2003年マーズエクスプレス(ヨーロッパ宇宙機構)

このページでは2003年に打ち上げられたヨーロッパ宇宙機構の火星探査衛星マーズエクスプレス軌道船による火星軌道からのイメージをご紹介しています。マーズエクスプレスからのデータはNASAの軌道船に比べて精度では劣りますが、搭載されている高精細ステレオカメラ(HRSC;High-Resolution Stereo Camera)にはNASAの軌道船には見られない特徴があります。このページでは立体画像を中心に掲載します。なお、掲載は不定期です。



<火星の水の過去の窓> 6月12日

エリトリア・カオスのクレータの透視図
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この幅70キロメートルのクレータとその周囲は、赤い惑星の水の過去に関する窓を提供している。

エリトリア・カオスの概観
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ヨーロッパ宇宙機関のマーズエクスプレスによって捕えられたこの場面は、2007年3月と2017年2月にとられた二つのイメージの合成である。それは火星の南半球のマルガリティファ-・テラ(Margaritifer Terra)領域の大きなクレータに焦点を当て、北の一部のエリトラエウム・カオス(Erythraeum Chaos)を含んでいる。この領域は、火星で最も古く最も激しくクレータされた地域のいくつかを表す37~40億年のノーチス・テラ(Noachis Terra)の北の端にある。

   テラ(Terra) ----- 大陸・陸地
   カオス(Chaos) ----- 混乱した地

マルガリティファ-・テラとエリトラエウム・カオス
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この場面の谷のネットワークの残骸は、かつてこの領域の中を水が流れ、今日見られる地形を形づくったことを示している。実際に、概要イメージに示すように、パラナ谷(Parana Valles)が東に横たわっており、一方、ロワール谷(Loire Valles)が北西に横たわっている。70キロメートルのクレータの内部には、露出した基盤と解釈される印象的な明るいトーンの素材などの、いくつかの明らかな特徴がある。

エリトラエウム・カオスと周辺の地形
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「混乱した地」は、トラフによって分けられたランダムに正しい位置に置かれたブロックによって特徴づけられる。一般的に、混乱した地形は、例えば氷の突然の融解などの、大量の地下水が放流された、その領域の地表の崩壊に関係している。そのように、多くの場合、流出チャンネルは混乱した地域に始まっている。混乱した地形は、また、例えば、ロワールとパラナ谷の間の、この場面におけるクレータの北(右)のエリトラエウム・カオスのような古代の湖のサイトをマークしているのかもしれない。

エリトラエウム・カオスとその周囲の3D
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June 08, 2017   

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<テラ・シレナムの3重のクレータ> 5月8日

3重のクレータ
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一見したところ、この場面は特別には見えないかも知れないが、大きく引き延ばされたクレータは、それが火星を叩く前に三つに壊れたのかもしれない衝突された天体の跡を印している。このイメージは、1月28日に、ヨーロッパ宇宙機関のマーズエクスプレスによってとられ、南の高地、火星のテラ・シレナムの最も古い領域の一つに焦点を合わせている。

テラ・シレナムの概要マップ
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この場面の中心の引き伸ばされたトラフは長さ45キロメートル幅24キロメートルである。外形の検査は、二つの同じように大きさのクレータと一つの小さなクレータが、足跡のような形をつくるように併合したことを示唆している。持ち上げられた二つの素材のグループがクレータフロアに見える。これらのピークは、インパクトによってつくられた最初のクレータの空洞が重力の下で崩れたときにつくられた。より小さなクレータは、また、中央峰のヒントを持っている。このようなクレータは同時にできたと考えられるが、どのようにそれが起きたかについていくつかのアイデアがある。例えば、大気に入った後に、オブジェクトが小さな欠片に壊れ、同じ場所で矢継ぎ早に地表を叩いたのかも知れない。あるいは、地表との最初の接触と同時に二つまたは三つの大きな部分に粉々に壊れ、新しい破片が2番目と3番目のクレータに結びついたのかも知れない。他のアイデアは、二つまたは三つの小惑星のような、いくつかの密接に結ばれた構成要素が、結果としてそのようなクレータになったのかもかもしれないということである。

高低の視界
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いずれにせよ、この出来事によって投げ出された破片の層がクレータの周辺で連続的なまた均一な厚みに見えるという事実は、インパクトが同時に起きたことを指している。加えて、素材の二つの突出部が両側にあるように、いわゆる蝶型の排出物パターンをつくり、放出された素材が空洞のまわりに不規則に配布されている。

