10月18日(金):
氷で形作られた土地、謎めいた火星 (マーズエクスプレス)
ヨーロッパ宇宙機関のマーズエクスプレスは、火星の南極地域に春が到来すると、厚い冬の霜から浮かび上がる驚くべき地形の配列を捉えた。これらの特徴のいくつかは、氷の環境に比べて驚くほど暗く、「謎めいた地形」のニックネームが付けられている。
火星の季節的な極冠は、主に二酸化炭素の氷といくらかの水の氷で構成されている。氷は春に部分的に昇華(固体の氷から直接蒸気に変わる)し、火星の薄い大気に大量のガスを放出する。秋になると蒸気は再び凝縮し、極冠が成長する。それらは、冬の終わりまでに、緯度55度まで到達することさえあり、地球の北半球に換算すると、ほぼスコットランドやデンマークの南端に相当する。
この凍結・融解のサイクルは、さまざまな奇妙な地表面の特徴を生み出し、その多くは火星の南極に近いオーストラレ・スコプリ(Australe Scopuli)地域のこれらの画像に捉えられている。イメージは、南半球の春の2024年4月2日にマーズエクスプレスに搭載された高解像度ステレオカメラ(HRSC)によって撮られた。
イメージの左側は、氷の層が凍結し、その中にさまざまな量のダストが閉じ込められたときに形成された、露出した層状の堆積物の厚いスタックによって支配されている。イメージの右側は、これらの極の層の堆積物の滑らかな表面を示している。
暗いトーンの地形がこの場面の中心を支配している。もともとは、これらの出現した特徴が氷冠の他の部分よりもはるかに暗い理由が不明であったため、謎めいた地形と呼ばれていたが、研究者達は、現在、このダイナミックな地域で作用しているプロセスについてより良い考えを持っている。
<図の解説>: エクソマーズ(ExoMars)霜に縁取られたポリゴンの視界
ポリゴン(多角形)の地形を詳しく見るには、ヨーロッパ宇宙機関のガス追跡軌道船(Trace Gas Orbiter)が提供する高解像度の画像に目を向けることができる。この例では、火星の南半球の異なる地域のものであるが、寒い春の朝に、インパクトクレータの中とその周辺の多角形の端に残存する氷の発生を見事に示している。
地球では、このパターンは北極と南極の地域によく見られる周氷河の特徴であり、通常は地面に水の氷が存在することを示している。「周氷期」とは、寒冷な気候が地形や景観の進化に寄与する地域やプロセスを指す。ポリゴンは、数年、さらには数世紀にわたる地上の氷の凍結融解サイクルから形成される。火星でのこの種のパターンの研究は、研究者達が火星の気候の歴史を解読するのに役立つ。
暗い物質が氷の上に落ち着いた後、氷と新しいダストの層が相互作用するために、第2段階が始まる。
暗い素材は、明るく反射する氷よりも多くの太陽光を吸収するために、上に落ちた氷を暖め、暗い粒子は徐々に氷を通って沈む。同時に、これは昇華のプロセスを加速し穴をつくる。その下に新鮮な氷が現れるか、新しい霜が沈み込む暗い粒子の上に結露し、最初は暗い扇形の場所に明るい扇形ができることもあり得る。
このプロセスは春にのみ観察される。季節の半透明の氷の層が完全に昇華すると、扇型は下にある表面と見分けがつかなくなる。
火星の探索
2003年に火星の周回軌道に到着したマーズ・エクスプレスのようなミッションが長生きしたおかげで、季節の変化を長年にわたって観測することができ、かつては謎めいていた特徴をより深く理解することができるようになった。
火星の氷冠を研究するだけでなく、風に削られた尾根や溝から、巨大な火山の側面にある陥没した穴、インパクトクレータ、断層、河の道、古代の溶岩プールまで、火星の地質学的特徴の全範囲を示している。
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Oct 10, 2024