ジュピター(木星)

木星は太陽系最大の惑星であり、地球や火星など地球型惑星と異なる性質を持っている。木星はそれより遠い土星、海王星など他の太陽系惑星と同様、水素やヘリュームを主体とするガスで覆われている。我々が天体望遠鏡や探査機で直接見ているものは木星表面のガスの姿でしかなく、雲の内部の様子は電波や熱放射の観察など我々の目では直接見ることのできない媒体を通してしか知ることができない。このサイトはイメージをご紹介することを目的としているので、木星自身についてはごく表面のことしかご紹介できないかも知れない。以下、これを前提に今後掲載するNASAの記事を読む上で支障のない程度の科学的な解説を加えよう。
木星の大気は外層部から中心に向かってその組成、温度などに何段階もの大きな変化がある。また、木星表面は地球上からの観察でも、赤道に沿って表面の縞模様と赤、白、茶などの斑(長円形の渦)がはっきりと見え、他の惑星に比して多彩である。規則的に配列されている10本ほどの明るい帯と暗い縞は、おそらく大変高速で回転している自転に関連して、赤道に平行して吹く恒常的な大気の流れがあることを示唆しており、多彩な斑は大気中の異なる高度に位置する多様な雲の層に起きている嵐によるものと考えられる。また、木星で興味深いことの他の一つに、木星の引力が地球の3倍もあり上層部の温度も低いので、最も軽い分子さえも木星の大気中に捕捉されており、木星大気の組成は約45億年前の原始太陽系そのままではないかと思われることがある。つまり木星の大気を観測することによって、原始太陽系の状況が類推できるというものである。
このように、現段階では、木星の探査は外部からの手探りの状態にあるが、その雲や大気の観測を通して内部を解析する努力が続けられている。



<木星の北半球>

初めに木星の大きな特徴の一つである長円形の渦、赤斑(レッド・スポット)と白斑(ホワイトオーバル)に焦点を当てて見る。木星には多くの赤斑、白斑や茶斑が見られる。その中でも大赤斑(GRP:グレート・レッド・スポット)は南緯20度付近に見られる巨大な赤い楕円形の渦で300年を超える寿命を持ち、その大きさは地球が三つも入る大きさである。右のイメージは木星の北半球を写したもので、大きな斑はないが、緯度に沿って流れる縞模様、一部の赤斑や白斑など木星に共通する外観がここにも現われている。木星を見る手始めに、より広い範囲を右のイメージで眺めて置こう。

この写真は木星の北緯10~50度のモザイクである。木星の大気の循環は赤道から極緯度に亙って東方向と西方向の交互のジェットによって支配されている。部分におけるこれらジェットの方向と速度がこのモザイクに見られる雲の色と模様を決定する。また、視界の中には、大きな白い卵型、明るい場所、暗い場所、互いに作用し合う渦、荒れ狂い混とんとしたシステムを含む、いくつかの他の普遍的な木星の雲の姿がある。モザイクの上半分にある二つの相互に作用し合った渦巻きの各々の南北方向の大きさはおおよそ3,500kmである。人間の目での木星の映り方と似せてモザイクを創るため、このモザイクは紫 (410nm)と近赤外線 (756nm) フィルタイメージとを結合している。

このイメージでは上が北である。イメージは北に向かって縮められた球体で写されており、最小解像度はキロメータサイズである。このイメージは、ガリレオ宇宙船のソリッドステート・イメージング・システム(CCD)によって140万kmの距離から1997年4月3日に撮られた。


< 大 赤 斑 >

大赤斑は1664年イギリスの天文学者によって発見された。大赤斑はグレート・レッド・スポット(great red spot)と呼ばれ、南緯20度付近にある木星での代表的な斑である。他の斑が移動したり消滅したりするのに対して比較的長い間一定の場所に残っている。しかし18世紀の終わり頃、約50年に亙って観測されなかったという事実もある。大赤斑の成因についてはまだはっきりと分かっていない。

左の木星の大赤斑は、ガリレオ宇宙船によって撮られた二つのイメージのモザイクである。イメージは二つのカメラポジションそれぞれで、紫と近赤外線の二つのフィルタを使って創られた。 大赤斑は木星の大気の嵐であり、少なくとも300年は経っている。風は反時計回りに時速約400kmで大赤斑を回っている。嵐の大きさは南北方向で一つの地球の直径(約13,000km)より大きく、東西方向では二つの地球の直径より大きい。このイメージは1996年6月26日にガリレオ宇宙船によって撮られた。

右の木星の大赤斑の概括的なカラーイメージは、ガリレオ・イメージング・システムによって1996年6月26日に撮影された。ガリレオイメージングシステムの波長に対する感度は人の目を凌いでいるので、このイメージはガリレオ宇宙船の位置で人の目で見たものの近似に過ぎない。人間の目の赤をシミュレートするために近赤外線フィルター (756nm) イメージが、青のために紫フィルター (410nm) が使われた。最終的には緑をシミュレートするために2/3バイオレットと1/3近赤外線が結合された。結果のイメージは望遠鏡を通して木星を見たときに見られる色に近いが、精度はそれより約100倍鮮明である。


