombo)ミッションは、2026年11月に水星周回軌道に入るための、その小さな惑星の重力を利用した、水星での6回の重力支援フライバイの4回目を成功裏に完了した。

この最接近は国際時間2024年9月4日21時48分に行われ、水星の表面から約165キロメートルまで降下した。
宇宙船は初めて、水星の南極をはっきりと見ることができた。

図左: このイメージは、2027年初頭に主要な科学ミッションを始めるときに、科学者達が詳細な調査を期待した一例である。ベピコロンボは、初めて水星の右上の南極を見た。この地域の一部のクレータのフロアには日光が届かないため、水星が太陽に非常に近いにもかかわらず、この土地は凍えるような寒さであり、水の氷が存在する可能性がある。水星の表面には、水星の南極に近い四つのクレータなど、多くの魅力的な地質学的な特徴がある。南極を囲む大きなリングは、南極地域(地球の「極圏」に相当)として指定された領域を示している。また、イメージには軌道船の中利得アンテナ(中央上)と磁力計ブーム(右)がある。

図右: 水星の表面には多くの魅力的な地質学的特徴があり、その中で有名なイタリアの作曲家アントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741)にちなんで名付けられたヴィヴァルディ・ピークリング盆地は最も壮観な一つである。ヴィヴァルディの全長は210 km で、日の出のラインに非常に近い位置で見たために、その風景は影によって美しく強調されている。また、プラネタリ軌道船の中利得アンテナ(中央上)と磁力計ブーム(右)がある。

<付記>:水星の地形には世界の文化人、作曲家などの名が付されており、日本の例では、夏目漱石、丸山応挙、滝廉太郎などの名が採用されている、

<ひとこと>: 記事は編集したものです。ベピコロンボの水星フライバイについては昨日の記事参照。大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: BepiColombo

9月6日(金)
ベピ・コロンボ、4回目の水星フライバイへの新たな軌道を開始

なぜ水星を訪れるのがそんなに難しいのだろう?

水星は、太陽系で最も探査されていない岩石惑星であり、それは、主に、そこにたどり着くのが非常に難しいためである。ベピ・コロンボ(BepiColombo)が太陽に近づくと、その星の強力な引力が、宇宙船を太陽に向かって加速させる。さらに、宇宙船は地球から大量のエネルギーで打ち上げられ、小さな水星の周りの軌道に捕らえられるにはあまりにも速度が速すぎる。

搭載された推進装置だけで、この二つのハードルを乗り越えるのは非常に難かしい。そのため、ベピ・コロンボは、重力支援フライバイも利用して、エネルギーを失わせ、最終的に水星の周りの軌道に捕らえられるほどまで減速する。

ベピ・コロンボの水星への旅はさらに壮大になる。

ベピ・コロンボは、ヨーロッパ宇宙機関の水星惑星探査機と日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)の水星磁気圏探査機という、水星を周回する二つの科学探査機で構成されているという点でユニークである。これ等の二つはヨーロッパ宇宙機関の水星転送モジュール(MTM)によって、この謎の惑星まで一緒に運ばれる。2024年4月、ベピ・コロンボは、MTM の電動推進装置がフルパワーで作動しないという問題に遭遇した。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Week in images (ESA)

9月5日(木)
フェルミの12年間の全天ガンマ線マップ

X線の視界を離れて、ガンマ線で何が見えるか想像してみよう? この全天マップは、NASAのフェルミガンマ線宇宙望遠鏡から宇宙がどのように見えるかを示している。 フェルミは、人間の目で見ることができる光の約10億倍のエネルギで見ることができる。このマップは12年間のフェルミ観測を組み合わせたものである。 色はガンマ線源の明るさを表している。 明るい源は明るい色で見える。 中央を横切る目立つ縞模様は、ミルキウェイ銀河の中心面である。上に散らばっている赤と黄色の点のほとんどと、ミルキウェイの平面の下には非常に遠い銀河があるが、平面内の銀河のほとんどは近くのパルサーである。イメージを埋め尽くす青い背景は、遠くの光源からのガンマ線の拡散した輝きであり、暗すぎて個別には検出できない。一部のガンマ線源は確認できないままで、研究のテーマであり、現在、それらが何であるかは誰にもわからない。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

9月4日(水)
太陽の三角形の隆起

なぜ太陽の上に三角形が浮かんでいるのだろう? 形は珍しいが、構造のタイプは珍しくはなく、それは進化している太陽のプロミネンスの一部である。太陽のループする磁場はエネルギー粒子の流れを導き、時には数ヶ月間、輝くガスの構造を上空に保持する。プロミネンスが明るく輝くのは、特に高温、高密度、または不透明な太陽プラズマが含まれているためである。この驚くべき三角形の構造は先週発生した。我々の地球よりも大きいこの象徴的なプロミネンスは、何人かの太陽写真家によって撮影され、NASAのSDO(Solar Dynamic Observatory)によって記録され、約1日で激しく消滅するのが記録された。この目を奪うようなイメージは、水素が強く発する赤色の光で撮影された。その下には、太陽の彩層(参考:太陽の光球面のすぐ外側の白熱したガス層)が敷き詰められ、それに比べて背景の空は非常にかすかであり星は見えない。今年、太陽の表面はかなり活発であった。

<ひとこと>: この記事は著作権が保護されていますので、写真は印象のみをとらえていただくために、小型版にして掲載しました。太陽面の非常の珍しいまた精細な写真です。表題とは別に、特に太陽の表面の荒々しさが表現されています。大型イメージは下のリンクから追うか、撮影者 Andrea Vanoni 氏個人のサイトからご覧ください。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

9月3日(火)
EarthCARE 、大気中の粒子を詳細にプロファイリング

<前書き>:  EarthCARE(アースケア、Earth Clouds, Aerosols and Radiation Explorer) は、ヨーロッパ宇宙機関 (ESA) と日本宇宙航空研究開発機構 (JAXA) および情報通信研究機構 (NICT) の共同開発の地球観測衛星。衛星に搭載したセンサで全球の雲およびエアロゾルの鉛直分布を観測することによって、気候変動の要因であるのにも関わらず二酸化炭素より科学的な理解度が低いとされている雲・エアロゾルの全球の三次元構造をモデル化し、気候変動予測の精度を向上させることを目的としている。以下は、ヨーロッパ宇宙機関の、その初期の成果である。

5月に打上げられたヨーロッパ宇宙機関の EarthCARE 衛星は、すでに三つの科学機器からの最初のイメージが配信されるなど、波紋を呼んでいる。現在、そのスポットライトは、衛星の四つの機器の中で最も先進的な大気ライダー(atmospheric lidar:左にそのビデオ)に注がれている。

この最先端のセンサーは、山火事、ダスト、海しぶきなどの自然源からの小さな粒子や液滴、産業排出物や木材の燃焼などの人間活動からの大気エアロゾルや地球のさまざまな地域の雲の、高度20キロメートルの詳細な垂直プロファイルを捕えている。

このユニークな機器は、紫外線のパルスを放射し、反射信号を解析することで、エアロゾルや雲の高度、厚さ、光学特性、物理的特性などの分布と特性を測定するために使用される。

これは、衛星の他の三つの機器と連携して作業することで、地球のエネルギーバランスにおけるエアロゾルと雲の役割を理解するために重要である。特に大気ライダーは、大気質予報を改善するための重要な情報も提供する。

最初の画像は、8月2日の大気ライダーからのもので、南極大陸の極成層圏の雲のプロファイルを示している。下の灰色の帯は、すべてのイメージに写っているように、 EarthCARE のマルチスペクトル画像装置によって、赤外線で捉えられた対応する領域であり、すべての機器のデータに自然な視覚的コンテキストを提供している。

極地の成層圏の雲は、冬と春の成層圏オゾンの枯渇に大きく貢献している。これらの雲は、成層圏のオゾン分子を積極的に破壊する化学反応の表面として働く。このプロセスは、南極大陸の悪名高いオゾンホールの形成における重要な要素である。

中央右の雲のギザギザの形は、重力波によるものと思われる。重力波は、空気が上向きに押し上げられて安定した空気の層になり、重力によって空気が引き戻され、海の波紋のような波紋効果が生じることで形成される。

これらの波は、エネルギーと運動量を下層大気から上層大気に伝達し、気象パターン、一般的な大気循環に影響を与え、極成層圏の雲の形成に影響を与える。

--- 以下略。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: EarthCARE

9月2日(月)
9月の夜空ノート:素晴らしい月達

9月には、巨大ガス惑星の木星と土星、またその衛星が再び登場する。月も観察するが、望遠鏡や双眼鏡で太陽系内の他の月も観よう。これらの衛星(および惑星)が夜空で最も高い位置にあるときに観察して、遮るもののない最高の景色を眺めることを勧める。
(注:左のイメージは木星の衛星です)

