木星探査宇宙船ガリレオ記念

このページでは1989年に打ち上げられ、10年を超える期間木星とそのシステムを探索し、2003年9月にその生涯を閉じた木星探査宇宙船ガリレオを記念して、活動の一端を「NASAの記事を引用して」まとめました。

ガリレオの活動の概要
ミッション期  間活 動 の 概 要
打ち上げ1989スペスシャトルアトランティスから宇宙に放たれ、1995年末に木星に到着
準備期間1995.12~1996.01軌道調整等観測のための準備
当初計画1996.01~1997.12木星を中心に、ガリレオ衛星、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの調査
一次拡張1997.12~1999.01主にエウロパの大洋の存在を中心に調査
二次拡張1999.05~1999.12主に木星とイオの磁気圏(プラズマトーラス)の調査
三次拡張2000.01~2002.12イオを中心に補足調査
最終活動2003.9木星の大気に突入、木星の雲の調査

  1. 木   星       

  2. 木星の衛星 ガリレオ衛星(イオ、エウロパ、ガニメデとカリスト、その他)

経     緯

ガリレオ宇宙船は、1989年10月に打上げられ、1995年12月7日に木星に到着した。ガリレオはスペースシャトル・アトランティスに積み込んで打上げられ、同年10月18日にその軌道上で放たれた。ガリレオの初期のミッションは1996年から1997年の間に完了し、木星とともにその衛星ガニメデ、カリスト、イオ、エウロパなどの観測も行った。初期のミッションを終えたガリレオは、1998年から1999年にかけてガリレオ・エウロパ・ミッションと呼ばれる2年間の拡張ミッションに入り、水の存在が確実視されているエウロパの調査が進められた。1999年以降、木星の磁気圏のイオへの影響などイオを中心に更なる調査を行われた。この磁気圏(プラズマトーラス)の調査では、ガリレオの機器に損傷を与え機能しなくなるのではないかと危惧されたが、幸いも軽傷で済み更なる調査が続けられた。打上げ後13年を過ぎた2002年末には既に搭載された燃料をほとんど使い果たし、NASAでは2003年9月に木星の大気に突入して最後の観測をする計画を立て、残り少ない燃料を使ってその軌道に乗せた。なお、ガリレオプロジェクトチームは2003年3月に解散された。



<ガリレオミッションのハイライト>
1999.1.18 発表の記事から

GALILEO TRAJECTORY この図は、NASAのガリレオミッションの、1989年10月の打上げから1995年12月の木星到着までの、太陽を中心とした飛行経路とその後の軌道を表している。イメージの左半分の中の小さなイメージは、ミッションの中で起きた特別な出来事を表したものである。右のイメージは、ガリレオの一次画像カメラのターゲット、すなわち、木星、四つの小さな内側の衛星、木星のリング、及び、四つの大きな「ガリレオ」衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)を示している。

スペースシャトルアトランティスから打ち出されたガリレオは、木星に向かって、長く、しかし、生産的な巡航の途についた。宇宙船は木星に到達するまでのエネルギーを増強するために、金星に一度、地球に二度フライバイした。小惑星のベルトを通る二回のパスでは、初めて小惑星ガスプラ(Gaspra)とイダ(Ida)に接近して観測を行い、また、小惑星イダの月ダクティル(Dactyl)の初めてのイメージを提供した。宇宙船が木星に近づいたとき、彗星シューメーカレヴィ9(Shoemaker-Levy 9) が木星に衝突するという出来事が起きた。この衝突は木星の夜の側に起き、地球の観察者達からは直接観測できなかったので、ガリレオは木星の裏側に回り、宇宙船の機器が衝突のフラッシュを見ることが出来るように配置された。木星への到着の6ヶ月前に宇宙船はプローブ(探査器)と軌道衛星の二つに分離された。プローブは木星の大気に入り軌道衛星が上層大気の調査に関するデータを中継した。軌道衛星は減速のためにイオに接近して飛び木星システムの軌道の中に入った。

