軌道船 (赤はヨーロッパ宇宙機関) 探査車(ローバー)
オデッセイ エクスプレス リコネッサンス メイブン エクソマーズ キュリオシティ パーサビアランス

  2025年12月

このページの対象としている探査機、その名称などは、上のイメージ(現在活動中の軌道周回機、地上探査車)からご覧ください。火星探査に関するその他の経緯は トップページ から、また、 'Perseverance' の読みについては こちら をご覧ください。

   12月11日(木):   火星のダストデビル、嵐で電気火花を検出 (パーサビアランス)

<イメージの説明>: 2025年9月6日にNASAのパーサビアランス探査車のナビゲーションカメラで撮られたこの短いビデオに、ジェゼロクレータの縁付近に三つの火星のダストデビルが映し出されている。ローバーのスーパーカムのマイクは、以前ダストデビルが通過した際に音を録音していた。

この探査車は、赤い惑星のミニ竜巻の中で電気放電とそれに伴う衝撃波が発生するという長らく疑われていた現象を確認した。

探査車は、火星のダストデビルにおける電気放電(火花)やミニソニックブームの音を記録している。長らく理論化されてきたこの現象は、ローバーのSuperCamマイクで録音された音と電磁記録によって確認された。この発見は11月26日に学術誌『ネイチャー』に掲載され、火星の大気化学、気象、居住可能性に示唆を与え、将来の火星へのロボットおよび有人ミッションの設計に役立つ可能性がある。

赤い惑星で頻繁に発生するダストデビルは、上昇し回転する暖かい大気の柱から発生する。惑星の表面近くの大気は暖かい地面と接触することによって熱せられ、上空の密度が高く冷たい大気を通して上昇し回転し始める。大気が上がると、回転するアイススケーターが腕を体に近づけるように速度が増す。大気が流れ込むとダストも巻き込まれダストデビルが誕生する。

SuperCamは、2021年の火星日(ソル)から始まったミッション期間中に55件の異なる電気現象を記録しており、ダストデビルがローバーの真上を通過したときは16回記録されている。

パーサビアランスが着陸する数十年前、科学者達は、火星のダスト・デビルの中で、渦巻き擦れ合う微小なダストの粒の摩擦が、やがて電気のアークを生み出すほどの電荷を生み出せるだろうと理論化していた。これは、例えば、靴下を履いた人がカーペットの上を歩き、金属製のドアノブに触れて火花が散る現象のような、トリボ・エレクトリック効果(triboelectric effect)と呼ばれる。実際に、それは、火星のダストデビルが出す放電量とほぼ同じレベルである。

「砂や雪の粒子の摩擦電荷は地球上、特に砂漠地域でよく記録されているが、実際の電気放電を引き起こすことは稀である」と、フランスの惑星科学者でPerseverance科学チームのメンバーであるバティスト・シード氏は述べている。「火星では薄い大気がこの現象をより起こりやすくし、火花を発生させるために必要な電荷の量は地球の近地大気よりもはるかに少ないのです。」

パーサビアランスのスーパーカム機器は、レーザーが岩石を照射する際にその音を分析するためのマイクロフォンを搭載しているが、チームは風の音や火星のダストデビルの初の音声記録も撮影している。科学者達は、この衛星が大気中の電磁的の乱れ(静電気)や電気放電の音を拾うことができることを知っていた。しかし、そのような出来事が頻繁に起こるのか、あるいはローバーが十分に近づいて記録できるのかは分かっていなかった。その後、ミッション中に蓄積されたデータを評価し始め、電気活動の特徴的な音を見つけるのに時間はかからなかった。

<右下のイメージの説明>: パーサビアランスのスーパーカムマイクは、2024年10月12日に、火星探査車上空をダストデビルが通過した際の電気放電音のこの録音を捉らえた。三つのパチパチという音が、ダストデビルの前方や後ろの壁の音の合間に聞こえる。

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Dec 03, 2025


   12月9日(火):   NASAの軌道船、長年続く火星の謎に新たな光を当てる (MRO)

NASAの火星偵察軌道船(MRO)は、赤い惑星の南極に何千フィートもの氷の下に埋もれた謎の構造について再び調査し、新たな疑問を投げかけた。最近の研究では、革新的なレーダー技術を用いて得られたデータから、火星の地下の湖と疑われる地域は、実際には、岩石やダストの層である可能性が高いと結論づけている。

2018年に発見されたこの疑われる湖は、太陽系の生命と密接に結びついている水の科学活動の活発な動きを引き起こした。最新の発見では、この特徴は火星の表面の下にある湖ではないことを示唆しているが、同じレーダー技術を火星の他の地下資源の調査にも応用でき、将来の探査者達を支援する可能性を示唆している。