土星とその衛星

2024年9月、リングの惑星土星の軌道には146個の衛星が確認されている。これらの天体の大きさは様々で、最も小さいのは直径数百フィートであり、最大は太陽系で2番目に大きなタイタンである。

約14億キロメートル離れているが、タイタンはその大きさから、都市部や郊外の空の下でも、4インチの望遠鏡で土星の隣に簡単に見つけることができる。ほとんどが窒素で、微量の水素とメタンを含む大気のタイタンは、2005年にカッシーニ・ホイヘンス・ミッションの一環としてホイヘンス探査機で短期間探査され、タイタンの表面に関する詳細な情報を提供した。NASAのミッション「ドラゴン・フライ」は、2030年代にタイタンの表面を探査する予定である。

土星の衛星エンケラドゥスもカッシーニミッションによって探査され、表面の下から噴出する氷を明らかにし、土星のリングの輝きを増した。地球の月と同じように、エンケラドゥスは土星と潮汐固定されたままであり、常に同じ側をホスト惑星に向けている。

木星とその衛星

惑星の王木星は、最多の衛星を持ってはいないが、95の衛星のうちの四つは、明確な線を形成し、小さな双眼鏡や小さな望遠鏡で見るのが最も容易である。ガリレオ衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト:左上の図)は1610年に、ガリレオ自身の望遠鏡で初めて発見された。

 

2024年9月14日の 国際的な月観察の夜「International Observe the Moon Night」 も祝おう。

<ひとこと>: 
記事は要約です。大判はイメージをクリック(タップ)。
本サイトの土星のページ(カッシーニ)は こちら、木星のページ(ガリレオ)は こちら から。

<出典>: Kat Troche(著者名です)

9月1日(日)
台風シャンシャン、日本を連打する

2024年8月下旬、台風シャンシャン(Shanshan:日本の呼称台風10号)が日本上陸した。この強力な嵐が、列島の北東に移動し続けたため、既に日本の南部で地滑り、停電、洪水を引き起こしていた。

8月27日、シャンシャンが上陸する前の大雨が、蒲郡市で致命的な地滑りを引き起こし家を埋めた。気象庁は緊急事態を発令し、九州の大部分と中央日本の一部で、何百万人もの住民にその地域から避難するよう勧告している。

イメージ左は、8月28日に台風が列島の主要島に接近したときの台風を示し、風速は時速約185キロメートルの、カテゴリー3のハリケーンに相当する。8月29日の朝、九州の南端上空にある。風は時速135キロメートルに弱まり、カテゴリー1のハリケーンに相当し、嵐は内陸部に突入した。

イメージ右は、上陸から約5時間後に九州上空を移動したシャンシャンである。何れのイメージも、NOAA-20 衛星の可視赤外線画像放射計 VIIRS で撮られた。

嵐は、8月31日と9月1日に、大阪や京都など日本の中東部に接近するにつれて弱まると予測されている。

<付記>: 日本における呼称は台風10号であるが、国際的には台風にも特定の名が付される(ここではシャンシャン)。アメリカのハリケーンの強度の分類は、カテゴリ1から5まで、カテゴリ5が最も強い。米国東海岸ではハリケーン4レベルの嵐はしばしば見られる。つまり、台風10号は強さではさほどでなく、列島の南の海水温の高さから、広域の激しい雨台風として分類できるのかもしれない。

<イメージ>: 左上の比較イメージは下のリンクの源ページから。右のイメージの大判はイメージのリンクから。

<出典>: Earth Observatry

8月30日(金)

8月27日の世界の海水温



強力な台風10号が日本列島を直撃するかもしれないとき、世界の海水温はどうなっているのだろう! イメージはNASAが発表している8月27日のデータ(時差が約半日、日本が先行することに注意)である。
気象庁や日本の報道等は、日本列島近海の海水温が非常に高く(約30度)、台風を強めていると言われているが、この図で見るように、台風の進路に当たる関東の南、西寄りの海水温は、ほぼ赤道付近の海水温に近い。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: オリジナル

8月29日(木)
国際宇宙ステーションからの巨大なジェット

地平線上のそれは何だろう? 先月初め、国際宇宙ステーションで地球を周回したとき、 宇宙飛行士のマシュー・ドミニクは、地球の端に珍しいタイプの稲妻、巨大なジェットを見た。この目をとらえるイメージの左側に、迫力あるジェットが赤と青で登場している。この巨大なジェット稲妻は、これまでの23年間のみ知られていた。この大気ジェットは雷雨と関連しており、地球の電離層に向かって上に向って伸びている。フレームの下には夜の地球が写っており、地球の薄い大気が空気の光で緑色に染まっている。

街の明かりが見え、解読されることもあるが、通常は、介在する雲に拡散した白い輝きをつくる。フレームの上部には、暗い夜空に遠くの星が浮かんでいる。巨大なジェットの性質と、青いジェットや赤いスプライトなどの他のタイプの一時的な発光のイベント(TLE:Transient Luminous Events)との関連の可能性は、依然として活発な研究上の話題である。

<ひとこと>: レッド・ストライプについては 7月22日の記事 を参照。---  大判はイメージのリンクから。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

8月28日(水)
脱出訓練

NASAの有人月ミッション「アルテミスⅡ」に備え、NASAのケネディ宇宙センタのチームが、2024年8月9日に、緊急脱出バスケットから脱出する訓練をしている。スキーリフトのゴンドラに似たこのバスケットは、打上中止の緊急事態などの場合に、宇宙飛行士達や、他の打上台担当者が、移動式ランチャーから打上台の基部まで素早く脱出し、待機している緊急輸送車両が連れ出すことができるように使用される。

<ひとこと>: 緊急脱出訓練はスペースシャトルの時代から行われてきましたが、緊急時の打上中断機能を含めて、ケネディ宇宙センタの打上台は、大幅な改造が加えられています。大判はイメージのリンクから。

<出典>: Monika Luabeya(著者名です)

8月27日(火)
SDOによる太陽プロミネンスの噴出

最も壮観な太陽の光景の一つは噴出するプロミネンスである。2011年、NASAの太陽軌道を周回する太陽ダイナミック観測所(SDO)宇宙船は、表面から噴出する印象的な大きなプロミネンスを撮った。この劇的な爆発は、90分間をカバーする注目のタイムラプス・ビデオに、紫外線でとらえられた。 新しいフレームは24秒ごとにとられた。このプロミネンスのスケールは巨大であり、地球全体が熱いガスの流れるカーテンの下に簡単に収まる。太陽のプロミネンスは、太陽表面にチャネリングされ、時には太陽の磁場によって太陽の表面に保持される。静かなプロミネンスは通常は約一か月続き、コロナ質量放出(CME)で噴出し、太陽系に高温ガスを放出することがある。太陽のプロミネンスを生み出すエネルギーのメカニズムについては継続的な研究テーマである。 我々の太陽は再び太陽活動の極大期近くにあり、非常に活発である。数多くの噴出するプロミネンスとコロナ質量排出(CME)を特徴としており、そのうちの一つが絵のように美しいオーロラをもたらした。

<ひとこと>: イメージのリンク先は動画 Youtube です。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

8月26日(月)
宇宙でのメンタルヘルス(Mental Well-Being)

宇宙科学:2024年8月

国際宇宙ステーションでの生活は、地上での生活とはかなり異なる。クルーは毎日何度も日の出と日の入りを経験し、限られた空間で時間を過ごし、スケジュールが詰まり、微小重力に対処する。

宇宙飛行中のこれらの条件やその他の条件は、クルーのパフォーマンスと健康に悪影響を与える可能性がある。宇宙ステーションに関する多くの研究は、これらの影響を特徴付けて理解し、他の研究はそれらに対抗するための新しい技術と実践を試みている。

私生活を照らす。
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)による現在の調査、24時間周期の光(Circadian Light)では、宇宙飛行士達が、より正常な日常のリズムまたは概日リズムを維持するのに役立つ新しい照明システムをテストしている。 LED パネルは、光のスペクトルを自動的かつ徐々に変化させ、地球上の自然条件をよりよく模倣するために日々変化する。この研究では、このシステムが概日リズムの調節、睡眠、ストレス、またクルーの全体的な健康状態に及ぼす影響についての洞察を求めている。この調査結果は、交代勤務者や極限環境あるいは遠隔地の人々の照明を改善する方法を明らかにする可能性もある。
--- 右図は乗務員室に設置された24時間周期の光実験。