ガリレオ宇宙船は1996年6月から1997年12月までの計画通りのミッションの間に11回木星を周った。四つのガリレオ衛星については、ガニメデに4回、エウロパに3回、カリストに3回のフライバイが行われ、木星システムについての多くの新しいデータと知識を供給した。その後「ガリレオ エウロパ ミッション(GEM)」と呼ばれる二年間の調査の延長が行われた。エウロパは延長1年目の基本的な焦点となり、また、終期にはイオへの2回のフライバイが計画された。イオの軌道近くの木星の危険な放射環境は、ミッションの初期フェーズのイオへのフライバイでも宇宙船への影響が懸念された。

木星の観測は気象現象とオーロラを理解することに焦点を合わせた。小さな内側の衛星、アドラステア(Adrastea)、メティス(Metis)、アマルセア(Amalthea)、テーベ(Thebe)、さらには、かすかな木星のリングシステムも調査された。イオの観測では、非常に熱い火山の噴気孔を明らかにし、火山の噴煙を監視し、数カ月の短いスケールで変化するドラマチックな大規模な地表の変貌を実証した。地質上の種々のエウロパイメージは、大洋が現在もある、あるいは、氷の地表の下にかって存在したかもしれないことを暗示している。ガニメデについては、ガリレオによる良品質の高解像度画像が、構造上の力が主要な地質上の特徴を形作っていることを示した。カリストは興味深い驚きを提供した。以前には、全てのスケールで密度濃くクレータされていると考えられたが、小さなクレータは稀で、その地表は星全体が暗い物質の層で覆われているということが分かった。



<1998年のガリレオの成果>
ガリレオは1998年に多くの発見をもたらした。
( Galileo Provides Many Discoveries In '98 )

二年間の拡張ミッションの前半を収束させ、また、ガリレオエウロパミッションの全ての発見を維持し続けるためには、1998年は厳しい年であった。ガリレオエウロパミッションでは、科学者達が木星とその月の疑問の扉を開けるのに協力して、一次ミッションに続いて多くの写真とデータを地球へ送り返してきた。

1998年の追加のエウロパ フライバイ シリーズでは、氷の月の地下に液体の大洋があるという仮定を支持する情報を提供した。1997年12月の、最接近したエウロパ フライバイからのガリレオの写真が公にされた去る3月には、科学コミュニティ、メディア、公衆は心を奪われた。エウロパの上僅か200kmからとられたイメージでは、粗く、ラッシュモア山(Mt.Rushmore)と同程度の高さで、エウロパの上に広くスカラップ(縁取り)された氷の断崖や氷の破砕をも明らかにした。同様に示されたものには Pwyll インパクトクレータと Conamara カオス領域があり、また、地表の氷のプレートが分離し壊されて動き回ったと思われる跡があった。

Callistcorethumb エウロパは大洋を持つ可能性のある唯一の木星の月ではないかも知れない。ガリレオの磁力計機器からのデータは、カリストの地表の下に液体の大洋があるという仮定を支持する証拠を明らかにした。このデータでは、ガリレオのフライバイの間に、カリストの地表近くの外殻を流れる電流に木星の磁界に観察された変化が引き起こされていた。電導性の殻を作る可能性のある候補として塩の液体の層が示唆されてきた。科学者達はガリレオからの新しいデータに基づいて、カリストの内部構造に関するアイデアを考え直している。以前のデータでは、カリストの内部は完全には層別されていないことを示していたが、カリストが示した新しい情報では、劇的な変化ではないが完全に一定ではない内部を持っている。

他方、イオ、ガニメデ、エウロパは、分離された層によって区分される構造を持っている。ガリレオのデータは、カリストが、イオ、ガニメデ、エウロパよりも、引力による圧力と後に起きた熱による影響をあまり受けなかったのかもしれないということを示している。

PIA01627thumb 新しいガリレオの写真は、カリフォルニアにあるサンアンドレアスと同程度の長さのエウロパの断層の大写しを示した。 Astypalaea リネアと呼ばれるストライキ-スリップ断層があり、それは、トラフィックの二つの相対するレーンに似た、互いに水平に動く二つの硬い表面のブロックを持っていることを意味している。ガリレオのイメージは約50kmの動きが断層に沿って起こったことを示している。ガリレオの写真は断層の長さ290kmの部分を撮り、科学者達は約810kmの全長を推定している。

