<イメージの説明>: 2025年9月6日にNASAのパーサビアランス探査車のナビゲーションカメラで撮られたこの短いビデオに、ジェゼロクレータの縁付近に三つの火星のダストデビルが映し出されている。ローバーのスーパーカムのマイクは、以前ダストデビルが通過した際に音を録音していた。
この探査車は、赤い惑星のミニ竜巻の中で電気放電とそれに伴う衝撃波が発生するという長らく疑われていた現象を確認した。
探査車は、火星のダストデビルにおける電気放電(火花)やミニソニックブームの音を記録している。長らく理論化されてきたこの現象は、ローバーのSuperCamマイクで録音された音と電磁記録によって確認された。この発見は11月26日に学術誌『ネイチャー』に掲載され、火星の大気化学、気象、居住可能性に示唆を与え、将来の火星へのロボットおよび有人ミッションの設計に役立つ可能性がある。
赤い惑星で頻繁に発生するダストデビルは、上昇し回転する暖かい大気の柱から発生する。惑星の表面近くの大気は暖かい地面と接触することによって熱せられ、上空の密度が高く冷たい大気を通して上昇し回転し始める。大気が上がると、回転するアイススケーターが腕を体に近づけるように速度が増す。大気が流れ込むとダストも巻き込まれダストデビルが誕生する。
SuperCamは、2021年の火星日(ソル)から始まったミッション期間中に55件の異なる電気現象を記録しており、ダストデビルがローバーの真上を通過したときは16回記録されている。
パーサビアランスが着陸する数十年前、科学者達は、火星のダスト・デビルの中で、渦巻き擦れ合う微小なダストの粒の摩擦が、やがて電気のアークを生み出すほどの電荷を生み出せるだろうと理論化していた。これは、例えば、靴下を履いた人がカーペットの上を歩き、金属製のドアノブに触れて火花が散る現象のような、トリボ・エレクトリック効果(triboelectric effect)と呼ばれる。実際に、それは、火星のダストデビルが出す放電量とほぼ同じレベルである。
「砂や雪の粒子の摩擦電荷は地球上、特に砂漠地域でよく記録されているが、実際の電気放電を引き起こすことは稀である」と、フランスの惑星科学者でPerseverance科学チームのメンバーであるバティスト・シード氏は述べている。「火星では薄い大気がこの現象をより起こりやすくし、火花を発生させるために必要な電荷の量は地球の近地大気よりもはるかに少ないのです。」
パーサビアランスのスーパーカム機器は、レーザーが岩石を照射する際にその音を分析するためのマイクロフォンを搭載しているが、チームは風の音や火星のダストデビルの初の音声記録も撮影している。科学者達は、この衛星が大気中の電磁的の乱れ(静電気)や電気放電の音を拾うことができることを知っていた。しかし、そのような出来事が頻繁に起こるのか、あるいはローバーが十分に近づいて記録できるのかは分かっていなかった。その後、ミッション中に蓄積されたデータを評価し始め、電気活動の特徴的な音を見つけるのに時間はかからなかった。
<右下のイメージの説明>: パーサビアランスのスーパーカムマイクは、2024年10月12日に、火星探査車上空をダストデビルが通過した際の電気放電音のこの録音を捉らえた。三つのパチパチという音が、ダストデビルの前方や後ろの壁の音の合間に聞こえる。
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