毎日のリズム
ヨーロッパ宇宙機関の初期の調査である24時間周期リズム(Circadian Rhythms)は、長期の宇宙飛行とその24時間以外の光と闇のサイクルの間に、日々のリズムがどのように変化するかを調べた。この理解は、将来のミッションでのパフォーマンスと健康を改善するための対策に役立つ可能性がある。
概日リズムを決定する確立された方法は、深部体温を継続的に記録することであるが、その方法は侵害的であり不便な場合がある。この調査のために、研究者達は、長期間にわたって体の深部温度を測定するための非侵害的な皮膚センサー技術を開発した。
--- クリス・ハドフィールド(カナダ)が、概日リズム(Circadian Rhythms)実験のために額センサーを装着している。

宇宙飛行士、電話、ホーム
月や火星へのミッションでは、火星では片道30分も地球との通信が遅れる。コミュニケーション遅延評価の調査では、このような遅延が医療やその他の緊急事態を扱うクルーにどのような影響を与えるかを調べ、心理学者達が、地球からの即時のアドバイスなしに彼らの重要なタスクを完了するストレスを管理する方法を開発するのを支援した。その結果として、宇宙ステーションでは通信遅延対策をテストするためのプラットフォームを提供できることが示された。また、コミュニケーションの遅延が個人のストレスやフラストレーションを増大させ、タスクの効率やチームワークを低下させることも確認された。トレーニング、チームワーク、テクノロジーの強化によって、これらの問題を軽減または予防できることも示唆された。

これが宇宙のあなたの脳です
ニューロマッピングは、宇宙飛行中の脳の構造と機能、運動制御、マルチタスク能力の変化を研究し、ミッション後にクルーが回復するのにどれくらいの時間がかかったかを測定した。この研究から発表された結果には、宇宙飛行による空間作業記憶への影響は見られなかったが、脳の接続性に大きな変化が見られることが確認された調査が含まれている。別の論文では、ミッション期間とミッションの間隔が長くなるにつれて、脳の体積が大幅に増加したことが報告されている。研究者達は、ミッション間の間隔が3年未満では、完全な回復には不十分である可能性があることを示唆している。
--- 左の図:NASAの宇宙飛行士ケイト・ルービンズが、ニューロ・マッピング調査のための操作を行っている。

日記の記載
ある調査では、クルーは毎日日記を書き、研究者達が健康維持に関連する問題を特定するために分析した。この研究では、宇宙で長時間過ごすことに関わる行動上の問題をランク付けするための初めての定量的なデータを提供した。ほとんどの日記の記載は、仕事、外部コミュニケーション、調整、グループインタラクション、レクリエーション/レジャー、機器、イベント、組織/管理、睡眠、食事の10のカテゴリを扱った。この報告書は、これらの要因が人間のパフォーマンスにどのように影響するかについての洞察を提供し、クルーが宇宙飛行に備え、宇宙での生活と仕事を改善するための推奨事項を含んでいた。

このショットは捨てない
宇宙ステーションのクルーは、クルーの地球観察(CEO)のために故郷の惑星の写真を撮る。これらのイメージは、人間と自然現象が時間の経過とともに地球をどのように変化させるかを記録し、都市の成長、サンゴ礁や氷山などの自然システム、土地利用、海洋イベントの研究など、地上での豊富な研究を支えている。時間が経つにつれて、研究者達は、これらの写真を撮ることがクルーの精神的健康も改善することに気づいた。彼らの多くは、自由時間の多くをキューポラからの撮影に費やしている。

バーチャルリアリティ・テスト
ヨーロッパ宇宙機関の VR メンタル・ケアでは、ミッション中の宇宙飛行士に精神的なリラクゼーションと一般的なメンタルヘルスを提供するためのバーチャルリアリティ(VR)技術をテストしている。参加クルーはヘッドセットを使って、360度の高品質なビデオとサウンドのシナリオを視聴し、体験に関するアンケートに回答している。
--- 右下図

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Melissa L. Gaskill(著者名です)

8月25日(日)
月の地平線に浮かぶ地球の紋章

この月の地平線上の地球の頂上の眺めは、1971年7月29日、アポロ15号の月面着陸ミッション中で撮影された。宇宙飛行士のデビッド・スコット、アルフレッド・ワーデン、ジェームズ・アーウィンは、フロリダのNASAのケネディ宇宙センターからサターンⅤロケットで打ち上げられた。

アポロ15号は、以前よりも長期間、より広い範囲で、科学データを収集するための、より多くの機器を使って、月を探索するように設計されており、月の表面を横断する最高速度16 kph に達する、4千万ドルの月面移動車(LRV)の導入が含まれていた。

月のハドレー・アペニンに着陸した後、スコットとアーウィンは、 LRV を使った3回の遠征を含む4回の船外活動を行い、合計19時間活動した。ワーデンは司令船エンデバー(Endeavour)で軌道上に留まった。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Monika Luabeya(著者名です)

8月24日(土)
国際宇宙ステーションの“世界への窓”

この国際宇宙ステーションの「世界への窓」はナウカ多目的実験室からとられている。

この国際宇宙ステーションのキューポラは、ロボット活動、他の宇宙船の接近、船外活動など、ステーション外での動きを観察するために設計された小さなモジュールである。六つの窓と直下を見る窓からは、地球と天体の、壮大な景色を眺めることができる。窓にはシャッターが付いており、軌道上の破片や微小隕石との衝突や汚染から窓を保護している。キューポラにはロボットアームを操作する Canadarm2 ワークステーションが収納されている。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。ナウカ(Nauka)はロシアの多目的実験室モジュール。

<出典>:  Gary Daines(著者名です)

8月23日(金)
NASA、多くの科学を宇宙に送り、将来の探査に向けて更なる進歩を遂げる

NASAのノースロップ・グラマンの21回目の貨物補給ミッションでの新たな実験は、国際宇宙ステーションの微小重力下での科学的発見の先駆者となることを目的としている。このシグナス宇宙船は、約 8,500 ポンドの物資を満載し、ケープカナベラル宇宙軍基地から8月4日に打上げられた。宇宙船での生物学的および物理的調査には、微小重力が植物(草)に与える影響を研究する実験、詰められた基盤反応装置(packed bed reactors)が宇宙と地球の両方で水の浄化をどのように改善できるか、最も小さなスケールで変化するさまざまな材料の特性について科学者達がさらに学ぶことを可能にする新しいサンプル・ラウンドの観察が含まれている。

草の成長とバイオ・リジェネラティブ(Bio-Regenerative)サポート
宇宙空間での生体再生型生命維持システムの開発には植物の栽培が重要である。しかし、微小重力下で育てる場合、植物が酸素を生成し、二酸化炭素を宇宙飛行士の食物に変換するプロセス、光合成に影響を与える。宇宙先進植物実験9における C4 光合成調査では、光合成へのアプローチが異なる二つの草、ミナトカモジグサ(Brachypodium distachyon) と エノコログサ(Setaria viridis:ネコジャラシ) が、宇宙飛行中に微小重力と高・二酸化炭素レベルにどのように反応するかを調査する。この研究から得られた知見は、地球上および将来の宇宙居住地における植物のより効果的な統合への道を開くだろう。この実験は当初、NASAのスペースXの30回目の貨物補給ミッションで行われる予定だった。

浄水と重力
搭載された充填床反応器実験水回収シリーズ(Packed Bed Reactor Experiment – Water Recovery Series)は、宇宙ステーションで運用され、様々な種類のフィルターと開口部で微小重力下での二相流(窒素ガスと水の混合物)の流体力学(圧力損失、流れのレジーム、流れの不安定性)を調査する。これらのサンプルは、生命維持装置や水質の浄化・回収プロセスで使用される流体システムにとって重要である。この研究の成果は、月や火星のミッション、それ以降で使用される様々なプロトタイプの圧力損失予測のための設計ツールと相関する開発に使用される。

溶融材料の不純物の除去
日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)が主導する「静電浮上炉4号」実験には、新たに20個の試験サンプルが収録されている。その目標は、摂氏 2,000 度を超える温度でさまざまなサンプルのさまざまな熱物理的特性を測定するためのガイドラインを確立し続けることである。

--- 以下略。

<付記>: 左上のイメージの解説:
1,ミナトカモジグサ(Brachypodium distachyon): ヨーロッパや北アフリカ、中東が原産のイネ科の一年草。日本にも移入分布する。別名セイヨウヤマカモジ、属名からブラキポディウムと呼ばれることもある。そのゲノムサイズの小ささや栽培の容易さから、単子葉植物や穀類のモデル植物として様々な研究の対象とされている。
2,エノコログサ(狗尾草、学名:Setaria viridis) は、イネ科エノコログサ属の植物で、一年生草本である。ブラシのように長い穂の形が独特な雑草である。 夏から秋にかけてつける花穂が、犬の尾に似ていることから、犬っころ草(いぬっころくさ)が転じてエノコログサという呼称になったとされる。俗称、ネコジャラシ(猫じゃらし)