<寿命の長い白いオーバル>

このタイプのオーバル(卵形または長円形の意)の雲のシステムは、綺麗に作られたオーバルの間に見られる痩せた渦巻きの気球のように、混乱した旋風のシステムとしてしばしば互いに連携している。このシステムは、惑星の南緯30度、西経100度付近に中央があり、その中心をほぼ時計方向に回転している。モザイクイメージの上半分にある痩せた渦巻きのオーバルは、1930年代に大赤斑の南に作られた寿命の長い三つの白いオーバルの中の二つであり、大赤斑のように、反時計回りに回転している。最も左の白いオーバルの東から西への長さは9,000km(地球の直径は12,756km)である。白いオーバルは互いに関連し合いながら経度方向に漂っている。

南の、より小さなオーバルとそれに伴う旋風システムは、より大きなオーバルと比較して一日あたり約0.4度西方向へ動いている。これらの二つの嵐のシステム間の相互作用は、南の部分に高く薄い積雲に似た雲を生み出している。

このモザイクは、木星が人の目に写るであろうモザイクに似せて作るため、紫 (410nm) と近赤外線連続フィルタ (756nm) イメージが結びつけられた。彩色の違いは木星大気における化学的なトレースの構成と豊富さによるものである。

モザイクの上が北。最小解像度は10km程度。このイメージは1997年2月19日に、ガリレオ宇宙船に積み込まれたソリッドステートイメージング(CCD)システムによって110万kmの距離で撮られた。

左のモザイク擬似カラーイメージは、雲の高さと厚さの多様さを示すために、ガリレオイメージングカメラの赤、緑、青の三つの近赤外線波長 (756nm, 727nm, 889nm) を使っている。明るい青の雲は高く薄く、赤い雲は深く、白い雲は高く厚い。白いオーバルの上の雲と“もや”は高く、木星の成層圏に広がっている。嵐のところには高いもやがない。暗い紫では鮮明な深い大気に重なった高いもやが現われている。ガリレオは木星における雲の層の区分を示した最初の宇宙船である。

モザイクは上が北。惑星の縁(へり)がモザイクの右の端に沿って走っている。雲のパターンは縁に近いので短く表れている。このイメージは1997年2月19日に、ガリレオ宇宙船に積み込まれたソリッドステートイメージング(CCD)システムによって110万kmの距離から撮られた。


<大赤斑近くの荒れ狂った地域>

大赤斑の西の嵐の地域のカラーモザイク(左)と疑似カラーモザイク(右下)。
大赤斑はモザイクの右手の惑星の縁(へり)にある。大赤斑の西の地域(左)は大きく表現されており嵐は見る中では急速な変化の形をしている。嵐は高緯度の東方のジェットが大赤斑によって北方にねじ曲げられ西方向のジェットと衝突した結果である。大赤斑に最も近い大きな渦は明るく、そこでは対流と雲の構成が活性的であることを示唆している。

上段に示した真の色のモザイクは人の目に近似して作るために紫(410nm)と近赤外線連続体フィルタ(756nm)イメージが結合された。色の違いは木星大気の化学的な構成要素と量によるものである。 下段に示した疑似カラーのモザイクは、雲の高さと厚さの多様さを示すために、ガリレオ宇宙船のイメージングカメラの、目には見えない三つの近赤外線波長(赤、緑、青に展開する 756nm, 727nm, 889nm)を使っている。明るい青の雲は高く薄く、赤い雲は深く、白い雲は高く厚い。紫に似た色ははっきりした深い大気に横たわっている高いもやを表している。ガリレオは木星の雲の層を弁別した最初の宇宙船である。

モザイクは惑星の南中央、緯度16.5度、経度西85度に中心を置いている。大赤斑の北から南の長さは約11,000kmである。写真は北が上。使われたイメージはガリレオのソリッド・ステート・イメージングシステム(SSI)によって1,200万kmの距離で1997年6月26日に撮られた。


<木星の雷雲>

科学者達は木星の大赤斑の外側で、地球に雷雨をもたらすものと似た、木星の明るい白い積雲の上に入道雲と思われるものを見つけた。今、木星の軌道を周回しているガリレオ宇宙船からのイメージは、1時間に500kmを超えて吹く雷雨が、木星の風のエネルギーの重要な源であるかもしれないという新しい証拠を提供した。写真はガリレオのソリッドステートイメージングカメラによって、約140万kmの距離で1996年6月26日に撮られた。

左の上のイメージは近赤外線フィルタを通してとられた多重イメージのモザイクである。イメージの疑似カラーは雲の上の高さを明らかにしている。高く厚い雲は白く、高く薄い雲はピンクである。高度の低い雲は青い。下の二つの黒と白のイメージはボックスに入れられたエリアの拡大であり、右のものは左のイメージの70分後にとられた。矢印はどこで雲が生じたか、または、どこでイメージの短い時間に消えたかを示している。最も小さい雲は長さ数十kmである。