この論文は11月17日にGeophysical Research Lettersに掲載され、MROの科学者、ギャレス・モーガンとタン・プツィグの2人が主導した。

この観測は、MROによって、宇宙船を120度回転させる特別な操作で行われた。これによってSHARADの出力が向上し、レーダー信号が地下深くまで届き、地下の画像をより鮮明に提供できるようになる。これらの「非常に大きなロール」は非常に効果的であることが証明されており、科学者達は、これまで観測された埋もれた氷が存在する可能性のある場所で利用することを強く期待している。

この図は、ヨーロッパ宇宙機関のマーズエクスプレスのミッションの科学者達が、2018年に、地下の湖と解釈した信号を検出したおおよそのエリアを示している。赤い線はNASAの火星偵察軌道機の軌道を示しており、この軌道は真上および隣接する地域の上空を飛行した。

モーガン、プツィグ達は、埋もれた湖があると疑われる地域を観察しようと何度も試みたが、失敗した。その後、科学者達は、ミッションを主導するNASAジェット推進研究所の宇宙船運用チームと協力し、非常に大きな回転能力を開発した。

レーダーのアンテナがMROの後方にあることから、軌道船の船体が視界を遮り、機器の感度を低下させる。多くの作業の末、宇宙船を製造し運用を支援するジェット推進研究所とロッキード・マーティンの技術者達は、120度のロール指令を開発した。これは宇宙船の安全を守るために綿密な計画が必要である。これによって、SHARADの信号を、より多く表面に向けることができる。

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<参考>: 2018年、ヨーロッパ宇宙機関のマーズエクスプレスが火星に到達して間もなく、チームは、「火星の巨大な湖の存在の検出」を発表した。NASAによる長期の探査の結果でさえ水の存在は確認されていなかったので、当時から、多くの疑念が持たれたままだった。

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Nov 25, 2025


   12月8日:   火星の氷河期が残したもの (マーズエクスプレス)

火星の赤道から北極に向かって上っていくと、深い谷、斑点のあるクレータ、古代氷河期の痕跡が特徴の地域内の一連の興味深い傷であるコロエ・フォッセ(Coloe Fossae)が見つかる。

氷河期を経験した惑星は地球だけではない。過去25億年の間に地球を襲ったものは一握りであり、約2万年前にピークに達した最新のものでは、地球の平均気温は現在より最大8°C低い、約7〜10°Cまで低下した。

コロ・フォッセ(Coloe Fossae)の地図
氷河期は、最近の人為的な地球温暖化とはまったく別の現象である。これらは、主に太陽の周りの惑星の経路の変化とその回転軸のぐらつきによって引き起こされる古代の地質学的リズムの一部である。氷河期には、氷が氷河や氷床の形でより広範囲に広がり、気温の変動により氷の流れが世界中で前進したり後退したりする。

他の惑星でも以前の氷河期の明らかな兆候が見られ、それらが現代の火星に与えた影響は、ヨーロッパ宇宙機関のマーズエクスプレスの高解像度ステレオカメラからのこれらの新しいイメージに明らかである。

イメージを斜めに切り裂くほぼ平行な線は、地面の塊が交互に落ちることによって作成された特徴であるコロ・フォッサ(Coloe Fossae)エとして知られている。ここには、宇宙の岩石が地表に衝突して形成された、大きな、小さな、重なり合った、不規則な、集団化された、古い、より新しい、明確な形の、侵食によって滑らかになった等々の、多くのクレータが見られる。谷やクレータの床には、以前の火星の氷河期に物質がどこに流れていたかを示す渦巻く線のパターンという、エキサイティングなものがある。

火星を横断する氷の流れ
これらのパターンは、赤い惑星の過去の気候を示唆している。それらは、より技術的には、線状の谷の盛り土(谷の中)または同心円状のクレータの盛り土(クレーターの中)として知られている。それらは、氷の破片が火星の表面をゆっくりと流れ、地球上で見られる氷河を彷彿とさせるように形成され、その上に厚い岩の層が上がっていた。

しかし、この地域は北緯39度に位置し、火星の北極(北緯90度)とは遠く離れている。ここに氷はどのように堆積したのだろう?

その答えは、古代の氷河期の、氷河の前進と後退の鼓動にある。現在は火星は乾燥しているが、その歴史を通じて、その軸の傾きの変化によって引き起こされて、暖かさと寒さ、凍結と融解の交互の時期を経験してきた。

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Nov 12, 2025



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