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: NASA Science Editorial Team

8月22日(木)
NASAのキューブサット、商用ライドシェアとして打上げられる

NASAのパスファインダー・テクノロジー・デモンストレータ(PTD)シリーズのキューブサットのペアが、米国太平洋時間8月16日(金)午前11時56分に、カリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙軍基地から、スペースXの、トランスポータ11ライドシェア・ミッションで打上げられた。 PTD-4 と PTD-R の二つの小型衛星は、宇宙探査と技術の未来を形作るために、新技術を検証し小型宇宙船の能力を向上させるNASAの取組みを前進させるのに役立つ。

PTD-4 は、アンテナを内蔵した高出力で少量の展開型ソーラーアレイを実証し、PTD-R は、並んで取り付けられた二つの 85mm 口径の画一型望遠鏡を介して、宇宙からの紫外線と短波の赤外線光学センシングを、初めて、同時にテストすることに焦点を当てている。これらの二つのキューブサットは、すべての PTD 衛星に共通な、トライアンフ(Triumph)と呼ばれる六つのユニット(6U)の宇宙船を使っている。

ここでは、NASAの専念と乗合わせ(ライドシェア)の、挑戦クラスの契約の一環として、NASAの二つのキューブサットの打上げを確保した。

これは、打上げコストを抑えるために、より多くの商業慣行を採用する取組みの一環であり、これらの小さいながらも非常に高性能な小型衛星が、宇宙への乗り物を見つけるための新たな機会を提供する。

これらの柔軟性の高い契約は、打上げコストの低減を通して宇宙へのアクセスを拡げるとともに、NASAの科学研究・技術開発に貢献するための理想的なプラットフォームとして機能する。

--- 以下略。

<付記>: これまでは、衛星を打上げたい組織などが、自ら、或いは、他の企業等へ依頼して、もっぱら自らのために、ロケットを打上げてきました。しかし、今回の打上では、NASAその他(含むヨーロッパ宇宙機関)が、それぞれ別々にスペースX社の打上げるロケットに相乗り(ライドシェア)する形をとっています。
このことは、今後の衛星の打上が、従来のような衛星開発組織の主導ではなく、打上ビジネスを担う専門組織の主導に移ることを示唆しています。
現状では、世界の打上ビジネスはスペースX社が圧倒的に優位にあり、当面は追従できる企業等はないかも知れません。しかし、今回のことは、本格的な打上ビジネスへの走りと言えるのではないでしょうか。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: NASA Communications

8月21日(水)
NASAが設計した温室効果ガス検出機器の打上げ

NASAのジェット推進研究所(JPL)が開発した画像分光計は、地球温暖化の原因となる排出量の削減に役立つ実用的なデータを提供する。

NASAが設計した最先端の温室効果ガス追跡装置を搭載した炭素図化連立組織(Carbon Mapper Coalition)の最初の衛星である、タナガー1号(Tanager 1:タナガーは、中米·南米産の羽毛の美しい小鳴鳥、フウキンチョウ)が、米国太平洋夏時間8月16日(金)午前11時56分にカリフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地の宇宙打上複合台4Eから、スペースXのファルコン9ロケットで打ち上げられ、地球軌道上にある。地上の管制官達は、同日午後2時45分に同機との通信を成功裏に確立した。

この衛星は、NASAのジェット推進研究所で開発された画像分光計技術を使い、メタンと二酸化炭素の点源排出量を個々の施設や機器のレベルまで地球規模で測定する。Tanager-1 は、非営利団体の「炭素図化(Carbon Mapper)」が主導する慈善団体の資金提供による官民連合の一部として開発された。Tanager-1 を開発したPCBとJPLは、ともに炭素図化連立組織のメンバーであり、 JPL 製の画像分光器を搭載した2機目の Tanager 衛星を後日打ち上げる予定である。

----- 中間略 ーーーーー

運用が開始されると、探査機は一日あたり約 130,000 平方キロメートルの地表面をスキャンする。 Carbon Mapper の科学者達は、 Tanager-1 からのデータを分析し、メタンと二酸化炭素のユニークなスペクトル指標を持つガスの煙を特定し、その発生源を特定する。煙のデータは、炭素図化データポータルで公開される。

メタンと二酸化炭素は、気候変動に最も寄与する温室効果ガスである。世界のメタン排出量の約半分は、主に化石燃料、農業、廃棄物管理産業などの人間活動によるものである。一方、大気中の二酸化炭素は1750年に比べて50%も増えており、これは主に石炭、石油、ガスの採掘と燃焼による増加である。

----- 中間略 ーーーーー

衛星に搭載された画像分光計は、地球の表面で反射される数百の波長の光を測定する。地球の大気中の様々な化合物(メタンや二酸化炭素など)は、様々な波長の光を吸収し、画像分光計が識別できるスペクトルの「指紋」を残す。これらの赤外線の指紋によって、研究者達は、大量の温室効果ガス排出量を特定して定量化することができ、緩和の取り組みを加速させる可能性がある。

Tanager-1 は、メタンと二酸化炭素のデータにアクセスし、実行可能にするための広範な取り組みの一部である。この取り組みには、JPLが開発し、国際宇宙ステーションに設置された画像分光計がある、NASAの EMIT(Earth Surface Mineral Dust Source Investigation:地球表面鉱物ダスト源調査)による測定値の使用が含まれる。

<付記>: この記事には背景に二つの特殊性を含んでいます。一つは、打上に使われたロケットが、相乗り(ライドシェア)として計画された初めての試みであること(明日の記事に掲載)、および、同時に送られた探査機に、気象温暖化に関連する、ヨーロッパ宇宙機関の北極圏探査機が含まれていることです。これらの科学的特徴は、 「地球探査(8月20日) 」 に掲載してあります。

<出典>: Jet Propulsion Laboratory

8月20日(火)
ガイア:ここに太陽が来る

我々の銀河系の外から帰るとはどういうことだろう? 大きな疑問に答えるように設計されているが、ヨーロッパ宇宙機関のロボット、ガイア・ミッションからのデータは、宇宙における人類の位置について、独自の現代的な視点を提供するのに役立っている。 ガイアは太陽の地球近くを周回し、星の位置を非常に正確に解読するために、1年間、変化する視点からの僅かな動きを判断することができる。その移動は、より遠い星は比例して小さくなり、その距離を決定する。ビデオの最初のシーケンスでは、ミルキウェイ銀河のイラストが示され、すぐにガイアの星のデータの3次元の視覚化に分解される。いくつかの注目すべき星には一般名でラベルが付けられているが、他の星にはガイア・カタログの番号が付けられている。やがて、視聴者達は、我々の星の近くに到着し、そこでは多くの星がガイアによって追跡され、すぐに我々の故郷の星である太陽にたどり着く。ビデオの最後では、太陽系3番目の惑星である地球の反射光が見える。

<ひとこと>: イメージのリンク先は動画 Youtube です。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

8月19日(月)
2024ヨーロッパ宇宙機関宇宙環境報告書

我々の惑星は、変化する気象を研究し、広域な通信とナビゲーションサービスを提供し、重要な科学的疑問に答えるために作業を行う宇宙船に囲まれている。

しかし、その軌道の一部は混雑し、宇宙での未来を脅かす、壊れた衛星やロケットの致命的かつ動きの速い破片によって一層撹乱されている。

2002年、ヨーロッパ宇宙機関がメンバーである国際スペースデブリ監視委員会(IADC:Inter-Agency Space Debris Coordination Committee)は、スペースデブリ軽減ガイドラインを発表した。自主的なガイドラインに記載されている措置は、さらなるデブリの発生を防ぐ方法で宇宙ミッションを設計、飛行、および処分する方法を定めている。これらは、重要な軌道を保護するための主要な一歩であり、ヨーロッパ宇宙機関の政策、国内法、技術基準のベースラインとして機能してきた。

2016年以降、ヨーロッパ宇宙機関のスペースデブリ局は、世界の宇宙活動の透明性の高い概要を提供し、これらの措置やその他の国際的なデブリ削減措置が宇宙飛行の長期的な持続可能性をどの程度改善しているかを判断するために、毎年宇宙環境報告書を発行している。