地球では、雷雨における湿っぽい対流は、表面に堆積する太陽エネルギーを通す道であり、大気まで運び分配する。ガリレオからのデータを分析するカリフォルニア工科大学の科学者達は、木星上でこれらの雲を構成するための最も有力な候補者は水であると信じており、期待に反して乾いていることを発見することになった以前にガリレオが探査機を入れた場所よりもここの方がより豊富であるのかも知れない。

ガリレオは宇宙船から放出され木星大気を観測するプローブ(探査針)を積み込んでおり、1995年12月7日に最初に木星に向かって降下させた。事後の検討で、降下させたポイントが木星の中でも乾いた領域であることが分った。

Jun 6, 1996    



<嵐の歴史的な結合>

木星のホワイトオーバルの嵐が、 1998 年 2 月に、上のイメージ(前)と下のイメージ(後)のように歴史的に結合した。1930 年代に生じた三つの古典的なホワイトオーバルは、以来ずっと惑星中央の南緯31~35度のバンドを占有してきた。上のパネルは、それらの間の西洋梨の形の領域を持つ二つのオーバルを示している。ホワイトオーバルの周辺の風は、それらが高圧のシステムであることを示し、反時計まわり(反サイクロンまわり)である。西洋梨形の領域の周辺の風は、それが低圧の領域であることを示して、時計まわり(サイクロンまわり)である。二つのホワイトオーバルは、それらが生じた後で、まもなくBC(右)とDE(左)と命名された。下のパネルは、BEと命名された合併したオーバルを見せ、西洋梨形のサイクロン領域はなくなっている。併合は、木星が太陽の背後にあったときの、1998 年 2 月に起き、地球からは見ることができなかった。

上下のパネルは同じ視界での様子を見せている。併合された形の領域は元の形の領域の和に等しいと期待されるであろう、しかし、そのオーバルは、合併の間に物質を失い、あるいは、それが垂直の方向に広がったであろう。フィギュアスケーターが彼らの体に近く腕を引きつけて回転するのと同様に、垂直に広がることによってオーバルは一層速く回転する。これらのイメージは嵐の地域と、関連する風の二つを決めることを可能にする。このことは関連するメカニズムの間の弁別を支援するであろう。

上のモザイクは、雲の高さと厚さで変化を示すために、ガリレオ画像カメラの三つの近赤外線のフィルタ(756、727、及び、赤、グリーン、青で表示された 889 ナノメータ)を用いて得られたイメージを結合した。ライトブルーの雲は高く薄い、赤みがかった雲は深く、そして、白い雲は高く厚い。ホワイトオーバルの上の雲とかすみは高く、木星の成層圏に伸びている。オーバルの間のサイクロン状の西洋梨形の上に高いかすみの欠けたところがある。暗い紫色は、クリアな深い大気が重なった高いかすみを表しているものと思われる。ガリレオは、木星の雲の層を区別した最初の宇宙船である。下のモザイクで使用したイメージは 756 ナノメータフィルタのみを使用した。

このモザイクでは北は上である。上のイメージは1997年2月19日に撮られ、下のイメージは1998年9月25日に撮られた。共に約百万kmのレンジからのSSIシステムによるものである。

December 7, 1998     



<木星、大赤斑近くのアンモニアの氷> 11月4日

Ammonia Ice near Jupiter's Great Red Spot Catalog #: PIA02569 木星にハッキリ確認された初めてのばらばらなアンモニアの氷の雲が、NASAのガリレオ宇宙船によってとられたこのイメージに示されている。アンモニアの氷(ライトブルー)が大赤斑(Great Red Spot;図の中心の大きな赤い部分)の北西(左上)の雲に示されている。大赤斑近くの乱れた跡の領域のこの異常な雲は、木星の大気の深部からのアンモニアを積んだ大気の強力な上昇気流によって産み出される。これらの上昇気流は至近の大赤斑によって木星の西に向かって大きく動く気流で引き起こされた乱流によって発生する。

この疑似カラーイメージは、1996年6月26日にガリレオの近赤外線マッピング分光計によって得られたいくつかの近赤外線カラーイメージから構成された。赤みがかったオレンジの部分は高い雲に示し、黄色のエリアが中位の雲を描き、緑の領域はより低いレベルの雲を描写している。暗いエリアは雲のない(cloud-free)領域である。ライトブルーは中間の高さの高度レベルのアンモニアの氷の雲の領域を描いている。少なくとも300年間は存在した大赤斑は、我々の太陽系における最も古く最も大きな気象システムである。それは広さが少なくとも2万kmと測定され、地球と比較してほぼ2倍も広い。

Oct 26, 2000    



その他、木星の温度分布、極のオーロラ、雲の層など多くのデータが発表されています。


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