木星の火の月イオは科学者達が持っていた知識よりも更に熱いということが分かった。ガリレオのカメラは、イオで、多くの火山の噴気孔のイメージを撮った。その溶岩は太陽系のあらゆる惑星の知られた地表温度より熱く、ピジャンパテラを呼ばれるこれらの火山の噴気孔の一つでは、溶岩の温度は絶対温度2,000度はあるかもしれない。数十億年間の地球でこのような高い温度が発生したことは知られていない。ガリレオプロジェクト科学者 Torrence Johnson 博士は、「このデータは高温爆発がイオの火山のプロセスの基礎であり普遍的であることを示している」と言った。

太陽系におけるあらゆる惑星の中で最も大きい月、ガニメデの最近のイメージでは、インパクトクレータに風変わりな台座、暗い噴出物のハロー、構造上の活動に関する証拠と氷の火山の流れの印を暴いた。1994年の木星に対するシューメーカレヴィ彗星の衝突と似たクレータチェーンが、分裂したすい星からのインパクトによって引き起こされたように表れていた。

PIA01645thumb 科学者達は、今では、木星のリングの起源についてより多くを知っており、最近のガリレオイメージに感謝している。巨大な惑星にうず巻くリングシステムは、惑星間の小惑星が木星の四つの小さな内側の月の中に粉々になって飛び散り、散らされたダストによって形成されている。また、以前には一つと考えられていた最も外側のリングは二つであり、一つは他の中に埋め込まれたものであることが発見された。

ガリレオと、ハッブル宇宙望遠鏡、及び、地上の観測によって集められた新しい情報では、1998年に、木星の巨大な渦巻「ホワイトオーバル」の嵐が地球と同程度のより大きなホワイトオーバルに合体されたことを示した。イオのオーロラのカラフルなイメージも公表された。

<参考:地名等のカナ表記について>

木星やその衛星達の地形や地域の名前はどのようにして付けられたのでしょうか?
木星には2003年3月末までに発見された衛星(月)が52ありますが、中でも望遠鏡を発明したガリレオ・ガリレイが1610年に発見し、後に同時代の天文学者シモン・マリウスによって「ガリレオ衛星」と名付けられた四つの大きな月が有名です。ガリレオ衛星の名称は木星(Jupiter)の名の由来であるジュピター神の愛妻、情人などの名をとってガニメデ、イオ、エウロパ、カリストの名がつけられました。かってのボイジャー1,2号の探査の後は、国際天文学連合(IAU)が地域の名を選定することになりました。

木星に限らず太陽系惑星、衛星の地形や地域の名称にはいろいろな国の言葉が用いられています。これらの言葉のカナ表記には少々面倒な問題を伴います。
例えば、ガニメデの記述の中に Regio と Sulcas という言葉が出てきます。
“Regio”は英語の Region(地域、領域などの意)ですが、 Regio と書かれた名称はカナでどのように記すべきでしょうか。同じ綴りでも国によって、言語によって発音が異なります。 Regio は、あるときにはレギオと呼ばれ、ある時はリージョと書かれます。またラテン系の読みであればレヒオになるのでしょうか。
“Sulcas”は溝を表す言葉で“Sulci”とも言われます。英語では Salcate に当たるのでしょう。スペイン語(ラテン系)では中南米を含む古語、方言として Sulco として出てきます。 Sulcas をカナで書くとき、英語読みをすれば“サルカス”ですが、“スルキ”または“スルカス”と書かれた書物もあります。
このように「綴り」は標準的に決められていますが「読み」は人によってさまざまです。他の書物などを参照される場合、表記方法が異なることがありますのでご注意ください。特にこのページでは新たに発見され、命名された地名が沢山出てきますので「固有の名称」の多くは原名を付して記載するようにしています。
なお、同種の言葉として“モン(山)”“パテラ(皿状台地)”“リネア(線状模様)”“ファクラ(暗い地域)”“フレクウス(波型地形)”などがあります。



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