3重のクレータの概観
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この構成は、射程に沿ったより多くの排出物に至る、右上から左下へのオブジェクトの動きによる、低い角度で地表がたたかれたことを示唆している。これらの放出された素材は、また、特に主イメージの右側と右下の近隣のクレータに広がった。主の視界の引き伸ばされたクレータの直接上の円形のクレータは、異なる種類の3重のクレータである。フロアの縁の一つと縁の一つの二つの小さなクレータは、重ね合せで分かるように異なる時にできた。それらの縁は、大きなクレータは小さなクレータがつくられる前にできたことを示して明確である。最も内部のクレータの縁の歪んだ形は、細長いクレータの形成に関連しているのかもしれない。

立体の視界
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この領域が古い証拠である重なり合うクレータの多数の他の例がこの場面に見られる。クレータの歴史に対する洞察同様、マーズエクスプレスとNASAの火星偵察軌道船(MRO)の分析は、クレータの中と平原に見られる層になった素材に37億年以上前の水の存在を示唆する、粘土鉱物のサインを検出した。

April 06, 2017   

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<火星の巨大洪水の残骸> 3月13日

火星谷の口で
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ヨーロッパ宇宙機関のマーズエクスプレスは、赤い惑星の最も大きな流出チャンネルネットワークの一つのイメージを捕えた。このカセイ谷(Kasei Valles:カセイ谷の名カセイは日本語の火星に由来しています。以降火星谷と表記します。)チャンネルシステムは、火山の領域タルシスの東、マリネリス峡谷システムの北に横たわるエチュス谷(Echus Chasma)の源の領域からクリュッセ平原(Chryse Planitia)の広大な平原の傾斜に向かって約3000キロメートルに広がっている。

ウスタークレータの概況
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タルシス領域の火山活動、地殻構造、崩壊、沈下の結合は、約36~34億年以前に引き続いて火星谷領域を溢れさせたエチュス谷からのいくつかの大規模な地下水の解放に至る。これらの古代の巨大洪水が、今日それらの地形に見られる印を残した。火星谷区域は、既に赤い惑星での14年間にマーズエクスプレスによって撮られたが、この2016年5月25日の新しいイメージはその口の右側の部分を捕えている。幅25キロメートルのインパクトクレータ、主カラーイメージの中央左のウスター・クレータ(Worcester Crater)は、巨大洪水の浸食の力に耐えるためにその最善を尽くした。一方、当初インパクトの間にクレータの内部から投げ出されたクレータを囲む素材の覆いの多くは浸食され、洪水の下流部分は生き残った。時がたつにつれて、これは、恐らく水のレベルまたは異なる洪水のエピソードの多様性を示唆する、下流の段階状の地形を持つ流線形の島全体の外見に結びついた。

火星谷の口の地形
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対照的に、隣接したクレータを囲む破片の覆いは無傷のまま残った。これは、このクレータをつくり出したインパクトが、大きな氾濫の後に起きたことを示唆している。更に、破片覆いの外見は地下の性質に関する物語を語っている。この例では、それは水または水の氷に富んだ氾濫原を指している。実際に、このパターンは「はねかえり」を思い起こさせる。このクレータから放出された破片は水に富んでおり容易に流れた。それが緩くなった時、破片は積もって残り、その周辺の塁壁に素材を押し上げた。

ウスター・クレータの透視図
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この透視図は、この塁壁のクローズアップと背景の浸食されたウスターの方向の関連するクレータからの一見を示している。主イメージの最北の部分(右、トップ)の大きなクレータは、ウスター・クレータとその近隣ほど奥深くまで貫通しているようには見えない。実際に、それは下の平原より少なくとも1キロメートル高い台地に位置している。それにも関わらず、通常、インパクトの時に氷のような弱い層が下に埋められたことを意味する小さな窪地がクレータの中央にある。詳細な検査は、また、下の平原にこぼれた部分を含めたクレータの噴出物の覆いの微かな外形を明らかにしている。

