<概要>; イオは木星の衛星の中でもひときわ目立つ天体である。イオの表面の色は大変鮮やかで、赤、オレンジ、黄、白など多彩であり、地殻を持ついかなる天体にも類を見ない存在である。イオの表面には隕石の衝突によるクレータが見当たらないこと、直径数10キロメートルに及ぶ多数の火山が見られることなどから、イオが非常に若く活発に活動していることが分かる。イオの表面は約5%が火山性のカルデラで光の反射率は低くて暗い。またカルデラの上部には“かさ”が掛かっていることが多く、そこを基点とした数百キロメートルに及ぶ大規模な溶岩流が放射状に見られる。火山活動に伴って硫黄や二酸化硫黄が降下しカルデラを囲んだ輪(プロメテウスの輪)を作っている。硫黄は異なる温度で熱せられ急速に冷やされると黒、赤、オレンジ、黄(原色)とさまざまな色を示す。太陽系で今でも活火山を持つ天体は、確認されている範囲では地球とイオだけである。イオがこのような激しい火山活動を繰り返すためには膨大なエネルギが必要であるが、イオには地球型惑星のような核反応を起こし得る放射性元素は非常に少ない。このことからイオのエネルギは木星との潮汐作用によって与えられているとされており、ボイジャー1号のデータがこれを裏付けた。イオには七つの地形的特徴がある。火山の外、パテラ(不規則な陥没地)、トルス(隆起)、レギオ(アルベドの明暗で区別される広大な地)、プラナム(高原)、モン(山)、カテナ(クレータチェーン)である。
この写真は1996年の夏の初めにハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられたものであり、火山性の月イオ(写真の中央右上)と木星の雲に映った影(黒い丸)を見せている。イオの影はイオのサイズとほぼ同じ直径3,640キロメートルで、時速約61,000キロメートルで渦巻く雲の上を走っている。太陽系内部の視野からは、木星-イオ-太陽が並んだとき、このようなドラマティックな光景を見ることができる。影の走路にあたる観測者達にはイオの円盤が太陽の食(日食)として見られるだろう。
October 7, 1996
イオの表面はいつも工事中である。ここに示された木星の月イオは太陽系の中で最も火山活動が活発であり、その表面はいつも溶岩の流れで再構築され続けている。ガリレオ宇宙船からの1996年のデータを使って作られたこの高精細合成イメージは、いつも木星に面している側を表している。このイメージでは最小2.4kmの形を明らかに示すため、イオの表面の明るさと色の変化を強調し拡大されている。目立ったインパクトクレータがないことは、クレータが作られるよりも速く表面全体が新しい火山の堆積で覆われてしまうことを示している。この火山のパワーの源には何が作用しているのだろう。考えられるエネルギの源は、イオが巨大な惑星を回っていることで木星と他のガリレオ衛星によって引き起こされる重力の潮汐作用の変化である。潮汐作用によって汲み上げられるイオの内部の熱は硫黄の火山活動を生み出すことができる。
March 21, 1997
イオにはいくつかの非常に大きな火山がある。最も大きいものの一つが写真の中心近くに見えるポリネシア神話の火災の女神にちなんで名付けられたペレ(Pele)である。ガリレオ宇宙船は1996年6月にこの写真を撮り12月に発表された。ペレの周辺には最近の火山活動の証拠と思われる大きな赤いリングがある。赤い色は硫黄の存在を示している。
December 5, 1996
イオの主な火山の中央のこれらの視界はカラーデータと高解像度モザイクとを結合したものである。これらは地表の姿と、火山の流れのような明らかな輝度変化を示している。フレームの 'a' から'g' までのイメージは、全て同じ割合で縮尺されている。フレーム 'a' はさし渡し575キロメートルである。
これらのイメージは、イオの最もカラフルな強いコントラストの領域が、最も活動的な火山と関連していることを示している。これらはまた、例えば、Loki、Prometheus、Culann、Marduk、Volund、Zamama、Maui、Amirani のような新鮮に見える熔岩の流れが、しばしば活動的な噴煙と関連していることを示している。
Jan 18, 1999