以下は、2024年の報告者の概要である。

基本事項
・ 地球の軌道環境は有限の資源である。
・ 2023年にはこれまでのどの年よりも多くの衛星が打ち上げられた。
・ 特定の低地球軌道における商用衛星編隊の数と規模は増加し続けている。
・ 寿命の終わりに、十分な数の衛星がこれらの非常に混雑した軌道を離れることはない。
・ ミッションの終了時に運用軌道に留まっている衛星は、破片が危険な破片の雲に分裂し、長年にわたって軌道上にとどまるリスクがある。
・活動中の衛星は、他の衛星や宇宙ゴミ(space debris)の破片の邪魔にならないように、ますます多くの衝突回避操作を行う必要がある。
・ 宇宙ゴミ対策の採用は徐々に進んでいるが、まだその増加に歯止めをかけるには至っていない。
・ これ以上の変化がなければ、宇宙開発を行う民間企業や国家機関の集団的な行動は長期的には持続不可能となる。

図中の表示の説明

    UI = 未確認  RM = ロケットミッション関連オブジェクト  RD = ロケットの残骸  RF = ロケットの破片  RB = ロケット本体
    PM = ペイロードミッション関連オブジェクト  PD = ペイロードデブリ  PF = ペイロードのフラグメンテーションデブリ
    PL = ペイロード

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Space Safety (ESA)

8月18日(日)
夏の大三角の隠された宝

8月の空は、北半球の観測者にとっては、日暮れ後の美しい夏の大三角を絶好の位置に導く。

空の高い位置にあり、立ったまま真っ直ぐ見上げるのは首に負担がかかるので、メンバーとなる星達を快適に観察するのが難しいかもしれない。その最も明るい星やメンバーの星座をすばやく見つけたい人にとってはそれほど問題ではないが、人々が、その周りに散らばる、あまり知られていない暗い星のパターンの一部を見るのを妨げる可能性はある。

解決策は、毛布やマットの上で地面に横たわるか、芝生や椅子を運び上を向いて優雅に座って見よう。夏のトライアングルの三つの星、こと座と明るい星ベガ、はくちょう座と輝く星デネブ、アクイラとその燃える星アルタイルなどの主要な星座をすぐに見つけることができる。

目が慣れてくると、夏の大三角地帯の周辺に隠れているいくつかの星座、キツネ座、いて座、イルカ座とその星達を見つけることができる。これらは夏の大三角の「隠された宝」と呼ぶことができるが、どこを見ればよいかを知っている人にとっては、ありふれた視界である!

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Kat Troche(著者名です)

8月17日(土)
スバールバル、溶ける

2024年の夏、スバールバル諸島の氷冠は、非常に高い気温によって極端な融解のエピソードに見舞われた。

ノルウェー本土と北極点の間に位置するスバールバル諸島は、地球上で最速の温暖化の場所である。その陸地の半分以上は氷で覆われており、グリーンランドと南極大陸以外の地球の氷河面積の、約6%を占めている。

2024年7月下旬から8月上旬にかけて、気温が平均以上の摂氏4度前後で推移した北極圏のこの部分では、この暑さは、地球最北端の氷河があるスバールバル諸島に打撃を与え、雪と氷の急速な溶解を引き起した。

ランドサット8号の右上のイメージは、8月9日の、群島で2番目に大きな島である ノールアウストラン(Nordaustlandet Nordaustlandet)島 を指し、水と堆積物が海岸から北極海に流れ込んでいる。堆積物が、島を取り巻く水面に印象的な色の渦巻きを引き起こしている可能性がある。季節の雪が溶け、「ファーン(firn:万年雪)」と呼ばれる古い圧縮された雪の層によって、水色の氷河の氷の一部がむき出しになり、このイメージで露出している。

この大きな融解は8月に入っても続き、持続性のヒート・ドームがスカンジナビアの北極圏の一部を焼いた。スバールバル諸島の首都スピッツベルゲン島のロングイェールビーン(Longyearbyen)では、8月11日に、気温が摂氏 20.2 度に達した。8月の最高気温は、前月の月間記録を約 2.2 度上回っている。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Earth Observatry

8月16日(金)
誇張された月

我々の月にはこれほど大きなクレータはない。また、地球の月は、自然には、このとがった質感を示さない。そして、その色はより繊細である。それでもこのデジタル作品は現実に基づいている。この注目のイメージは、NASAの月軌道船レーザー高度計(LOLA)ミッションで取得された表面高度データの、教育的理解のために誇張された、月のイメージのデジタル合成である。例えば、デジタル機能の強化は月の高地を強調し、我々の月がその46億年の歴史の間に経験した途方もない爆撃を示すクレータをより明確に示してくれる。マリア(maria)と呼ばれる暗い領域はクレータが少なく、かつては溶けた溶岩の海だった。加えて、月の実際の組成に基づいているにもかかわらず、イメージの色は、変えられ誇張されている。ここでは、青は鉄分が豊富な領域を示し、オレンジはアルミニウムがわずかに過剰であることを示している。月は何十億年もの間、地球に対して同じ側面を示してきたが、現代の技術によって、人類は月について、そしてそれが地球にどのように影響するかについて、より多くのことを学ぶことができる。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

8月15日(木)
次の満月はスーパームーン、ブルームーン

次の満月は、スーパームーン、ブルームーン、チョウザメ(Sturgeon)の月(赤、トウモロコシ、緑のトウモロコシ、大麦、ハーブ、穀物、または犬の月)ラクシャ・バンダン(Raksha Bandhan)またはラキ・プルニマ(Rakhi Purnima)、他である。

満月は米国東部夏時間2024年8月19日(月)午後2時26分(日本時間8月20日火曜日午前3時26分)である。これは、火曜日の朝、ネパール標準時から東に向かってアジアとオーストラリアの残りの部分を横断し、国際日付変更線に至る。月は日曜日の朝から水曜日の早朝までの3日間満月になる。

これはスーパームーンになる。「スーパームーン」は、新月または満月の時、月が地球に最接近する90%以内にあるときに起きる言葉として、1979年に、占星術師リチャード・ノール(Richard Nolle)によってつくられた。実際には、新月は見ることができないため、世間の注目を集めているのは、一年で最大かつ最も明るい満月である。これは、今年は4回連続のスーパームーンの最初の月になる。9月と10月の満月は、事実上、今年の最も近い月となる。

青くは見えないが、4回ある満月シーズンの3回目の満月として、これはブルームーンになる。英語で「ブルームーン」が最初に記録されたその使い方は1528年に遡る。 この用語の起源については、「裏切り者の月」を意味する古い英語のフレーズが推測されている。あるいは、大気中の塵によって月が実際に青く見えるような稀な事象との比較になるのかも知れない。1940年代以降、「ブルームーン」という用語は、2回の満月がある月の2番目の満月にも使われてきた。

--- 以下略(記事は長文です)。

<ひとこと>: “ブルームーン”という言葉の意味するところははっきりしません。 こちら を参照してください。また、この月の満月は、米国・カナダの五大湖や他の主要な水域でこの時期に捕まえやすい大きな魚にちなんでスタージョン(Sturgeon:チョウザメ)ムーンという呼称や、赤い月、トウモロコシまたは緑のトウモロコシの月、大麦の月、ハーブの月、穀物の月、犬の月などがあるようです。世界的に見ると、穀物の収穫時期にも絡んで、月に関する呼称は様々あるようです。
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<出典>: Gordon Johnston(著者名です)

8月14日(水)
パリの暑さの中を走る

100年前にパリでオリンピックが開催されて以来、市内の気温は摂氏 3.1 度大きく上昇している。最高気温が 30°C を超える暑い日は、1924年の約3倍の頻度になっている。

このような気候変動は、2024年のマラソン出場者にとって、一部の解説者達が、これまでに考えられた中で最も「過酷」で「残酷な」オリンピックコースの一つと呼ぶように、異常に直面している。8月10日と11日には、ランナーは、二つの長く厳しい丘に立ち向かい、歴史的意義と象徴的な建築物の景色が豊かな42 km のコースを完走した。

猛暑は、屋外イベントに出場する持久力のあるアスリートにとって、特にリスクとなる可能性がある。2020年の東京オリンピックでは、うだるような暑さの中、1万メートル走でイギリス人選手が倒れ、50キロ競歩で日本人選手が倒れた。パリで競うマラソン選手たちにとって幸いなことに、競技の最初の週に問題を引き起こした熱波はほぼ収まっている。