火星谷の河口の立体写真
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この排出物は、この視界の中の他のクレータにはないような、興味深い溝のパターンを示している。これは、おそらく、排出物がインパクトの間に与えられたエネルギー、クレータへの置かれ方、組成などに伴う、インパクト自体の性質の違いを示唆している。小さな樹状のチャンネルが台地のまわりの全てに見られ、これは、おそらく、多数の洪水の発現の間の、様々な洪水の大きさを示唆している。また、平原にいくつかの小さなクレータが見られる。これらは火星谷から来ている水の流れに反対する方向を指し、明るい色を持つ「尾」のように見える。これらのクレータは破滅的な氾濫の後起こったインパクトによってつくられ、それらの繊細な尾は、谷の上の方向、西に吹く風によってつくられた。それらの持ち上げられた縁は、例えば、クレータの直ぐ後ろのダスト、周囲の比較的邪魔されずに残った残骸、更なる露出、平原など、クレータの風の流れに影響した。この場面は赤い惑星の歴史の何億年にも及ぶ地質活動の記録を維持している。

Mar 02, 2017   

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<火星の北極の渦巻> 2月10日

火星の北極の氷冠の遠近の視界
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ヨーロッパ宇宙機関のマーズエクスプレスからの新しい合成は、赤い惑星の北極の氷冠とその特徴的な暗い渦巻くトラフを示している。

火星の北極の氷冠の概観
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この合成は、2004年~2010年に捕えられた32の個々の軌道の細片からつくられ、およそ100万平方キロメートルのエリアをカバーしている。この氷冠は永久に固定されているが、今、2017年早くのような冬の季節には、温度は、惑星の大気の約30%の二酸化炭素がメートルの厚さまで季節の層を加えて氷冠の上に積もるほどの十分な冷たさがある。暖かい夏の月の間には、大部分の二酸化炭素の氷は直接ガスに変わって大気に逃げ、水の氷の層を残す。強い風が時とともに氷冠を形づくる重要な役割を演じてきたと考えられる。

火星の北極の氷冠のカラー合成
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ひとつの特に際立った地形は、氷冠をほぼ二つに切る長さ500キロメートル、深さ2キロメートルの溝である。カズマ・ボレアーレ(Chasma Boreale:北の割れ目)として知られるこの峡谷は、氷とダストの渦巻の形の前につくられ、一見そのまわりにできた新しい氷の堆積として深く発達した比較的古い地形と考えられる。マーズエクスプレスとNASAの火星偵察軌道船(MRO)に搭載されたレーダー装置による地下の調査は、この氷冠が深さ約2キロメートルに及ぶ氷とダストの多くの個別の層から成ることを明らかにした。これは、その傾きと軌道が数十万年を超えて変化したように、惑星の気象がどのように変化したかの自然にとっての価値ある記録を提供している。

北の亀裂の透視図

Feb 02, 2017   

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<火星の古代の地殻構造のストレスの記録> 11月16日

アケロンフォッセの西
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巨大なオリンパス火山の約 1,000 キロメートル北の隆起とトラフのセットには、37~39億年前の火星のアケロンフォッセ領域で経験された激しい地殻構造上のストレスと重圧の記録を含んでいる。

概要マップ
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5月4日に欧州宇宙機関のマーズエクスプレスによって捕えられたこの場面は、周囲の平原より2キロメートル高くに立つ、長さ約800キロメートル、幅280キロメートルのエリアをカバーする古代の地形の孤立したブロック、アケロンフォッセの西に焦点を当てている。アケロン・フォッセは、火星最大の火山のホーム、タルシスの隆起から南に約 1,000 キロメートルに放射する破砕のネットワークの一部である。この火山が形成されたとき、タルシス領域は火星の中奥深くから上がってくる熱い素材で満たされ、広いエリアに亘って弱いラインに沿って地殻を引き延ばし引き裂いた。このプロセスは、地溝(graben)の両側に持ち上げられたブロック、地塁(horst)の断層によって囲まれた一連の窪地、古典的な「地塁と地溝」システムに上昇を与えた。アケロン・フォッセの種々の場所で見られるクロスカッティング断層のパターンは、この領域の複雑な歴史を示唆し、時とともに異なる方向からのストレスを経験したことを表している。

地溝(graben)と地塁(horst)については こちら を参照。

アケロン・フォッセ西の地形
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全ての領域を通して広がる、支配的な、曲がった隆起の一部がこの場面の左下に見られる。それは、恐らく、長い後に地溝自体が形成した、より最近の冷たい気象条件で堆積した、岩を多く含む氷河からの、その後それに沿って流れた素材で満たされた古代の地溝かもしれない。