木星の月イオのこれらの四つの視界は、イオの活火山の二つ、ザママ(Zamama)とプロメテウス(Prometheus)からの噴煙を示している。下の写真は噴煙のエリアの拡大である。最初の視界(左)では、イオの明るい端の二つの噴煙の上部を描いている。第二のイメージでは、ザママの傘の形をした視界を明らかにしている。第三のイメージでは、イオの照らされた三日月型の明るい二つの噴煙を示している。第四の視界(右)は火山の中央が昼夜の境界線にあり、広がる高い噴煙が日光で見えている。これらの噴煙は約100キロメートルの高さである。二つの噴煙は1996年に始まったガリレオツアーの至る所で活動的であったが、第11軌道からのこれらのイメージでは、ザママは以前に描かれたものよりかなり大きくより明るくなっている。プロメテウスは1979年のボイジャ宇宙船の接近のときにも活動的であった。
December 7, 1998
1999年11月25日の感謝祭にNASAのガリレオ木星探査機によって集められたこのモザイクイメージは、木星の月イオの地表に噴出する溶岩の泉に示している。活動的な溶岩は、ターゲットの明るさが過度の過負荷にあって、カメラの検出器が電子を検出器から溢れさせるときに引き起こされる、カメラチームがガリレオのカメラにおいて「出血する」というのに十分なほど熱かった。これはイメージにおいて白い不鮮明として現れる。
これらのイメージは巨大なカルデラ(大きな火山の崩壊した穴)の一つのチェーンの最初のクローズアップを提供するためにターゲットにされた。これらのカルデラはイオの上で最大のもののいくつかであり、それらは太陽系全体に関して他のカルデラを小さく見せる。カルデラのこのチェーンは290×100kmで、地球で最大のカルデラより7倍も大きなエリアをカバーしている。新しいイメージは、引き伸ばされたカルデラの中で発生する小さな崩壊とともに、イオの巨大なカルデラの複雑な性質を示している。
大きな関心は右の平らに覆われたメサにもある。波形の縁飾りをつけられた輪郭は、断崖の基盤から逃れる流体に起因して浸食のときに起きる、プロセス地質学者達が「サッピング(sapping:掘り崩す)」とよぶものの典型である。地球でのそのようなサッピングの姿は地下水の泉によって引き起こされる。火星での同じような特徴は、火星の地表における過去の水に関する証拠のキーピースの一つである。しかしながらイオでのその液体は圧力を加えられた二酸化硫黄であると思われる。液体の二酸化硫黄は断崖の基盤の物質を吹き飛ばし、イオの地表の真空近くに達すると、ほとんど瞬時にガスに変わるだろう。二酸化硫黄のガスは結局霜の形でイオの地表に凍結する。その霜が後の堆積によって埋められ、液体になるまで加熱され圧力を加えられる。” 水サイクル”のイオのバージョンを完結して液体はその後地面から流れ出る。
北は写真の左上、太陽は左下から地表を照らしている。緯度 61.1 度、経度 119.4 度に中心を置くイメージは、おおよそ300×75kmのエリアをカバーしている。解像度はピクチャエレメントあたり185mである。イメージはガリレオ上のカメラによって 17,000 kmでとられた。
December 17, 1999
NASAのガリレオ宇宙船によってとられた1999年11月25日の高解像度白黒イメージと1999年7月3日の低解像度カラーイメージの結合によって、木星の火山の月イオのザル平原(Zal Patera)地域がここに示されている。ガリレオ科学者達は二つのタイプのイメージの結合によって異なる表面の物質と内在する地質構造の関係を更によく理解できる。例えば、写真の上方中央において、カルデラの端または火山のクレータは黒い流れで示されており、それは高原の端と一致している。同様に、イメージ中央右の赤い物質は溶岩が地表で噴出している領域と典型的に関連している。ここでは、赤い物質は、硫黄のガスが山の形成に関連した断層に沿って漏れていることを示すのかもしれない山の麓に沿っている。
科学者達は山の高さを見積るために影の長さを使うことができる。それらの見積りでは、ザル平原の西の端につながる最北の高原は約2kmの高さにまで達している。カルデラの南の山は、高さ約4.6kmの頂を持ち、一方、写真下の小さな頂は高さ約4.2kmである。
北は上、イメージは北緯33.7度、西経度81.9に中心がある。高精細イメージは1999年11月25日に26,000kmの距離から撮られ、左から照らされている。カラーイメージはガリレオのほぼ後ろから直接照らされており、1999年7月3日に約130,000kmの距離から撮られた。
March 6, 2000