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宇宙の闇に渦巻く絵の具のような雲は、目の前に広がる別の世界への入り口のようにシュールに見える。実際に、このNASAとヨーロッパ宇宙機関のハッブル宇宙望遠鏡のイメージの被写体は非常にリアルである。我々は、死にゆく星によって宇宙に投げ出された、電離した原子の広大な雲を見ている。これは、はくちょう座(Swan)の僅か4,600光年にあるミルキウェイ銀河のメンバー、Kohoutek 4-55という名の惑星状星雲である。 惑星状星雲は、巨大な星の一生の終わりに見られる壮大な最後の展示である。赤色巨星が利用可能な燃料を使い果たし、最後のガスの層を流すと、そのコンパクトなコアはさらに収縮し、核融合の最終的な爆発が可能になる。露出したコアは非常に高温になり、紫外線を放射して、星から放出された巨大なガスの雲にエネルギーを与える。紫外線はガスの中の原子をイオン化し、雲を明るく輝かせる。このイメージでは、赤とオレンジが窒素、緑が水素、青が酸素を示している。Kohoutek 4-55は、珍しい多層の形状をしている。すなわち、かすかなガスの層が明るい内側のリングを囲み、すべてがイオン化された窒素の広いハローに包まれている。この光景はほろ苦く、コアでの短い核融合の段階はわずか数万年で終わり、再び白色矮星が周囲の雲を照らすことはない。 このイメージ自体は、ハッブル宇宙望遠鏡の機器の1つである広視野惑星カメラ2(WFPC2)の最後の作品でもあった。1993年に初代広視野惑星カメラの代わりに設置されたWFPC2は、ハッブル宇宙望遠鏡の最も永続的なイメージと魅力的な発見のいくつかに貢献した。ハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ3は、2009年にハッブル宇宙望遠鏡の最終保全ミッションでWFPC2に置き換えられた。宇宙飛行士達がハッブル宇宙望遠鏡からWFPC2を取り外すわずか10日前に、16年間の発見の末にふさわしい、このイメージで使用されているデータを収集した。イメージプロセッサは、最新かつ最先端の処理技術を使って、そのデータにもう一度命を吹き込み、Kohoutek 4-55の息を呑むような新しい視界をつくり出した。
April 11, 2025 |