アケロン・フォッセの遠近の視界
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アケロン・フォッセは、地球の大陸亀裂システムに例えられてきた。地球の主要な地割れ地帯は、分断されている中央海嶺のような、プレートテクトニクスに関係している。火星では、亀裂は、深い地下の熱の進化とともに、地殻の一般的な進化の研究にとって重要である。

アケロン・フォッセの3次元の視界
 

Nov 02, 2016   

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<火星の Mawrth 谷の合成> 10月4日

地表に流れる古代の水によって彫られた Mawrth 谷は、火星で最も注目に値する流出チャンネルの一つである。かつて潜在的に居住可能な場所であったこの谷は、南の高地と北の低地の間の境界領域の主な地形の一つである。 Mawrth 谷は、このイメージの、谷を囲む 330,000 平方キロメートルのエリアの鳥瞰図の中央を占めている。この谷は、長さ 600 キロメートル、深さ2キロメートル以下、火星で最も大きな谷の一つである。かつては、それを通して、イメージの右下の高い領域から、左上の北の平原の中に膨大な量の水が通った。そのコースに沿って横たわる、明るいトーンの水和ケイ酸塩(風化した粘土鉱物)の大きな露出は注目に値する地形の一つである。火星の水和ケイ酸塩(phyllosilicate)は、液体の水の過去の存在の証拠であり、また、居住可能な環境が36億年前までこの惑星に存在したかもしれないという可能性を示している。古代の火山灰の残骸である暗く覆われた岩が粘土の多くを覆い、岩の古代の微生物の跡を放射線と浸食から保護したかもしれない。このことは、地質学者と宇宙生物学者にとって、この谷を最も興味深い領域の一つにしている。それは、欧州宇宙機関とロシアの共同のミッションである、かっての火星での生命の存在を追うエクソマーズ2020の着陸地点候補の一つである。その名前は、ウェールズの言葉で火星“Mawrth”と、ラテン語の谷“Vallis”が語源である。この合成は、2003年後半から火星を周っている、欧州宇宙機関のマーズエクスプレス宇宙船の高解像度ステレオカメラでとられた九つの個別のイメージを使ってつくられた。

Sept 26, 2016

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<火星の洪水の足跡> 3月1日

アルダ谷
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欧州宇宙機関のマーズエクスプレスによって捕えられるこの火星の場面で、水が、様々な方向にその印を残した。

概要マップ
 

 

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この領域は古代の大きなインパクト盆地の西の縁に横たわっている。このイメージは、ホールデンクレータ(Holden Crater)の260キロメートル北、ラドン谷(Ladon Valles)近くの樹状の排水システム、アルダ谷(Arda Valles)の西の部分を示している。かつて膨大な水量が南の高地から流れ、ラドン谷を刻み、このイメージに見られる大きなラドン湾になった。この図は谷(左)の印象的な樹状の排水路のパターンを示している。

アルダ谷の地形
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主イメージの中央には、その足元の幅 8.5 キロメートルインパクトクレータとともに大きなマウンドが見られる。このマウンドは、恐らく古いインパクト盆地の残骸であるが、扇型の堆積をつくる周囲の流れによって運ばれた堆積物によっても影響を受けたのかも知れない。イメージの右中央の大きな幅25キロメートルインパクトクレータは、また、後に、クレータフロアに見られる混乱した地形に崩壊した厚い泥の堆積物によって満たされた。クレータ縁のこの混乱した節は、恐らく、埋めている堆積物の以前のレベルを示している。

アルダ谷の透視図
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この場面の右上の地表は、また、恐らく、かつてこのエリアに遍在した、地下の氷の消失および水のゆっくりした蒸発に関係する、いくつかの巨大な多角形に崩れた。大きな湾の滑らかなフロアの中に見られる同心の破砕のような地形は、湾を埋める堆積物の膨大な量の圧縮から生じた地表で、恐らくストレスにも関連している。いくつかの破砕が、特にこの視界に明らかな滑らかな湾のフロアの中央のクレータに加わって見られる。それらは、沈下のためのストレスの後の徴候または地表の素材の圧縮かもしれない。最終的に、イメージの中央下では、この場面の下の、樹状のチャンネルの終端方向のクレータの上に、明るいトーンの層になった堆積が確認された。これらは水の存在でつくられることが知られている粘土鉱物(clay mineral)である。

アルダ谷の3次元の視界

 

 

Feb 18, 2016   

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