左上の図の右(右下に大判)は、マラソンルート沿いの熱環境が典型的な夏の日にどのように変化するかについての基本的な視点を示している。これは、気温が 28°C のピークを迎えた晴れた日、2024年8月6日現地時間午後1時40分の、NOAA・NASAのスウオミ NPP 衛星の可視赤外線イメージング放射計(VIIRS)によって観測された地表面温度を示している。NASAのジェット推進研究所の科学者達は、機械学習手法と欧州宇宙機関のセンチネル2衛星からの表面反射率データを使って、熱データを「鮮明化」した。この手法によってデータの解像度が向上し、ピクセルあたり375メートルからピクセルあたり約20メートルに改善された。

暖かい地表温度は赤で示され、冷たい地は青色で示されている。凱旋門から放射状に広がる並木道など、公園やその他の緑のインフラストラクチャが、建物、道路、駐車場などよりも涼しいことに注目しよう。このような都市空間は、通常、熱容量が高く、樹木、草、庭園などの生物の風景よりも太陽の熱を吸収して再放出する材料で構成されている。

都市のヒートアイランドとして知られるこの影響は、パリでは特に激しくなる可能性があるが、これは、パリが他の多くのヨーロッパの都市よりも樹木に覆われておらず、特に熱くなりやすい亜鉛屋根が多くあることによる。

このマップでは、気温ではなく、地表面温度が示されていることに注意しよう。ヒートアイランド現象は、地表の温度と気温データの両方で見ることができるが、地表の温度ではその差が顕著になる傾向がある。8月6日に撮影されたとき、地表の温度は、スタートライン付近の最高気温 43°C から、樹木の多い地帯の最低気温 25°C まで変動していた。

パリの中心部にある限られた樹木の覆いは、ランドサット9号の OLI-2 (Operational Land Imager-2) によって得られた左のイメージに見ることができる。灰色に見える亜鉛の屋根は、暑い夏の日には 90°C の温度まで上昇する可能性がある。ヨーロッパ環境庁が実施した衛星データの分析によると、都市部の森林や公園などのグリーン・インフラはパリの僅か26%を占めており、他の欧州の首都の平均41%を大きく下回っていることが分かった。このような差は積み重なる可能性がある。ヨーロッパの100都市のヒートアイランド現象の強度に関する最近の分析では、パリがトップ付近にランクインした。

オリンピック男子マラソンは、女子マラソンの前日である8月10日現地時間午前8時にスタートする。レースは、パリで最も密集した場所である広く舗装された大通りからスタートし、競技者はオテル・ド・ヴィル、ガルニエ宮、ヴァンドーム広場、ルーブル美術館、トロカデロなど、いくつかの象徴的な街のランドマークを通過する。

アリゾナ大学の気候学者で、2020年の東京オリンピックマラソン期間中、微かな気候の変動がマラソン・ランナーの熱ストレスにどのような影響を与えたかを研究した共著者、アリアーヌ・ミデル(Ariane Middel)氏によると、この地域の限られた植生と密集した開発は、ランナーが経験する暑さストレスを増大させるという。「しかし、ルートの両側にある高層ビルや並木道は、ランナーに日陰を提供する。これは、晴れた日の人体への熱負荷を軽減する大きな要因である」と彼女は言う。

--- 中間略 ---

ミデル氏は、猛暑のリスクを軽減するために、レースプランナーは、マラソンは早朝に開始して涼しい気温と日陰の恩恵を受ける、コース沿いの樹木の被覆を増やす、一時的な日よけを設置する、などを提言した。

<ひとこと>: この猛暑の中を走るとは! 大判はイメージのリンクから。左上の比較のイメージはヘッドライン(原典のページ)から。

<出典>: Earth Observatry

8月13日(火)
アニメーション:ペルセウス座流星群

ペルセウス座流星群はどこから来るのだろう? ペルセウス座流星群は、ほとんどが小さな石の砂粒であり、かつては、スウィフト・タットル彗星から追い出され、ゆっくりと分散しながらこの彗星の軌道に辿っている。注目されるこのアニメーションでは、太陽を周回する流星体の流れ全体を描いている。毎年、地球がこの流れに近づくと、ペルセウス座流星群が発生する。このアニメーションでは、明るさが強調されている彗星の残骸は、通常では非常に暗いために実際には検出できない。 この破片のごく一部のみ地球の大気圏に突入し、明るく熱っせられ、崩壊する。今夜と、これからの数日の夜、上弦の月が真夜中以降の空に存在しないので、ペルセウス座流星群と他の活発な流星群が良く見える。

<ひとこと>: イメージは動画です。イメージをクリック(タップ)してご覧ください。

8月12日(月)
眼下のペルセウス流星群

地球の住人は、通常、見上げて流星群を見る。 しかし、この驚くべき光景は、2011年8月13日に、宇宙飛行士ロン・ガランによって撮影され、ペルセウス座流星群を見下ろして捉えている。 高度約380キロメートルを周回する国際宇宙ステーションに搭乗したガランの視点からは、下のペルセウス座流星群の縞模様、スウィフト・タットル彗星からのダストを拾い上げている。この気化する彗星のダストの粒は、地表から約100キロメートル上空にある、より密度の高い大気を通して、毎秒約60キロメートルで移動している。この例では、短い流星の閃光が、フレームの中心近く、地球の湾曲した縁と、明るい星アルクトゥラス(Arcturus)の直下の緑がかった大気光の層の下にある。今年のペルセウス座流星群は今活動しており、8月12頃にピークに達すると予測されている。今年は明るい月明かりがないので、おそらく、真夜中以降、澄んだ暗い空の下で、多くのペルセウス座流星群を見ることができるだろう。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

8月11日(日)
NASAの研究、ツンドラの植生が2100年を通じて
  背が高く緑豊かになると明らかにする

地球規模の温暖化は、極北の森林の植生構造を変化させている。NASAの研究者達によれば、これは少なくとも今世紀末まで続く。 森林構造の変化は、大気から温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を吸収するか、永久凍土の融解を増加させて古代の炭素の放出をもたらす。 ICESat-2 (Ice, Cloud, and land Elevation Satellite 2) ミッションと Landsat ミッションから得られた数百万のデータが、この最新の研究に情報を提供し、気候予測コンピュータ・モデルの改良に使われる予定である。

ツンドラの光景はますます高く、緑が増えている。温暖化に伴って、極北の森林の植生は、より多くの樹木や低木が出現するにつれて変化している。このような北方の林とツンドラの植生構造の変化は、少なくとも今後80年間は続くと、NASAの科学者達は最近発表された研究で述べている。

北方林は一般的に北緯50度から60度の間に成長し、アラスカ、カナダ、スカンジナビア、ロシアの大部分をカバーしている。この植物群系(biome)には、マツ、トウヒ、モミなどの常緑樹が生息しており、さらに北では、永久凍土と短い成長期が、歴史的に大きな木や密林を支えることを困難にしてきた。これらの地域の植生は、代わりに低木、コケ、草で構成されている。

これら二つの植物群の境界は見分けがつきにくく、以前の研究では、高緯度植物の成長が増加し、かってツンドラの低木や草にまばらに覆われていた地域の、北に移動することが分かっている。現在の、NASA主導の新しい研究では、これらのツンドラ地域と、北方地域とツンドラが出会う隣接する移行林で、樹木や低木の存在が増加していることがわかっている。これは、少なくとも今世紀末まで続くと予測されている。

<右図>: この研究のデータは、アラスカとカナダ北部の地図に描かれており、過渡期の風景に広がる樹冠の覆いの変化を強調している。北半球の北方では、キャノピー被覆(濃い緑色)の最大の増加が、過渡期のツンドラ地形で発生している。これらの地形は調査地域の寒冷な北部に沿って見られ、歴史的には主に、低木、コケ、草を支えてきた。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Erica McNamee(著者名です)

8月10日(土)
運命づけられた星イータ・カリーナ

イータ・カリーナ(Eta Carinae)は今にも爆発しそうだ。しかし、それが何時になるかは誰にもわからない。来年かもしれないし、今から100万年後かも知れない。イータ・カリーナの質量は太陽の約100倍あり、本格的な超新星爆発の有力候補となっている。歴史的な記録によると、イータ・カリーナは約170年前に珍しい爆発を起こし、南の空で最も明るい星の一つになった。鍵穴星雲(Keyhole Nebula)のイータ・カリーナは、現在、天然のレーザー光を放出していると考えられている唯一の星である。

この注目のイメージは、このはぐれ星を取り巻く珍しい星雲の詳細を引き出している。望遠鏡によって引き起こされた回折スパイクが、イータ・カリーナの中心から発せられる明るい多彩な縞として見えている。ホムンクルス星雲(Homunculus Nebula)の二つの異なる塊(lobes)が熱い中央領域を囲み、イメージも右側に向かって伸びるいくつかの奇妙な放射状の縞が赤く見える。塊はガスとダストのレーンで満たされており、中心付近で放出される青色の光と紫外線を吸収している。しかし、この連鎖は未だに解明されていない。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Gary Daines(著者名です)

