系外惑星 55 Cancri e
(exoplanet 55 Cancri)

スーパーアース系外惑星 55 Cancri e (アーティストコンセプト)
Super-Earth Exoplanet 55 Cancri e (Artist’s Concept)

このアーティストのコンセプトは、太陽系外惑星 55 Cancri e がどのように見えるかを示している。

ヤンセン(Janssen)とも呼ばれる 55 Cancri e は、地球よりはかなり大きいが、海王星より小さい岩石惑星であり、わずか224万キロメートル(0.015 AU)の距離で恒星の周りを公転し、18時間未満で1周する、いわゆるスーパーアースである。(水星は、 55 Cancri e の恒星からの距離よりも、太陽から25倍離れている)このシステムには、四つの大きな巨大ガス惑星も含まれており、 かに座(constellation Cancer) の地球から約41光年の距離にある。

ウェッブの NIRCam と MIRI による観測は、この惑星が二酸化炭素(CO2)または一酸化炭素(CO)を含む大気に囲まれ、恒星にとても近いために非常に高温であり、溶けた岩石で覆われていると考えられている。研究者達は、大気を構成するガスがマグマから泡立った可能性があると考えている。

この惑星の大気は、マグマの海との相互作用によって複雑でかなり変動する可能性がある。一酸化炭素や二酸化炭素に加えて、窒素、水蒸気、二酸化硫黄、蒸発した岩石、さらには空気から凝縮した溶岩の小さな液滴でできた短命の雲などのガスが存在する可能性がある。

55 Cancri という恒星は、太陽とほぼ同じ大きさと質量のK型恒星であるが、わずかに低温で暗くなっている。非常に暗い空の下で肉眼で見るのに十分な明るさである。恒星と惑星は互いに非常に近いために、この恒星は、太陽が我々の空に見えるよりも、この惑星の空に70倍幅広く見える。さらに、この惑星は潮汐ロックされている可能性が高いために、どの点からも、星は空に固定されているように見える。

このアーティストのコンセプトは、 NIRCam と MIRI が収集した新しいデータと、NASAのハッブル宇宙望遠鏡や引退したスピッツァー宇宙望遠鏡、他の地上および宇宙ベースの望遠鏡からの以前の観測をベースにしている。ウェッブは、この惑星のイメージは撮影していない。


 

スーパーアース系外惑星 55 Cancri e (MIRI 2次蝕 光曲線)
Super-Earth Exoplanet 55 Cancri e (MIRI Secondary Eclipse Light Curve)

この惑星が恒星の隣にあるとき、恒星と惑星の昼の側の両方から放出される中間赤外線が望遠鏡に到達し、システムはより明るく見える。惑星が恒星の後ろにあるとき、惑星から放出される光は遮られ、恒星の光だけが望遠鏡に到達するために、見かけの明るさが低下する。

天文学者達は、恒星と惑星の明るさを合わせた明るさから恒星の明るさを差し引いて、惑星の昼の側からどれだけの赤外線が来ているかを計算することができる。次に、これを使用して日中の温度を計算し、惑星に大気があるかどうかを推測する。

グラフは、2023年3月にウェッブの中間赤外観測装置で低分解能分光法モードで収集されたデータを示している。紫色の各データポイントは、約5分間隔で平均した、7.5〜11.8 ミクロンの波長の光の明るさを示している。灰色の線は、データに最も近い最適なモデル光量曲線である。二次日食中の明るさの低下はわずか 110 ppm、つまり約 0.011 % である。

この観測から計算された惑星の温度は約 1,800 ケルビン(摂氏約1,538度)であり、惑星に大気がないか、薄い岩石蒸気大気しかない場合に予想されるよりも大幅に低い。この比較的低い温度は、おそらく揮発性に富んだ大気によって、熱が惑星の昼側から夜側に分散していることを示している。

 

スーパーアース系外惑星 55 Cancri e (近赤外線カメラ+中間赤外線装置発光スペクトル)
Super-Earth Exoplanet 55 Cancri e (NIRCam + MIRI Emission Spectrum)

2022年11月にウェッブのNIRCam(近赤外線カメラ)と、2023年3月にMIRI(Mid-Infrared Instrument)が撮影した熱放射スペクトルは、スーパーアース系外惑星 55 Cancri e が放出するさまざまな波長の赤外線光(x軸)の明るさ(y軸)を示している。このスペクトルは、この惑星が、蒸発した岩石だけでなく、二酸化炭素や一酸化炭素などの揮発性物質を豊富に含む大気に囲まれている可能性があることを示している。

このグラフは、 NIRCam (オレンジ色の点)と MIRI (紫色の点)によって収集されたデータを、二つの異なるモデルと比較している。モデルA(赤)は、気化した岩石でできた大気を持つ場合、55 Cancri e の発光スペクトルがどのように見えるかを示している。モデルB(青色)は、この惑星が、地球のマントルと同程度の揮発性物質を含むマグマの海からガスが放出された、揮発性物質に富んだ大気を持っている場合の発光スペクトルを示している。 MIRI と NIRCam のデータはどちらも、揮発性に富んだモデルと一致している。

惑星が放出する中赤外線光の量(MIRI)は、昼の側から夜の側に熱を分配する大気がない場合よりも、日中の温度が大幅に低いことを示している。 NIRCam データの4〜5ミクロンのスペクトルの低下は、大気中の一酸化炭素または二酸化炭素分子によるこれらの波長の吸収によって説明できる。

--- 以下略。

 

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April 08, 2024    



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