8月9日(金)
火星の岩のヒョウの斑点

この珍しい場所は、なぜ生まれているのだろう? 火星の岩石の明るい色の斑点、それぞれが暗い境界線で囲まれており、今、火星を探査しているNASAのパーサビアランスローバーによって今月初めに発見された。有名な地球の捕食者のマークに似ていることからヒョウの斑点と呼ばれるこれらの奇妙なパターンは、古代の火星の生命によってつくられた可能性が調査されている。 写真の場所は直径数ミリメートルであり、チェヤバ・フォールズ(Cheyava Falls)と名付けられた大きな岩の表面に発見された。 エキサイティングだが証明されていない推測は、地球の岩石に現れるある同様な斑点のように、暗いリングを残しながら岩を赤から白に変え、はるか昔に、微生物が化学反応でエネルギーを生みだしたというものである。他の非生物学的な説明が最終的に優勢になるかもしれないが、 この潜在的な生物学的起源に焦点を当てた推測は、多くの興味をそそる原因となっている。

<ひとこと>: これは8月7日の「火星探査写真集」に掲載した記事の再掲です。大判はイメージのリンクから。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

8月8日(木)
ユークリッド、銀河動物園の銀河を分類する

本日開始された新しい銀河動物園プロジェクトのおかげで、ヨーロッパ宇宙機関のユークリッド宇宙望遠鏡で撮影されたこのイメージで、何千もの銀河の形を特定することができる。これらの分類は、科学者達が、銀河の形が時間とともにどのように変化したか、また、これらの変化を引き起こしたものとその理由に関する疑問に答えるのに役立つ。

80万枚を超えるイメージから選ばれた数万の銀河を含むこの最初のデータセットは、プラットフォーム上で利用可能になっており、それらを分類するのを待っている。

分類するユークリッド銀河の例をこのイメージに示している。

<イメージの説明>:黒い背景に40個の銀河が示されている。銀河の形はすべて異なり、渦巻きのように見えるものもあれば、棒状に見えるもの、滑らかに見えるものなどがある。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Euclid

8月7日(水)
土星の夏

NASAのハッブル宇宙望遠鏡は、このガス巨人の北半球の夏の2020年7月4日の間に、土星とその巨大なリングのこのイメージを撮った。土星の氷の衛星右にミマス、下にエンケラドゥスの二つもはっきりと見える。

このカラーの合成で見られる北半球の薄い赤みがかった靄(もや:haze)は、太陽光の増加による熱によるものであり、大気の循環が変化するか、大気中のエアロゾルから氷が除去されている可能性がある。別の理論では、夏の数ヶ月の間に増加する日光がつくり出す、光化学的な靄の量を変化させているというものがある。逆に、今見えている南極は、土星の冬の半球の変化を反映して、青い色合いをしている。

このイメージは、外部惑星大気遺産(OPAL:Outer Planets Atmospheres Legacy)プロジェクトの一部として撮影された。 OPAL は、科学者達が、太陽系のガス巨大惑星の大気力学と進化を理解するのに役立っている。土星の例では、天文学者達は、変化する気象パターンと嵐を追い続けている。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Monika Luabeya(著者名です)

8月6日(火)
太陽のダンス

我々の太陽の表面は、ある時は踊っているように見える。 例えば、2012年の半ば、NASAの太陽軌道を周回する太陽活動観測(SDO:Solar Dynamic Observatory)宇宙船は、アクロバティック・ダンサーのようにランニング・ダイブ・ロール(running dive roll)を行うような印象的な隆起を撮った。この劇的な爆発は、約3時間をカバーする注目のコマ落としビデオで、紫外線で捉えられた。 ループする磁場が太陽の高温プラズマの流れを示した。踊る隆起のスケールは巨大で、熱いガスの流れるアーチの下に地球全体が簡単に収まる。静止した隆起は通常約1か月続き、コロナ質量放出(CME)として噴出し、太陽系に高温のガスを放出する可能性がある。この太陽の隆起を生み出すエネルギーのメカニズムはまだ研究中である。2012年と同様に、今年も太陽の表面は非常に活発であり、多くのフィラメントと隆起が示されている。

<ひとこと>: イメージのリンク先は動画 YouTube です。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

<付記>: この暑さは何時まで続くのでしょうか? 11年周期の太陽活動も極大期に入っています。以下、8月4日の Space weather com News から抜粋。

太陽黒点の数は23年ぶりの高水準に達した。 太陽は2001年のようにパーティーをしている。太陽黒点の数が今ほど多かったのはこれが最後である。ベルギー王立天文台の太陽の影響データ分析センター(Solar Influences Data Analysis Center)によると、2024年7月の月平均の黒点数は 196.5 だった。これは2001年12月以降、毎月上回っている。--- 参考:極小期には太陽黒点“0”というときもありました。

8月5日(月)
卵をかかえたペンギンのような衝突銀河ペア (Arp 142)

<前書き>: 時を同じくして、 過去のハッブル宇宙望遠鏡とジェームスウェブ宇宙望遠鏡、 今日の天文写真(astroimage of the day)、すばる望遠鏡からの、ペンギンとその卵のように見える、衝突する銀河のペア Arp 142 の観測記事が掲載されました。ここでは、三つの記事を総合的に取り上げます。なお、ハッブル宇宙望遠鏡・ジェームスウェブ宇宙望遠鏡、および今日の天文写真は、本サイト掲載済みの記事からの要約した訳文を、すばる望遠鏡の記事は原文を掲載しています。
また、分かり易い記事から順に掲載しています。

1、 今日の天文写真から: ARP 142 ウェッブ宇宙望遠鏡からの相互作用する銀河

それは、一部の人にとっては、ペンギンのように見える。しかし、宇宙を研究する人々にとっては、二つの大きな銀河が相互作用している、興味深い例である。ほんの数億年前、上の NGC 2936 は、おそらく通常の渦巻銀河だった。紡ぎ、星を作り、そして自分のビジネスを気にする。その後、下の巨大な楕円銀河 NGC 2937 に接近しすぎて、急降下した。まとめて Arp 142 として知られるこれらのイメージが、この新しいウェッブの赤外線画像に登場し、比較として可視光のハッブルイメージが示されている。 NGC 2936 は、この密接な重力相互作用によって偏向されているばかりでなく歪められている。 大質量の銀河が近くを通過するとき、通常、ガスは凝縮され、そこから新しい星が形成される。ペンギンの鼻のように、上の銀河の右側に若い星のグループが現れ、渦巻きの中心には、 明るい星が一緒になって目として現れている。10億年も経たないうちに、これら二つの銀河は合体し、一つの大きな銀河になる可能性が高い。

2、すばる望遠鏡から:卵をかかえたペンギンのような衝突銀河ペア (Arp 142)

超広視野主焦点カメラ ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)を使って2014年から約7年かけ、330 夜の大規模観測を行ったすばる戦略枠プログラム(HSC-SSP)で得られた広大な宇宙画像の中には、複数の銀河が重力を及ぼしあい、お互いの形を乱しあっている「衝突銀河」がたくさん写りこんでいる。その形は多種多様であり、重力の相互作用の結果、地球から見ると、くらげのような形をした銀河ペアもあれば、ペンギンと卵のように見えるものもある。

このイメージは、うみへび座の方向にある衝突銀河のペアであり、ペンギンに見える銀河が NGC 2936 である。ペンギンの左下、卵に見える楕円銀河 NGC 2937 の重力を受けて形が歪んでしまったと考えられる。Arp 142 は、ふたつの銀河をあわせた名称である。

NGC 2936 は、もともとは渦巻銀河だったと考えられており、ペンギンの目にあたる一番明るい部分が銀河の中心核である。くちばしや輪郭で青白く見えている部分では、衝突 (重力相互作用)により活発な星形成が行われ、生まれたばかりの若い星々が青白く輝いている。それに対して、卵に見える楕円銀河は古い星が多いので、全体的に赤い(オレンジに近い)色をしている。

ペンギンを取り囲むように淡くぼんやりした衝突の痕跡が写っているのは、8.2メートルという大口径のすばる望遠鏡だからこそ捉えられた構造と言えるだろうう。さらに広視野を誇るここでは、ペンギンの左上、少し離れたところに見える淡い衝突の痕跡も捉えている。

3,ジェームスウェブ宇宙望遠鏡から:相互作用する銀河 Arp 142 (訳文)

ハッブル宇宙望遠鏡は、2013年に、ペンギンと卵の愛称で呼ばれる Arp 142 を観測した際に、可視光線を捉えた。

左はハッブル宇宙望遠鏡の可視光線、右はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線光で撮影した同じ領域である。

いずれのイメージも複数のフィルターで構成されている。ウェッブのイメージに色を適用するプロセスは、ハッブル宇宙望遠鏡で使用されたアプローチと非常によく似ており、最も短い波長には青が割り当てられ、最も長い波長には赤が割り当てられている。ウェッブの場合、イメージプロセッサは近赤外光のイメージを順番に可視色に変換している。いづれの望遠鏡も高解像度のイメージを撮影するための、探索する機能がたくさんある。

ハッブル宇宙望遠鏡の可視光線イメージでは、ペンギンの「くちばし」を横切って暗褐色のダストの通り道が始まり、ペンギンの体と背中に沿って伸びている。ウェッブの近赤外線イメージでは、このダストレーンはかなり暗くなっている。

ウェッブのイメージでは、かすかに逆さまのU字が対の銀河を結んでいる。これは、星、ガス、ダストの組み合わせである。ハッブル宇宙望遠鏡では、ペンギンの「くちばし」と卵の上部の間に、より明確な隙間がある。ペンギンの尾の底には、いくつかの顕著な渦巻銀河があるが、ウェッブのイメージには、その他にもいくつかある。

卵そのものは両方のイメージで似ているが、ウェッブでは、銀河が非常に明るく輝いているために、回折スパイクがその輝きをわずかに伸ばしている。右上の銀河はほぼ同じ大きさに見えるが、ウェッブの視界にはさらに多くの星のいくつかが見える。

次に背景を比較する。ハッブル宇宙望遠鏡は多くの遠方の銀河を可視光で映し出しているが、隅が真っ暗なのは望遠鏡の視野外である。ウェッブの赤外線イメージには、さらに多くの遠い銀河が輝いている。これは、ウェッブの近赤外線カメラの感度と解像度、および赤外線の利点の証である。遠くの銀河からの光は、宇宙を横断するときに引き伸ばされるために、その光の大部分はより長い波長でしか検出できない。

<ひとこと>: 大判はそれぞれのイメージのリンク先から。

7月4日(日)
2024年8月、NASAからの空観察のヒント

惑星のランデブー、流星、そして「高所の星」!

二つの惑星が超接近して合流し、ペルセウス座流星群がピークに達し、射手座の恒星の苗床であるラグーン星雲を探す。

 --- 左の図は、8月27日の朝の、三日月、木星、火星の惑星トリオを示すスカイチャート。

ハイライト

・ 8月 4日  新月
・ 8月11日  ペルセウス座流星群が今夜、一晩でピークに達する。晴天であれば、今年は現地時間の午後11時30分頃までに月が沈むので、観察条件は良好である。流星の活動は、それから夜明けまで加速する。
・ 8月14日  木星と火星は、今朝、コンジャンクションと呼ばれる非常に近くにペア・アップする。僅か3分の一度離れて現れる。これは満月の幅よりも小さくなる。日の出の数時間前に東の空で見つけよう。
・ 8月19日  満月
・ 8月20日  今夜、月が空を横切って土星を追う。二つは日が暮れた直後に東に昇り、夜明けまで共に西に向かって動く。
・ 8月27日  今朝、三日月が火星と木星に加わり、魅惑的なトリオを形成する。日の出前の1時間ほどの東で探そう。
・月を通して   双眼鏡または望遠鏡を使って、暗くなってから最初の数時間でラグーン星雲を観察できる。いて座にあり、「ティーポット」として知られる星のパターンの近くにある。オリオン大星雲と大きさと明るさが似ているこの星雲は、約4千光年離れた所にある星形成の大釜である。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。右下のイメージのリンク先は動画 Youtube です。

<出典>: Preston Dyches(著者名です)

8月3日(土)
ARP 142:ウェッブ宇宙望遠鏡からの相互作用する銀河

それは、一部の人にとっては、ペンギンのように見える。 しかし、宇宙を研究する人々にとっては、二つの大きな銀河が相互作用している、興味深い例である。 ほんの数億年前、上の NGC 2936 は、おそらく通常の渦巻銀河だった。 紡ぎ、星を作り、そして自分のビジネスを気にする。 その後、下の巨大な楕円銀河 NGC 2937 に接近しすぎて、急降下した。 まとめて Arp 142 として知られるこれらのイメージが、この新しいウェッブの赤外線画像に登場し、比較として可視光のハッブルイメージが表示される。 NGC 2936 は、この密接な重力相互作用によって偏向されているばかりでなく、歪められている。 大質量の銀河が近くを通過するとき、通常、ガスは凝縮され、そこから新しい星が形成される。 ペンギンの鼻のように、上の銀河の右側に若い星のグループが現れ、渦巻きの中心には、 明るい星が一緒になって目として現れている。 10億年も経たないうちに、これら二つの銀河は合体し、一つの大きな銀河になる可能性が高い。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Astronomy Picture of the Day

8月2日(金)
NASAのICON、いくつかの電離層のブレークスルーとともに終了

地球の大気と宇宙の境界(宇宙天気が衛星と通信信号の両方に干渉する可能性のある領域)に関する多くの重要な発見に貢献した後、NASAのICON(Ionospheric Connection Explorer)ミッションは終了した。このミッションは2019年10月に打上げられ、2021年12月に2年間のミッション目標を完了した後、さらに1年間の延長ミッションとして運用された。

ICON宇宙船は、電離層と呼ばれる地球の最外層である大気圏の一部を周回し、下からの地球の天気や上空からの宇宙の天気など、電離層に影響を与える出来事を調査した。電離層は宇宙の最も低い境界であり、地球の表面から88キロメートルから576キロメートルの間にある。これは、正に帯電したイオンとプラズマと呼ばれる負に帯電した電子の混合物であるイオン化された粒子の海で構成されている。

この宇宙のフロンティアは、ダイナミックで忙しい地域であり、国際宇宙ステーションを含む多くの衛星の本拠地であり、無線通信とGPS信号の導管である。衛星と信号は、どちらも、地球と宇宙の天気の複雑な相互作用によって混乱する可能性があるので、電離層の研究と理解は、宇宙の気象と、それが我々の技術に与える影響を理解するために重要である。

 ・ NASAのICONミッションは、電離層と呼ばれる地球の大気の最外層を調査した。

 ・ ICONは、宇宙の気象と地球の気象の相互作用に関する重要な洞察を提供した。このミッションでは、これまでにない詳細な大気光を収集し、大気のイオンと地球の磁力線との関係を示し、地球の長い間理論化されてきた電離層のダイナモを確認するための最初の具体的な観測を提供した。

 ・ ICONが主要なミッションを達成してから約1年後の2022年11月、原因が不明なまま通信が途絶えた。NASAは、数ヶ月のトラブルシューティングの後、正式にミッションを終了した。

--- 以下略。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Desiree Apodaca(著者名です)

8月1日(木)
NASAのデータ、7月22日が地球史上最も暑い日を示す

NASAが世界の毎日の気温データを分析した結果、2024年7月22日が、観測史上最も暑い日となった。今年の7月21日と23日も、2023年7月に設定された以前の日次記録を上回った。これらの記録的な気温は、主に温室効果ガスの排出という人間の活動によって引き起こされる長期的な温暖化傾向の一部である。NASAは、地球に対する理解を深めるというミッションの一環として、変化する地球の重要な長期観測データを収集している。

「これまでで最も暑い年だったが、この2週間は特に残酷だった。」とNASAのビル・ネルソン長官は述べている。「NASAは、20を超える地球観測衛星と、60年以上のデータを通して、地球がどのように変化しているか、地域社会がどのように準備し、適応し、安全を確保できるかについて重要な分析を提供している。」

この予備的な知見は、二つシステム(MERRA-2:Modern-Era Retrospective analysis for Research and Applications, Version 2 と GEOS-FP:Goddard Earth Observing System Forward Processing)のデータ分析から得られたものである。このシステムは、大気モデルを使用して、陸、海、空、衛星の機器からの何百万もの全球観測を組み合わせている。

この図では、 MERRA-2 の、1980年から2022年までの日次平均気温が白で、2023年の値がピンクで、2024年6月までの値が赤で示されている。 GEOS-FP による2024年7月1日から23日までの日常の地球気温値を紫色で示している。この結果は、欧州連合(EU)のコペルニクス地球観測プログラム(Copernicus Earth Observation Programme)の独立した分析とも一致している。分析には僅かな違いがあるが、時間の経過に伴う気温の変化と最も暑い日には広く一致していることが示されている。

<ひとこと>: この記事は、今日の 「地球観測」 に掲載したものの再掲です。大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Goddard Digital Team


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